北京五輪まで1年を切ったレノボの北京本社に行って、見た!ThinkPadの“本丸”はココ(1/2 ページ)

» 2007年08月22日 12時00分 公開
[富永ジュン,ITmedia]

“中国のシリコンバレー”に本社を構えるレノボ

北京郊外にあるレノボの本社ビル

 2004年末に「ThinkPad」シリーズなどを擁するIBMのPC部門を買収したことで、日本の一般ユーザーにもその名が広く知られるところとなった中国企業レノボ(聯想=Lenovo)。あれから2年半以上の年月が経過し、PCの世界シェア第3位のメーカーとして、そして“ThinkPadのレノボ”として確実に認知度を上げている最中だ。

 PC USERの読者ならば、ThinkPadといえば開発拠点でおなじみの大和事業所が頭に浮かぶ人が多いかもしれないが、レノボの本社は中国北京市の中央部から車で西北に小1時間ほど走った海淀区の西側にある。

 海淀区という地域は、科学・技術分野においては北京随一といわれる清華大学や中国の最高学府である北京大学など、有名大学が数多く集まっている。さらに、そこから輩出される優秀な頭脳をいち早く確保すべく、中国政府が設立する研究所にくわえ、Intel、IBM、Oracle、Siemens、Motorola、MicrosoftなどのIT企業がオフィスビルや研究所を構え、「中国のシリコンバレー」と称される場所でもある。街路樹が立ち並ぶ道幅の広い道路と、青々とした芝生が植えられたオフィスビルが整然と立ち並ぶ様は、たしかに米国カリフォルニア州のシリコンバレーを彷彿とさせる風景だ。

 レノボは、この海淀区に4棟のビルを構える。いずれも徒歩5分程度で移動できる範囲内にあり、本社オフィスとしてだけでなくさまざまな施設が併設されている。今回は、それらの施設の中から製品のデザインを手がける「イノベーション・デザイン・センター」、中国国内向けのデスクトップPC・サーバを生産する北京プラント、中国国内のサポートを行うコールセンターを訪れた。ただし今回、建物内の写真撮影は一切許されなかったので、文章のみでの紹介となることをお断りしておく。

製品開発の重要な拠点となる「イノベーション・デザイン・センター」

 まず最初に足を運んだイノベーション・デザイン・センターは、4階建てのビル内に約80人のデザイナーと技術者が働く施設だ。製品の形や色、グラフィックスを決めるだけでなく、インダストリアルデザインやメカトロニクスなどユーザーエクスペリエンスの見地から見た広い意味での「デザイン」を手がけている。

 その成果の一例として、ヒンジ部にチューブ型のスピーカーを埋め込んだことでドイツの工業デザイン賞「IF」や日本のグッドデザイン賞を受賞したノートPC「TianYi F20 Lucky Star」が挙げられた。さらに、レノボが独自に開発した技術を用いることにより液晶ディスプレイと本体間のヒンジ部分を360度可動させることに成功した、B5ファイルサイズのコンセプトモデル「Yoga」が紹介された。

 ドイツのレッド・ドット・デザイン賞を受賞したYogaは、本体からキーボードとタッチパッド部を取り外すことが可能で、360度回転させた液晶パネルを自立させた状態で、キーボードとタッチパッドをまるでデスクトップPC向けのワイヤレスキーボードとマウスのように使えるアイデアが斬新に感じられた。

各国のデザイン賞を受賞したノートPC。左からTianYi F20、Yoga、Sundial

 施設内には、新デザインの開発時に使われる部屋が多数用意されている。利用環境を考慮しながら製品の色を決められるよう、UVライト、夜明け、白熱灯、太陽光など6種類の照明を人工的にシミュレートできる装置と、手のひらサイズのプラスチック製カラーサンプルが置かれた部屋や、企画部およびマーケティング部といった他部門とのやりとりの際に色や形、テクスチャのイメージをより伝えやすくするための製品サンプルが置かれた部屋などがそれだ。

 これらの製品サンプルは、IT業界で実際に発売されて人気を集めた製品や逆にデザインが不評だった製品に加え、車や玩具、服飾など多種多様な業界からサンプリングが行われていた。これらの製品サンプルを使って新製品のデザインの方向性を決定し、さらにアイデアを融合させることで新しいコンセプトを生み出すのだという。

 また、樹脂とカラーパウダーを使ってコンセプトモデルの試作品を作成する装置や、デザインの構造を分析する3Dスキャナ、厳密な色味を数値で算出する装置などが置かれているラボも公開された。このラボで働く技術者たちはすべて大学院を卒業した高い技術と知識を持つ人材で、デザイン面からの新製品の研究開発を支えている。

 レノボ副社長兼イノベーション・デザイン・センター所長を務めるYao Yingjia氏は、「このラボを同社の製品開発における重要な拠点」とアピールし、性能や最新の技術、コストパフォーマンスだけでなく、ユーザーに受け入れられるデザインは同社製品には欠かせない要素の1つと考えていることが伺えた。

イノベーション・デザイン・センターとイノベーション・センターがあるビル。このビルはかなり大きく、水をふんだんに使ったデザインが印象的だった

コンクリートの打ちっ放しの壁面や曲線を取り入れた建物のデザインはまるで美術館のようなモダンなイメージだ。右の写真はイノベーション・センターの入り口だ

 このほか、3G携帯電話、ノートPC、デスクトップPC、サーバなどのプロトタイプやモックが集められ、比較検討が行われる「グリーンルーム」、アクセサリーや布、小物などさまざまなアイテムをカラーデザイナーとともにディスカッションすることによって新しいデザインやテクスチャの発想を得る、バーを模した部屋などがあった。同社がデザインした2008年北京オリンピックの聖火トーチも、このバーに置かれていた中国の伝統的な朱塗りの菓子盆から着想を得たものだ。

2008年4月に発表された2008北京オリンピック聖火トーチ。レノボがデザインしたもので、伝統的な中国美術と現代的なデザインを融合させたという。中心モチーフは「雲」だ。サイズは720×50×40ミリ、重量は約1キロだ

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