「デジタル暗室システム」で“自分色”プリントを極めるカラーマネジメント事始め(1/4 ページ)

» 2007年06月25日 16時30分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

カラーマネジメント環境をまとめて入手できる「デジタル暗室システム」

「デジタル暗室システム」の利用イメージ

 デジタル一眼レフカメラや高機能コンパクトデジタルカメラの普及とともに、撮影した写真を印刷する環境にこだわるユーザーが増えてきた。昨今は、液晶ディスプレイやインクジェットプリンタの高画質化が急速に進み、個人でも高品位なフォトプリントが楽しめるようになったため、自宅で試行錯誤しながら写真作品を制作している人も少なくないだろう。

 しかし、単に高品位なディスプレイとプリンタを組み合わせただけでは、“自分が撮影時に思い描いた通りの色”で印刷するのは難しい。意図した色でデジタル写真を出力するには、RAW現像やフォトレタッチ作業を行うディスプレイとアプリケーション、画面の色を測定して正確に合わせる測色器、出力を行うプリンタと用紙、さらには部屋の光源といった要素を統一的に考慮し、カラーマネジメント環境を整える必要があるからだ。

 カラーマネジメント環境の構築には相応の知識と手間を要するため、興味があっても個人ユーザーでは手を出しにくい面もある。そこで注目したいのが、エプソンダイレクトが発売した「デジタル暗室システム」だ。カラーマネジメント環境を構築するうえでの基本的なハードウェアとソフトウェア、すなわちPC、液晶ディスプレイ、測色器、プリンタ、アプリケーションをセットにしたパッケージで、手っ取り早く環境が整う。今回はこのシステムを利用して、カラーマネジメント環境を構築してみた。

デジタル暗室システムに含まれるハードウェアの概要

 デジタル暗室システムに含まれるハードウェアは、PCがエプソンダイレクトの「Endeavor CM3100」(以下、CM3100)、液晶ディスプレイがナナオの「ColorEdge CE210W」(以下、CE210W)、測色器がエックスライト(日本の代理店は恒陽社)の「Eye-One Display 2」、プリンタがセイコーエプソンの「PX-5800」だ。PX-5800には、カラーマネジメント対応のフォトレタッチソフトとして、アドビシステムズの「Photoshop Elements 5.0 日本語版」が付属している。

 以下にそれぞれの製品概要を簡単に紹介しておこう。

Endeavor CM3100

Endeavor CM3100

 CM3100は、エプソンダイレクトの薄型デスクトップPC「Endeavor MR3100」をデジタル暗室システム用に仕様変更したものだ。一部パーツのBTOに対応し、CPUはCore 2 DuoのE6600(2.4GHz)/E6700(2.66GHz)、メモリは2Gバイト(1Gバイト×2)/3Gバイト(512Mバイト×2+1Gバイト×2)のPC2-5300 DDR2 SDRAMから選択できる。HDD容量は500Gバイト、光学ドライブはDVD±R DL対応DVDスーパーマルチを装備するなど、省スペースのPCながらハイスペックな構成だ。プリインストールOSは、Windows XP Home Edition SP2となっている。

 外観や基本性能はMR3100と同様だ。本体前面を光学ドライブまでフルカバーした外形寸法98(幅)×401(奥行き)×357(高さ)ミリのスリムケースに、Intel G965 Expressチップセット搭載のマザーボードを内蔵している。グラフィックス機能は、チップセット内蔵のGMA X3000だ。本体の前面にはCF/SDメモリーカード/MMC/メモリースティック/スマートメディア対応のカードスロットを内蔵するため、デジタルカメラで使用したメモリカードから撮影写真をすばやくHDDに保存できる。

 ちなみに、PC単体モデルのMR3100でCPUにCore 2 Duo E6600(2.4GHz)、メモリに2Gバイト(1Gバイト×2)を選択するなどCM3100と同等の構成にした場合、直販価格は17万2200円となる(価格はすべて2007年6月20日現在)。

省スペースのボディは、前面に各種メモリカードスロットや2基のUSB 2.0、4ピンのIEEE1394などを用意しており、使い勝手がよい

ColorEdge CE210W & Eye-One Display 2

ColorEdge CE210W

 CE210Wは、ナナオのプロ向け液晶ディスプレイ「ColorEdge」シリーズでエントリークラスに位置する21.1インチワイドモデルだ。エントリークラスとはいえ、発色の階調を正確に調整するハードウェアキャリブレーション機能を備えており、工場で1台ずつ階調特性を最適に調整して出荷される点で、ナナオの一般向け液晶ディスプレイ「FlexScan」シリーズとは大きく異なる。パネルサイズが同じ「FlexScan S2111W」が7万9800円で購入できるのに対して、CE210Wは14万9800円と高価なことからも、その違いが分かるだろう(いずれもナナオ直販価格)。まさに“色”を扱うことに特化したディスプレイだ。

 液晶パネルは高コントラストと広視野角を両立しやすいVA方式で、WSXGA+(1680×1050ドット)に対応している。基本スペックは、輝度が450カンデラ/平方メートル、コントラスト比は1000:1、視野角は上下/左右とも178度といずれも高水準だ。入力したRGB各色8ビットの信号を10ビットに多階調化(色演算の精度は14ビット)し、最適な各色8ビットの信号に割り当てて出力することで、正確な色再現性を確保している。

