MapFanのインクリメントPが見せる“次世代サービス”Google、Yahooに負けてられるか

» 2007年07月18日 20時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 MapFanを出荷しているインクリメントPは、7月18日に同社が提供している製品や地図サービスを関係者に紹介する「パートナーズイベント」を開いた。会場には、すでに運用が始まっているサービスやパッケージ製品から、現在開発中の地図利用サービス、地図情報の鮮度や精度を高める取り組みなどが紹介されている。

 MapFanと連動してオンラインで利用できるサービスとして展示されていたのは、すでに運用が始まっている「観光楽地図」「ココメモ BETA」で、どちらもMapFan会員が登録した情報が主なコンテンツとなるサービスだ(観光楽地図にはオリジナルのコンテンツもあり)。

 参加したユーザーが地図に情報を登録する形式のオンラインサービスは、Yahoo Japanの「ワイワイマップ」やGoogleの「マイマップ」など最近増えているが、それらとの差別化についてインクリメントPの説明スタッフは「ほかのサービスは、地図に情報を追加していく形式だが、MapFanのサービスはまず(利用したい)情報が表示されて、そこから地図や関連するデータに結びつくといった、ユーザーの使い勝手を考えているところが違う」と述べている。

 最新バージョンがリリースされたばかりの「MapFan PLANNER 2」もデモを行っている。VICSで提供される情報をオンライン(VICSのビーコンやFMの多重放送でないことに注意)で取得してリアルタイムで表示できるのが特徴であるが、インターネットを介して情報を得るため、車に積んだオフライン状態では利用できない。また、意外にも、MapFanはGPS情報の表示にも対応していないなど、カーナビとして使うことはできない仕様になっている。

 MapFan PLANNER 2の説明スタッフによると、MapFanを使って大きな画面でカーナビをしたいというユーザーからの要望はあるものの、以前出荷していた、GPS表示対応MapFanの実績では車にPCを持ち込んでまで利用するユーザーが少なかったため、その後はGPS対応を見合わせていると説明している。

ココメモ BETAは携帯電話からも情報の登録が可能。画像データも扱えるココメモだが、携帯電話から入力できるのはテキストデータのみ
VICSをオンラインで利用できる「MapFan PLANNER 2」は渋滞情報や車線情報、駐車場の混み具合をマップに表示できる。WiMAXが運用されると車でも利用できるかもしれない

 VICSは外部から入手する交通情報であるが、車両の運転情報「プローブデータ」を交通情報の1つとして利用する試みも始まっている。パイオニアがインクリメントPと協力して運用している「スマートプローブ」では、車載センサーから取得される「車両位置」「速度」「アクセルやブレーキの制御情報」を無線ネットワーク(現状は手動操作による携帯電話)を介してサーバに集積し、そこから得られる車両密度や速度の状態から道路の込み具合を判定して渋滞情報を流すことが可能になる。

 この方法のメリットは、主要幹線道路以外のVICSがカバーしていない道路でもVICSに準ずる情報が利用できることだ。現状では、外部ネットワークとの接続が手動操作の携帯電話に頼っているためリアルタイムのデータ更新や情報取得は難しいが、データを長期蓄積することでその道路の交通量傾向を把握できれば、「渋滞が起きる可能性アリ」という精度の情報は提供が期待できる。

 オンラインで利用するMapFanは、変更された道路状況を月1度の頻度で更新できるが、より細かな「地域密着」的な変更を即座に反映させる取り組みとして紹介されているのが、2006年12月から2007年3月にかけて試験的に行われた「地図情報投稿ステーション」(Mipss:MapInformation Posting Station)だ。会場では「Honda Internavi Premium Club」会員の一部が参加した試験の成果がPOPで説明されている。

 Mipssは、ユーザーが確認した新しい道路の開通、コンビニエンスストアなどの新しい店の回転情報などを会員限定で投稿してもらうことで、ローカルで発生した細かい変更点を短い時間でMapFanの地図情報に反映することを目指している。投稿フォームには道路の経路を書き込める「お絵かきツール」なども用意されるなど、使い勝手を考慮して投稿をしやすくしているが、地図情報への反映は、インクリメントPが情報の信憑性などをチェックしたうえで行われるという。

 イベントでは、地図情報の精度を高めるための取り組みも紹介されている。地図情報は航空写真をベースに構築されていくが、建物の状況や道路標識、車線、ランドマークの状況は現地調査によってデータベースに蓄積され、その情報を利用してより高精度な地図情報が作られていく。現地調査は、ビデオカメラ(撮影解像度1280×800ドット)とPC、HDDで構成される撮影システムを搭載した車両によって行われているが、2007年の夏に「日本全土制覇」を成し遂げるということで、会場ではこれまで撮影した画像情報を紹介するデモが行われている。このように収集した情報を利用して、ホールや病院、大規模商業施設の誘導ナビを行ったり、複雑な車線ガイドを建物や実際の道路をベースにしたCGで示したりするのに利用されるという。

 そのほか、渋滞が発生しやすい交差点の映像を携帯電話でリアルタイムにチェックできるシステムもデモが行われていた。インクリメントPが都内20箇所(将来的には30箇所に増やす予定)に設置したカメラの映像(フラッシュ動画)を、携帯電話やPCで見ることができるもので、運用開始の時期は未定。道路交通情報として利用するだけでなく、デスクトップツールで眺めるだけでも面白いと思うが今のところその予定は「うーん、ありませんが考えておきます」(インクリメントP説明スタッフ)とのこと。

日本全土を制覇した「走行現調画像」に掲げてある「あなたの家の前の道も」はハッタリでない。東北の地方都市にある記者の実家前の道路まで網羅されていたのには正直驚いた
交差点の画像をリアルタイムでチェックできるサービスも「参考展示」されていた。画像をフラッシュで見せるだけでなく、このようにテキスト情報も重ねて表示できる

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