一方、AVCHD形式での出力ができないのは惜しい。というのも、AVCHDビデオカメラで撮影した映像を、解像度を損なわずにTVで見る方法は、まだまだ選択肢が少ないからだ。最も一般的なのは、ビデオカメラとTVをHDMIなりD3なりのケーブルで接続して、ビデオカメラに保存したデータを再生することだ。あるいは、プレイステーション 3や一部のレコーダーといったAVCHD形式のディスク再生に対応した機器を持っていれば、そちらを利用する手もある。パナソニックのTVやHDD/DVDレコーダーの一部は、ビデオカメラで記録したSDメモリーカードを装着して再生する機能を持っているが、これは特殊な例だろう。
ただし、以上の方法はいずれも再生したい映像がAVCHD形式で保存されていることが前提になっており、ソニーやパナソニックのビデオカメラ付属ソフトも、他形式の映像をAVCHD形式に変換する機能は備えていない。つまり、せっかくVideoStudio 11でAVCHDの映像を編集できても、AVCHDビデオカメラ側に書き戻してTVで楽しむことができないのだ。
現時点でAVCHD形式での出力が可能なビデオ編集関連ソフトは、ソニーが提供する「VAIO Edit Components Ver.6.1」を組み合わせたアドビシステムの「Premiere」シリーズと、やはりソニーのVAIOに付属する「VAIO Content Exporter」くらいしか見当たらないが、どちらもソニーのVAIOのみ利用可能なことを考えると、プラットフォームを選ばない市販ソフトでこそ、こうした機能を実現してほしいところだ。AVCHD形式での出力に対応すれば、MPEGオプティマイザの存在価値が高まるのはいうまでもない。
なお、バッファローの「LinkTheater」シリーズや、アイ・オー・データ機器の「AVeL LinkPlayer」シリーズなどに代表される、HD出力に対応したメディアプレーヤーを持っていれば、ファイル出力したHD映像をTVで再生することはできるので、現時点ではこれがTVでHD再生する場合の現実的な解になりそうだ。
また、VideoStudio 11単体ではできないものの、対応するオーサリングソフトを併用することで、Blu-ray Discなどへ書き出すという方法も残されている。しかし、この場合にもVideoStudio 11ではファイルとして保存することになる。ちなみに、AVCHDの映像だけで13分ほどの作品を作り、WMVとしてファイル出力するのにかかった時間は、3時間10分ほどだった。
以上、VideoStudio 11の主要な機能を一通り使ってみた。VideoStudio 11は、高負荷のHD映像であっても編集の軽快さは損ないたくない、というユーザーにとって、ほかに代えがたい魅力を持ったビデオ編集ソフトと言える。
シーン分割キャプチャや撮影日時情報の取り込みといった便利な機能を備えているにも関わらず、HDV素材ではこれらの機能を使えなかったり、AVCHD形式での出力ができなかったりといった不満点については、今後の改善を強く希望したいのはもちろんだが、最終的に作品を保存するフォーマットによっては問題にならない場合もあることを頭に入れておきたい。
何より、AVCHDの映像をとりあえず本格的に編集できるソフトの選択肢が増えた意味は大きい。自分がどんな環境で作品を見る、もしくは見せるつもりなのかをよく見極めたうえで納得できるユーザーには、検討をおすすめしたい。
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