「RX1は終点でない」東芝が目指すモバイルノートPCとは山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(1/2 ページ)

» 2007年08月23日 11時00分 公開
[山田祥平,ITmedia]

 コンシューマーからビジネスに至るまで、一貫した思想のもとに、実質的には、ノートPC専業ベンダーといっていいほどに、業界を常にリードしてきた東芝。昨今も、数々の世界一を実現したdynabook SS RX1の出荷を開始し、市場の反応も上々だという。今回は、荻野孝広氏(PC第一事業部PCマーケティング部マーケティング担当主務)に“RX1”に託す東芝のモバイルノート戦略を聞いた。

“踊り場”からの脱出を目指すdynabook SS RX1

──各社とも、最近では携帯性能を重視した製品に注力する姿勢が目立っています。東芝としては、現状のモバイルノートPC市場をどのように分析していますか。

東芝のノートPCを長年にわたって企画してきたPC第一事業部PCマーケティング部マーケティング担当主務の荻野孝広氏

荻野氏 東芝としては、多少の軌道修正を加えながらもずっとノートPCを重視して製品を作り続けてきました。モバイルノートに関しても当初の狙いどおりといったところでしょうか。もともと、この市場は着実に広がっていたのです。市場の成熟を待つ一方で、ノートPCを取り巻く現在のインフラを考えたとき、パブリック、プライベートを問わず、ワイヤレス環境やバッテリーの性能など、モビリティを生かせる土壌はすでに整ったと見ていいでしょう。それなのに、モバイルノートの市場はいまひとつ伸びていません。現状は“踊り場”状態にあるといえます。全体的にもうちょっと伸びていいのではないかと考えています。

 そういう状況の中、“軽薄短小”の商品で東芝なりの取り組みをしてきましたが、モビリティに特化したPCでも、市場を活性化できるような商品をそろそろ投入したいと画策してきたのです。

──それが、今回の「RX1」の企画につながったということでしょうか。

荻野氏 モバイルノートの市場が伸びない要因は、いろいろあります。その1つとして「モバイルだから多少駄目でもいい」という妥協、不平、不満、不便の抑制があります。ですから、“こちらを取ったからあちらはしょうがない”とあきらめてきた要素が両立できている商品を用意すれば、市場規模の拡大を後押ししていけるのではないかと考えたのです。東芝には、ノートPC作りで22年間培ってきた技術とノウハウがあります。それを最大限に生かした商品を作ってみようと考えたのです。

 実は20周年記念のワンスピンドルモデルを出したときに、すでに計画がありました。その企画にあたって、ユーザーが従来のモバイルノートPCにどのような不満を感じているかを調査してみたのですが、ユーザーは、性能はもちろんのこと、モバイル利用であっても拡張性に妥協できないようなのです。もちろん、いろいろなタイプのユーザーがいるのですが、そのなかに、どのスペックでもガマンしたくないユーザー層が確実に存在することが判明したのです。

 汎用のノートPCと同じ機能を、どのようにモバイルノートへ取り入れていくかというのは重要なテーマです。そこで、RX1の開発では、スピンドルの数に限らず、(20周年記念モデルとして登場した「dynabook SS SX/190」と)同じボディで、すべての要求を満たすことを基本方針にしました。光学ドライブに関しては賛否両論あるとは思いますが、使っても使わなくても本体に内蔵されている安心感は大きいはずです。

左が20周年モデルとして登場したワンスピンドルのdynabook SS SX/190で幅286.0×奥行き229.0×厚さ9.9〜19.8ミリに重さ約1.29キロ、バッテリー駆動時間は約5.4時間。右が“Ture Mobile”を具現化した「dynabook SS RX1」で幅283×奥行き215.8×厚さ19.5〜25.5ミリで重さは約968グラム、バッテリー駆動時間は約12.5時間(最上位のRX1/T9Aにバッテリーパック5800を装着)

──軽薄短小という意味で、RX1におけるボディの薄さとサイズはどうでしょう。

接続端子が集中するdynabook SS RX1の左側面。ビジネス利用を考慮してプロジェクタと接続するD-Sub 15ピンも用意している

荻野氏 やろうと思えば、まだ薄くできます。でも、あまり薄くしてしまうとインタフェース端子が特殊な形状になってしまうんですね。それでは多くのユーザーに受け入れてもらえないという結論に至りました。サイズにしても同様です。東芝はモバイルノートでもワイド画面が必須と考えています。オフィスアプリケーションもワイド画面で使いやすいはずです。また、太陽光の下で使う場合の視認性を確保するために、RX1は半透過型液晶パネルを搭載しているのですが、これも企画の早い段階で決まっていました。

 RX1の開発では、多くのイノベーションを達成しています。先ほども述べたように、二律背反を克服せよというのが今回の開発における重要なテーマでした。その方向性で、あらゆる角度から開発を進めた1つの形がRX1とになったのです。開発、設計、製造、営業まで、各セクションが集まって知恵をしぼった結果です。

dynabook SS RX1のレビューで紹介した屋外における液晶ディスプレイの画面表示

 例えば、半透過の液晶ディスプレイは屋外で見えればよいというのではなく、屋外はもちろん、屋内でも実用的であることを重視しました。そのためには、バックライトを使ったときにもはっきりと見えて画質も美しくなければなりません。店頭でほかの製品と並べると、液晶ディスプレイの表示品質がわずかに劣るように感じられるかもしれませんが、それが、販売にあたって不利になるとは考えていません。

 東芝のノートPCラインアップにおける製品のポジショニングでは、RX1を現状の製品群にアドオンするものとは考えませんでした。RX1はノートPC市場を拡大するための製品ではありません。パイを増やすものではなく、伸び悩んでいるモバイルノート市場を刺激するための製品です。はっきりいって、メインターゲットはLet'snoteを使っているユーザーですね。ノートPCを持ち運びしたいと考えている「既存のユーザー」へ徹底的にフォーカスしました。

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