「Parallels Server」は「Xserve」の救世主になるか!?予告通り発表

» 2007年06月14日 19時45分 公開
[林信行,ITmedia]

 「Parallels」といえば、いまやMacユーザーで知らない人はいない定番ソフトの1つだ。いわゆる仮想化ソフトと呼ばれるカテゴリに属し、インテルCPU搭載Mac上でWindowsを含むさまざまなOSを動かすことができる。

 アップルが提供しているBoot Campとは異なり、OSを再起動して切り替えるのではなく、Mac OS Xのほかのアプリケーションを利用しながら、Windows用アプリケーションを実行できるというのが大きな強みとなっている。

Parallelsにサーバ版が登場

WWDC'07が開催されているサンフランシスコ

 そのParallelsにサーバ版の製品が登場するという。「Parallels Server」は米国時間の木曜日、アップルの開発者イベント「Worldwide Developers Conference 2007」が開催されるサンフランシスコのホテルで大々的に発表される予定だ。

 サーバは仮想化ソフトの需要が最も高い分野の1つ。かつてMac用にVirtual PCというエミュレーションソフトを提供していたコネクティクスは、優れた仮想化技術が見初められてマイクロソフトに買収され、Windows Serverの1機能であるVirtual Serverを開発することとなった。

 サーバ上で仮想化ソフトを利用すれば、異なるOSのサーバソリューションを1つのハードウェア上で提供できるようになり、ハードウェア資産への投資を節約したり、幅広いWebアプリケーションを実行できるといったメリットがある。現在サーバ製品の中で最もホットな分野でもある。

 こうしたサーバ向け仮想化ソリューションは、これまでWindows用には数種類の製品が発売されていたが、Mac用には存在しなかった。すでにコンシューマ向け製品で大きな成功を築きあげたParallelsは、次の目標としてこのMacのサーバ市場を見据えている。

ベンジャミン・ラドルフ氏

 「Parallelsはおかげさまで、市場でも大変高い評価を受けています。我々はなんとMac用製品であるにも関わらず、雑誌PC WORLDの“Product of the Year”の1つに選ばれました。そんな我々にとって、理論的に考えて次に進むべきステップは、サーバ市場への進出です」――そう語るのは同社のスポークスパーソンとして有名なParallelsのマーケティングマネージャー、Benjamin Rudolph(ベンジャミン・ラドルフ)氏だ。

 「それにより我々のような個人ユーザーだけでなく、大企業のITシステムすべてがParallelsの恩恵を受けられるようになるのです。我々はPC用やLinux用とともに、Xserve上で動作するバージョンも披露する予定です。これを使えばXserve上で、Windows Exchange Serverでも、Linuxでも好きなサーバ環境を実行することができるのです」。

 Xserveはスペース効率でもコストパフォーマンスでも優秀だが、多くのシステムインテグレーターにとってなじみが薄い「Mac OS X Server」を用いることから、これまで採用があまり進んでいなかった。

 ラドルフ氏は「Xserveは非常にクールなサーバ製品だが、Exchange Serverやいくつかのサーバ用ソリューションが利用できないというそれだけの理由で、これまで脚光を浴びてこなかった。サーバ版Parallelsはこうした状況を変えることができる」と情熱的に語ってくれた。

年内にはAeroグラフィックスにも対応

WWDCの基調講演でBoot Campに続きParallersとVMwareを紹介するジョブズ氏

 そんなラドルフ氏も、スティーブ・ジョブズCEOの基調講演の間は、ハラハラしていたと言う。

 「心のどこかで、もしアップル自身が仮想化ソリューションを発表したらどうしようかと心配していたんだ。でもジョブズはBoot Campの紹介の後、“ParallelsやVMwareは相互補完の関係にある製品で、いい関係を保っている”と言ってくれた。実際、我々はアップルからいろいろなレベルでの協力をしてもらっている」と語る。

 Parallelsはつい最近、初の有料アップグレードとなる「Parallels Desktop 3.0」を発表したばかりだ。この最新版ではOpenGLやDirectXに対応し、一部の3Dゲームがプレイできるようになったほか、MacのFinderでダブルクリックした書類を直接Parallels上のアプリケーションで開いたり、その逆をしたりといったことが可能になっている(下の動画はQUAKE 4のデモ)。

 また、Windows OSが破損したり、ウイルスに汚染されたとき、以前の状態に戻すスナップショットの機能も加わり、Boot CampとWindows Vistaのボリュームの共有もできるようになった(Boot CampでインストールしたWindows Vistaのボリュームを使ってParallelsを起動できる)。

LeopardのTime Machine機能にも少し似たSnapshot機能。Parallels上で動くWindowsの状態を、過去の状態に戻すことができるのだ(写真=左)。Mac環境の書類をWindowsアプリケーションに開かせることが可能になった(写真=中央)。逆にWindows環境の書類をMac環境のアプリケーションで開かせたりもできる(写真=右)

 Windows Vistaといえば、マイクロソフトはParallelsなどの仮想化ソフトに対して厳しい態度を取り、仮想化環境の場合はHome Basic/Home Premiumを利用できないという規約を用意している(つまり高価なエディションを購入する必要がある)。この件について以前ラドルフ氏が自身のブログで猛反発したこともあった。

 「その後、私はマイクロソフトの人々と直接、何度か話をした。彼らも私の考えに理解を示してくれた。将来はHomeなどのエディションでもParallelsで使えるようになることを期待している」と述べた。

 ところでWindows Vistaといえば、目玉はAeroグラフィックスだが、現在のParallels 3.0は、まだDirectX 9の表示には対応しておらず、Aeroのアニメーション効果も楽しむことができない。

 これについてラドルフ氏は、「OpenGLとDirectXのサポートは、まだまだ初期の段階で、これからどんどんよくなっていく。我々の最初の製品は、USBをいっさいサポートしていなかった。その後、USB 1.1を少しだけサポートするようになり、やがて完全に対応し、さらに2.0をサポートするようになった。これと同じでOpenGLやDirectX、さらにはMac Proの8コアなど、2コア以上のCPU構成のサポートも今後少しずつよくしていくつもりだ。できれば、年末までにはAeroグラフィックスをサポートしたい」と抱負を語った。

サーバ版を予告通り発表――年内発売を目標、価格は未定

 Parallelsは、予告通りParallelsのサーバ版を発表した。今日の発表はα版製品のデモと、大まかな機能の紹介をしつつ、参加者の意見を聞くという形で行なわれた。最終的な製品仕様や配付方法、価格は決まっていないが、年内の発売に向けて開発を進めているという。

 デモではXserve上で動くParallels Serverで、SuSe Enterprise、Windows 2003 Server、Windows XP、FreeBSD 5.0、Solaris 10の5つのOSを動作させ、それを公開予定のSDKでつくったというリモート管理用クライアントで操作する様子を披露した。

 Parallelsの親会社、SWsoftのVirtuozzo Toolsからの管理をサポート予定だが、それ以外にもiPhoneからの管理などにも対応させていきたいとしている。

Parallels Serverの画面。Virtual SMPの機能をサポートするなどサーバ向けの最適化が行われている(写真=左)。Open APIとSDKを使ってつくられたリモート管理用ソフト。デモのソフトでは画面の遠隔表示にVNCを使用しており、セキュリティの問題を指摘する声もあったが、最終的な方針は決まっておらず、今後、顧客の声を聞きながら仕様変更を行なっていきたいという(写真=右)

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