「FMV=富士通=格好いい」を結び付ける――富士通デザインセンターの決意青山祐介のデザインなしでは語れない(1/3 ページ)

» 2007年06月14日 12時00分 公開
[青山祐介,ITmedia]

国内大手PCベンダー初のUMPC「FMV-BIBLO LOOX U50WN」

 5月12日、5.6インチワイド液晶ディスプレイを搭載したUMPCことUltra Mobile PC「FMV-BIBLO LOOX U50WN」を発表するなど、意欲的な新作を投入している富士通。すでに春モデルでデザインを刷新したFMV-BIBLO LOOX Tシリーズをはじめ、このFMV-BIBLO LOOX UシリーズやデスクトップPCのFMV-DESKPOWER LXシリーズなど、デザイン面でも新鮮さがうかがえるモデルが多い。

 今回は、そんな富士通のデザインポリシーと、新プラットフォーム“Santa Rosa”をいち早く採用したFMV-BIBLO MGシリーズのデザインについて、総合デザインセンターのシニアデザインディレクターである石塚昭彦氏と、MGシリーズを担当したデザイナーの黒澤悠氏に話をうかがった。

富士通のデザインは“生まれ”が違う

 富士通のデザイン部門は「総合デザインセンター」という組織で、この中にPCや携帯電話をデザインする「ユビキタス・ソリューションデザイン部」、ATMやPOSといった流通・金融関係のハードウェアやソフトウェアデザインを担当する「テクノロジー・ソリューションデザイン部」、そして富士通のCIをはじめ、デザイン情報を発信する「コーポレート・ソリューションデザイン部」、自社のWebデザインを行う「Webデザイン推進室」、ユーザビリティ/ユニバーサルデザインを担う「ユーザー・エクスペリエンスデザイン部」、そしてデザイン戦略の立案やデザイン事業を推進する「グローバル・デザイン戦略部」という6つの部署がある。

石塚 デザインに対する基本的な姿勢は他社さんと大きく違わないと思います。人を中心に考え、ユニバーサルデザインやエコデザインを推進しながら、魅力的なデザインを提供していくという点では、同じデザイナーですから基本的には変わらないと思います。ただ、我々のデザインが他社と異なるのは、いわゆるコンシューマー向けの製品が、携帯電話とPCしかないということです。そういう意味で、富士通のデザインは“生まれ”が違うのかな、と思います。

 富士通といえば我々にはPCや携帯電話がおなじみではあるが、同社の事業はシステムの開発と基幹サーバー、ATM、POSといったビジネス向けの製品やサービスが多い。富士通の出自がこうしたビジネス向けの製品なだけに、家電分野を持っているほかのPCメーカーに比べると、コンシューマ向けのデザイン面では「やっと他社に追いついたという認識でいる」(石塚氏)という。

 もちろん、ビジネス向け製品のデザインで培ったノウハウは、デザイナーのジョブ・ローテーションやオープン・プロジェクトなどにより、コンシューマー向け製品にも着実に受け継がれている。また、開発期間が短くデザイントレンドの最先端を行くPCや携帯電話のデザインノウハウが、開発期間の長いビジネス向け製品にも反映されていくのだという。

「本質をデザインする」「快適性」「独自性」を大切に

20.1インチワイド液晶ディスプレイを搭載した液晶一体型PC「FMV-DESKPOWER LX60W」

石塚 FMVシリーズのブランドを普及させたい、売れるデザインを作りたい、ということを念頭に置き、そのためには何をしたらいいかということから入っていきました。

 今回、お話をうかがった石塚氏は、4年前からPCのデザインを統括している。石塚氏は、PCのデザインをする上で3つのことを基本にしているという。まず1つめは“本質をとらえて商品としての有用性をデザインする”だ。デスクトップPCであればデスクトップPCとしての役割、ノートPCであればそのノートPCとしての役割それぞれをデザインで表現するということである。

石塚 例えば液晶一体型PCのFMV-DESKPOWER LXシリーズは、いわゆる普通のPCとしてパーソナルな使い方がメインになります。そこからLXがどこに置かれるかということ考えると、やはりプライベートな机の上ということになります。となると、なるべく奥行きは取らないほうがいいですよね。TVを見るときにはキーボードは不要ですから、収納できたほうがいい。だから、キーボードがしまえる仕組みを考えました。このように商品の本質をいかに追求できるか、ということが大事なのです。

 その次に重要なのが、使いやすさや心地よさといった“快適性”だ。それぞれの商品によって対象となるユーザー像が異なるため、それぞれの使い方のスタイルに合わせた使いやすさを求めていくとことだという。例えばFMV-DESKPOWER CEシリーズのようにプライベートな空間で使われるものと、FMV-DESKPOWER TXシリーズFMV-TEOのようにリビングに置かれるものとでは当然求められる使いやすさも違ってくるわけだ。

HDMI端子を備えたリビングPC「FMV-TEO」

石塚 TEOはリビングに置かれるPCですが、本体自体は“四角い箱”なので特徴を出しにくいものです。あの箱の中でデザインできるのは、正面の“顔”くらいしかありません。それよりも大事なのは、画面上に現れるインタフェースだと思いました。いかにリモコンで快適に使えるかということは、このTEOにとってとても大事なことですから、デザインでもそこに注力しました。

 そして3つめはやはり市場での競争力にも影響する“独自性”だという。これはまさにデザインの真髄ともいえることで、FMVシリーズ全体で見ると、シリーズによってさまざまな造形や色、そして商品そのもののコンセプトに幅があるように、デザイナーはユーザー像をイメージしながら、それぞれのモデルに最適なデザインを考えてきた。その結果、“FMVのデザインはこういうカタチ”というような、造形的に1つの方向に絞るということはしていない。

石塚 固定したデザインエレメントを持つつもりはありません。その時代や市場の動向に合わせて、常にお客様が新しいと感じてもらえるものを開発していかなければならないと思っています。

スタッフ間でデザインイメージの共有を行う

 このように、商品ごとに最適なデザインを追求する富士通のデザインワークでは、まずそれぞれの商品についてデザインの方向性をいくつか決めて、それをスタッフの間で共有する作業を行う。

 一例を挙げると、それぞれの方向性を表現する車やファッション、建築といった、PC以外の分野のデザインで、デザイナーが感化されそうな写真を集めてコラージュを作り、それをベースにしてこれから作ろうとしているモデルのデザインの方向性を絞っていく。この方向性というのは、想定されるユーザーのPCに対する意識や使い方であり、ライフスタイルやデザイン的な好みを表現したものである。

石塚 今回はファッションだったらカジュアルな感じがいいとか、“和”な優しさでしょう、といったように、いろいろな意見が出てきます。デザイナーには若手もいればベテランもいますから、かなり考え方に幅があり、そうして持ち寄った方向性を共有化していくのです。

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FMV | BIBLO | 富士通 | LOOX | Santa Rosa | Windows Vista | UMPC


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