ビデオキャプチャカードもHDの時代へ――カノープス「HDRECS」の実力は?HDMIからフルHD録画が可能(1/3 ページ)

» 2007年07月11日 15時30分 公開
[都築航一,ITmedia]

カノープス久々のビデオキャプチャカード「HDRECS」とは?

カノープス「HDRECS」

 カノープスから7月26日に発売される予定の「HDRECS」は、HDの映像をダウンコンバートせずに取り込める点で注目のビデオキャプチャカードだ。カノープスが仏トムソン傘下の放送/配信機器部門グラスバレーと経営統合してから初めて投入するHDビデオキャプチャカードとあって、古くから同社のビデオ関連製品を愛用してきたユーザーにとっては、気になる存在だろう。

 HDRECSは一見業務向けの製品に思えるが、ハイアマチュアや個人の映像マニアも視野に入れているという。個人でも手が届くHD対応のビデオキャプチャカードとしては、アースソフトの「PV3」や、Blackmagic Designの「Intensity」シリーズが知られているが、HDRECSはこれらの先行製品に対し、9万9750円と価格設定で不利な半面、最大1920×1080ドットでのフルHD録画が可能なことや、ハードウェアエンコーダによりCPU負荷をかけずにキャプチャできること、デジタル/アナログともにさまざまなソースに対応することが大きな特徴だ。

 映像の圧縮を行なうコーデックには、同社オリジナルの「Canopus HQ Codec」を利用する。このコーデックを用いる同社製編集システムが多数の放送局で採用されていることから、Canopus HQ Codecは放送/業務用途にも耐える画質の高さが身上だ。音声コーデックはPCM(24ビット/48kHz)を採用しており、ファイルコンテナはAVI形式となる。

 Canopus HQ Codecは、同社の編集ソフト「EDIUS」シリーズや、ファイル変換ソフト「ProCoder」シリーズとの親和性が高いのも魅力だが、一方でこうしたカノープス製品を導入していないほかのユーザーは、HDRECSで生成したAVIファイルをそのまま受け取っても再生すらできない。

 そこで同社では、デコーダソフト「Canopus Codec Option」の無償版(Windows用)を同社のWebサイトで公開している。これをインストールすることで、カノープス製品を持っていないユーザーでも、Windows Media PlayerなどのDirectShow対応ソフトを用いた再生が可能になる仕組みだ。無論、HDRECSを導入した環境ではセットアップ時にデコーダもインストールされるので、キャプチャした映像をDirectShow対応ソフトで再生できる。

Canopus HQ Codecでのハードウェアエンコードに対応

PCI Express x1スロットに対応したカード本体。中央のXILINX製チップ「VIRTEX-4」にCanopus HQ Codecのエンコーダを内蔵する

 HDRECSは、各種の入力端子を備えたPCI Express x1対応のカードとキャプチャソフトで構成される。カードの外形寸法は153×111.2ミリと比較的コンパクトで、PCケース内で装着に困ることは少ないだろう。このカードは、Canopus HQ Codecのハードウェアエンコーダを搭載しているのが見どころで、必要動作環境を満たしていれば安定したキャプチャが行なえる。

 動作環境は、CPUがPentium 4 2.8GHz以上、メインメモリが1Gバイト(2Gバイト以上を推奨)、HDDが回転数7200rpm/転送速度300MbpsのSerial ATAだ。OSはWindows XP(SP2)とWindows Vistaに対応する。カード上にハードウェアエンコーダを仕込んだおかげで、フルHD映像をキャプチャできる製品としては、それほどハイスペックなPCを求めない仕様になっている。

 ただし、Canopus HQ Codecで取り込んだデータの平均ビットレートは100Mbpsを超えることもあり、一般的なMPEG-2のHD映像と比較して膨大な容量になる。HDRECSの初期設定(オンライン/Fine)で1920×1080ドット/60iの映像と2チャンネル音声をHDMI経由でキャプチャした場合、3分で約3.6Gバイトのファイルサイズとなった。したがって、HDDには高速かつ大容量のSerial ATAドライブが必須となる。RAID-0(ストライピング)環境で導入するのもよいだろう。データ容量が大きいだけあって、さすがに画質面の不満はない。

 HDRECSでキャプチャできるのは、HDMI(HDCP非対応)およびDVI-Dのデジタル端子、そしてアナログRGB、コンポーネントビデオ、S-Video、コンポジットビデオの各アナログ端子から出力される映像だ。このうち、最大解像度の1920×1080ドット/60i(59.94i)で取り込めるのはHDMIおよびコンポーネント端子から出力される映像に限られ、アナログRGBやDVIで接続した場合は1280×1024ドット/60pまで、Sビデオやコンポジットの映像は720×486ドット/59.94iまでに制限される。いわゆるD5(1920×1080ドット/60p)の映像入力には対応していない。

 音声入力は24ビット/48kHzに対応しており、HDMI経由の場合は2〜8チャンネルまでの音声をリニアPCMで同時録音できる。また、HDMI以外のソースから映像と音声を取り込む場合の音声は、ステレオミニ端子から入力する仕様だ。アナログRGBおよびDVI-Dでの入力時を除けば、Locked Audioにより映像と音声の同期も確保される。

入力端子は左から順に、HDMI(DVI共用)、アナログRGB(D-Sub 15ピン端子への変換ケーブルが付属)、コンポーネントビデオ(3RCA端子への変換ケーブルが付属)、S-Video(コンポジットビデオ共用で変換アダプタが付属)、ステレオミニ音声となる(写真=左)。D-Sub 15ピン、3RCA、コンポジットビデオの変換アダプタを装着したところ(写真=中央)。カード上には4ピンの音声出力コネクタがあり、PC内部接続用の音声ケーブルが同梱される(写真=右)

 ビデオキャプチャ用のアプリケーションは、独自の「HQ RECORDER」が付属する。また、保存したファイルをDVDやBD-R/REといったディスクメディアに保存するためのオーサリングソフトとして、サイバーリンクの「PowerProducer v4」も同梱される。そのため、PC用の記録型Blu-ray Discドライブがあれば、HDRECSで録画した映像をHD画質でディスクメディアに書き出すことも可能だ。

 とはいえ、HQ RECORDERにファイルフォーマット変換などの機能はなく、PowerProducer v4も基本的にDVD-Video形式やBDAV形式でディスクに書き込む以外の機能を備えていない。したがって、ファイルフォーマットの変換や本格的なビデオ編集が必要な場合は、別途ビデオ編集ソフトや変換ソフトが求められる。

※記事初出時、「ファイルフォーマットの変換や本格的なビデオ編集が必要な場合は、別途Canopus HQ Codec対応のビデオ編集ソフトや変換ソフトが必要だ」と記載しましたが、DirectShow経由での入力に対応した編集/変換ソフトで利用できる場合があります。ただし、カノープス推奨のソフトはEDIUSシリーズとProCoderシリーズです。お詫びして訂正させていただきます。

 まだ、EDIUSやProCoderを持っていないユーザーは、半額で購入できるクーポン券がパッケージに同梱されるため、必要に応じて導入することで、より便利にHDRECSを使えるだろう。また、30日体験版の「EDIUS Pro version 4」も付いてくるので、こちらをまずは試してみることをおすすめする。ただし、HDRECSに搭載されているハードウェアエンコーダはHDRECSに付属するキャプチャソフトのHQ RECORDER専用で、EDIUSやProCoderなどで利用できない点は覚えておきたい。

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