Vistaで接続できないNASに対処するサクッとおいしいVistaチップス 19枚め

» 2007年08月24日 11時00分 公開
[織田薫,ITmedia]
今回のチップスが使えるエディションは?
エディション Home Basic Home Premium Business Ultimate
対応状況

 NAS(Network-Attached Storage)は、WindowsやMac OSのファイルサーバ機能を提供するアプライアンス製品。平たく言えば、ネットワーク接続で使う外部記録装置だ。昨今では人気のPC周辺機器となっている。

 家庭向けのNASは低価格な半面、OSにWindowsを採用しているものは皆無といってよい。OSのライセンス料が必要であれば、低価格でNASを販売するのは難しいからだ。このため、多くのNASは無料で利用できるLinuxと、ファイルサーバ機能を提供するサーバアプリケーションのSambaを組み合わせている。SambaはUNIX系OSで動作するアプリケーションで、Windowsネットワークのフォルダ/プリンタ共有機能を提供するものだ。SambaのライセンスはGPLで、基本的に無償で自由に使える。

 ここで1つ問題となるのが、VistaとSambaの接続性だ。NASがSambaの最新版であるバージョン3系を利用している場合は、Vistaで接続できる。しかし、古いバージョン2系を利用している場合は、デフォルトでは接続できない。これは、Vistaで使われるパスワードの送信方法が、古いバージョンのSambaでサポートされていないためだ。

 Windowsには、ネットワーク経由のパスワード認証に複数の方式が用意されている。プレーンテキストを利用する方法、LM認証、NTLM認証、NTLMv2認証を用いる方法などだ。NASがバージョン2系のSambaを採用している場合、NTLMv2の認証には対応できない。Vistaのデフォルト設定は、NTLMv2を使うように構成されているため、認証が正しく行えず、NASに接続できないというわけだ。

 Vistaの認証方法を変更するには、レジストリを変更してセキュリティレベルを低くする必要がある。手順は、「スタートメニュー」のクイック検索に「regedit」と入力し、レジストリエディタを起動。次に「HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\Lsa」キーを開く。DWORD値の「LmCompatibilityLevel」をダブルクリックし、データの値を「2」もしくは「1」にする。設定変更後はレジストリエディタを閉じる。

 DWORD値による設定の違いは下表の通りだ。この値を小さくするほど、セキュリティレベルの低い認証方法が用いられ、外部からパスワードを解読される可能性が大きくなる。とくにLM認証は、短い文字数のパスワードでは簡単に解読されてしまうので注意してほしい。そのため、まずは「2」に設定し、これで接続できなかったら「1」にする、というように段階的にセキュリティレベルを下げていこう。

「スタートメニュー」のクイック検索に「regedit」と入力する(写真=左)。レジストリエディタが起動したら、「HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\Lsa」キーを開き、DWORD値の「LmCompatibilityLevel」をダブルクリックして開く(写真=中央)。データの値を「2」か「1」にする(写真=右)

LmCompatibilityLevelの設定
意味 管理ツールでの設定
0 送信にLM/NTLMを利用し、NTLMv2セッションセキュリティは利用しない。受信はLM/NTLM/NTLMv2を許可する LMとNTLM応答を送信する
1 送信にLM/NTLMを利用し、サーバが対応している場合はNTLMv2セッションセキュリティを利用。受信はLM/NTLM/NTLMv2を許可する LMとNTLMを送信する - ネゴシエーションの場合、NTLMv2セッションセキュリティを使う
2 送信にNTLMを利用し、サーバが対応している場合はNTLMv2セッションセキュリティを利用。受信はLM/NTLM/NTLMv2を許可する NTLM応答のみ送信する
3 送信にNTLMv2を利用し、サーバが対応している場合はNTLMv2セッションセキュリティを利用。受信はLM/NTLM/NTLMv2を許可する NTLMv2応答のみ送信する
4 送信にNTLMv2を利用し、サーバが対応している場合はNTLMv2セッションセキュリティを利用。受信はNTLM/NTLMv2を許可する NTLMv2応答のみ送信(LMを拒否する)
5 送信にNTLMv2を利用し、サーバが対応している場合はNTLMv2セッションセキュリティを利用。受信はNTLMv2のみ許可する NTLMv2応答のみ送信(LMとNTLMを拒否する)
値「3」がデフォルト。管理ツールでの設定は、Vista Ultimate/Business/Enterpriseのみ対応


 なお、Vista Ultimate/Business/Enterpriseの場合、コントロールパネルの管理ツールから設定を変更するだけで同様のことが行える。コントロールパネルの「システムとメンテナンス」をクリックし、「管理ツール」を開く。「ローカルセキュリティポリシー」を起動し、左ペインの「ローカルポリシー」から「セキュリティオプション」を選択。右ペインで「ネットワークセキュリティ:LAN Manager認証レベル」をダブルクリックし、「ローカルセキュリティの設定」タブで、「NTLM応答のみ送信する」(前述したDWORD値2の設定と同様)もしくは「LMとNTLMを送信する - ネゴシエーションの場合、NTLMv2セッションセキュリティを使う」(1の設定と同様)に設定する。

コントロールパネルの「システムとメンテナンス」をクリックし、「管理ツール」の「ローカルセキュリティポリシー」を起動する(写真=左)。左ペインの「ローカルポリシー」から「セキュリティオプション」を選択し、右ペインで「ネットワークセキュリティ:LAN Manager認証レベル」をダブルクリック(写真=中央)。「ローカルセキュリティの設定」タブで、「NTLM応答のみ送信する」や「LMとNTLMを送信する - ネゴシエーションの場合、NTLMv2セッションセキュリティを使う」を選択する(写真=右)

 実は、WindowsからSambaに接続できなくなったというトラブルは、Vistaが初めてではない。古い話になるが、Windows NT4.0のService Pack 3適用時に、Windowsネットワーク利用時のパスワード送信がプレーンテキストで行えなくなったことがあった。この影響により、LinuxなどのUNIXでWindowsのファイルサーバ機能を実現するSambaへの接続ができなくなったことがある。この問題に関しては、マイクロソフトのサポート情報に解決方法が記載されている。

注意

レジストリの操作は、Windowsの基幹に関わる設定を変更するため、不具合が発生する可能性があります。設定を変更する場合はバックアップを取ったうえ、自己責任でお願いいたします。編集部はWindowsの設定変更により生じた損害について、一切の責任を負いません。



過去に紹介したVistaチップスと各エディションの対応状況
内容 Home Basic Home Premium Business Ultimate
18枚め:VistaのWindows Updateを使いこなす
17枚め:VistaとWindows XP間の文字化けを解消する
16枚め:Internet Explorer 7のタブ機能をカスタマイズする
15枚め:Internet Explorer 7のユーザーインタフェースを改造する
14枚め:Vistaのジャンクションを理解する
13枚め:Vistaでユーザー用フォルダの参照先を変更する
12枚め:Vistaでファイルやプリンタを共有する
11枚め:Vistaの詳細ブートオプションを利用する
10枚め:Vistaの便利な機能を有効に、不要な機能を無効にする
9枚め:VistaにXP用ドライバを手動でインストールする
8枚め:ファイルとレジストリの仮想化を理解する
7枚め:「システムの復元」と「以前のバージョン」で使う領域を変更する
6枚め:WindowsメールにOutlook Expressの環境を取り込む
5枚め:非対応のWindowsヘルプを利用可能にする
4枚め:間違って削除したファイルを復元する
3枚め:「ファイル名を指定して実行」をスタートメニューに加える
2枚め:アプリケーションを管理者として実行する
1枚め:ユーザーアカウント制御を使いこなす

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