 静止画の処理では、応答速度が重視されることはないが、CE210Wは中間階調の応答速度を向上させるオーバードライブ回路も搭載しており、中間階調の応答速度は8msと速い(黒白間の応答速度は16ms)。RAW現像やフォトレタッチだけでなく、DVDなどの動画鑑賞やゲームも十分こなせるだろう。

 インタフェースはデジタル/アナログ共用のDVI-I(HDCPには未対応)を2系統装備している。スタンドは、チルトとスイベル、高さの調整に対応したArcSwing 2を採用しており、画質、使い勝手ともに良好だ。

 さらに、CE210Wに対応した測色器としてEye-One Display 2も同梱されており、精度の高いハードウェアキャリブレーションも行える(詳しくは後述)。

1680×1050ドット表示の液晶パネルは、黒浮きが少なく、階調表現にも優れる(写真=左)。デジタル暗室システム向けにカラーチャートの壁紙が用意されているので、通常はこちらを使うとよいだろう(写真=中央)。測色器はEye-One Display 2が付属する(写真=右)

PX-5800

PX-5800

 PX-5800は、最大A2サイズの出力に対応したインクジェットプリンタだ。セイコーエプソンの大判プリンタ「MAXART」シリーズに属し、プロの現場で採用実績が多い。標準価格は20万7900円で、一般向けのインクジェットプリンタ「Colorio」シリーズとはケタが1つ違う。個人で利用するインクジェットプリンタとしては、オーバースペックと言えるほど高性能なカラープリンタだ。

 インクは全色顔料のPX-P/K3インクを採用している。色表現の品質で高い評価を受けているほか、保存性が高く、耐光性はカラー45年/モノクロ150年、耐オゾン性は30年をうたう。インクカートリッジは全色独立型の9色構成で、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレー、ライトグレー、マットブラック、フォトブラックを搭載。印刷する用紙によって、マットブラックとフォトブラックを自動的に切り替える仕組みだ。フォトブラックは光沢系用紙で粒状感を軽減し、マットブラックはマット系用紙で濃度の高い発色が得られる。

 用紙は、A2やA3、A4といったサイズはもちろん、写真のサイズとして利用頻度の高い半切、四切、六切、2L判、L判などにも対応する。用紙の搬送経路がストレートパスなので、1.5ミリまでの厚紙に直接印刷できるのもポイントだ。インタフェースは、USB 2.0と100BASE-TXの有線LANを備えている。

9色のインクカートリッジはすべて前面から交換できるため、メンテナンスしやすい(写真=左)。インク残量やプリンタの状態は、モノクロ液晶パネルで確認できる(写真=中央)。フォトブラックとマットブラックのインクは、ドライバで選択した用紙に合わせて自動的に切り替わる(写真=右)

購入特典

 購入特典も充実している。各種設定の方法やカラーマネジメントの基礎知識、簡単なフォトレタッチの手順などを解説したオリジナルのDVD-Videoが付属するほか、CM3100とPX-5800を接続するためのUSBケーブル、印刷用の写真用紙パック「フォト・ファインアート用紙セレクションパック」(実売価格7000円前後)も付いてくる。加えて、エプソン販売が実施しているプリントスクールの「エプソン・デジタル・カレッジ」(東京教室または大阪教室)を無償で受講できるチケットが添付されているのもうれしい。

 このように、デジタル暗室システムは、定評あるハイスペックな製品を組み合わせたうえで、初めてカラーマネジメント環境を構築するユーザーに最適な特典も付加されている。カラーマネジメントに必要なハードウェアとソフトウェアをワンパッケージで導入できる点は、購入時の手間が省けるだけでなく、購入後のサポートなどを考えても有益だ。価格は49万9800円と高額だが、パッケージ内容を考慮すると妥当と言えるだろう。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年03月29日 更新
  1. ミリ波レーダーで高度な検知を実現する「スマート人感センサーFP2」を試す 室内の転倒検出や睡眠モニターも実現 (2024年03月28日)
  2. Synology「BeeStation」は、“NASに興味があるけど未導入”な人に勧めたい 買い切り型で自分だけの4TBクラウドストレージを簡単に構築できる (2024年03月27日)
  3. ダイソーで330円の「手になじむワイヤレスマウス」を試す 名前通りの持ちやすさは“お値段以上”だが難点も (2024年03月27日)
  4. 「ThinkPad」2024年モデルは何が変わった? 見どころをチェック! (2024年03月26日)
  5. ダイソーで550円で売っている「充電式ワイヤレスマウス」が意外と優秀 平たいボディーは携帯性抜群! (2024年03月25日)
  6. 次期永続ライセンス版の「Microsoft Office 2024」が2024年後半提供開始/macOS Sonoma 14.4のアップグレードでJavaがクラッシュ (2024年03月24日)
  7. 日本HP、個人/法人向けノート「Envy」「HP EliteBook」「HP ZBook」にCore Ultra搭載の新モデルを一挙投入 (2024年03月28日)
  8. サンワ、Windows Helloに対応したUSB Type-C指紋認証センサー (2024年03月27日)
  9. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  10. レノボ、Ryzen Threadripper PRO 7000 WXシリーズを搭載したタワー型ワークステーション (2024年03月27日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー