2008北京オリンピックはLenovo抜きに語れない(1/2 ページ)

» 2007年09月04日 14時30分 公開
[富永ジュン,ITmedia]

オリンピックに注力するLenovo

 前々回、そして前回の記事でお伝えしたように、Lenovoは中国国内でこそPCのトップシェアを獲得し高い知名度を誇っているが、世界的に見るとまだそのレベルには達していないのが現状だ。そこで同社はLenovoブランドを国外に広めるための施策として、2004年に中国企業としては初となる国際オリンピック委員会のワールドワイド・スポンサーとなった。2006年のトリノ冬季オリンピックに続いて、2008年の北京オリンピックでは、大会で使われるハードウェアの提供を一手に引き受けるほか、聖火リレーのワールドワイド・パートナーに加え、聖火トーチのデザインも手がけた

 「誓いの雲」(Cloud of Promise)と名付けられた聖火トーチのデザインは、300を越えるデザイン案から選出されたもので、これにより、Lenovoは同じ大会のスポンサーと聖火トーチのデザインのいずれにも貢献した初の企業となった。

実物と同じサイズ・素材で作られた聖火トーチの試作品(写真=左)。子ども用の野球バットほどの大きさで緩やかに湾曲している。聖火トーチ上半分には中国の伝統的なモチーフである雲をデザインした模様が彫り込まれている(写真=中央)。下半分はゴムを混ぜた特殊な塗料が塗られ、滑り止めの役目を果たすとともに手に馴染む不思議な感触だった。丸めた紙から着想を得た聖火トーチのデザインスケッチ(写真=右)。丸めたアルミ素材をさらに湾曲させるというデザインを実現させるのに高い技術力が要求されたという

 オリンピックを通じたマーケティング活動としては、中国国内では大手の中国中央電視台(CCTV)において、オリンピックのスポンサーシップをアピールするコマーシャルを大々的に流すほか、全世界に向けてはGoogle、YouTubeとタイアップした聖火リレー走者の公募キャンペーンを実施し、すでに65万件もの応募があったという。さらには、聖火トーチのデザインをモチーフにした特別モデルのノートPCを制作し、北京オリンピックでの活躍が見込まれるトップアスリートの直筆サインを入れた上で2008年2月からのオンラインチャリティオークションに出品する予定だ。

 北京オリンピックは中国の7都市37会場において28種目306イベントが実施され、1000万人の来場者と40億人のTV視聴者が見込まれる史上最大のオリンピック大会となる。Lenovoはオリンピックにハードウェアを提供することで、大規模なイベントにおいても同社のシステムが十分な安定性を持つ優秀なものであることをアピールしていきたいと考えている。そのため、同社は2年以上前からオリンピックに向けてシステムの準備を始めているという。

聖火トーチのデザインをモチーフにした特別限定モデルのノートPC(写真=左)。天板だけでなく、パームレスト部分にも雲のモチーフが彫り込まれているのが分かる(写真=中央)。こちらは米国でのみ限定リリースされたオリンピックモデルのノートPC(写真=右)。同じくグローバル・パートナーであるコカ・コーラのロゴがさまざまな言語でエンボス加工されている

大量のハードウェアを供給し北京五輪を支える

北京オリンピック組織委員会(BOCOG)本部内に設置された試験センター内の様子。各競技ごとにブースが分けられ、システムの稼働シミュレーションが行われている

 北京オリンピックに提供されるハードウェアは、デスクトップPC、ノートPC、サーバ、プリンタなど合計2万台に上る。その内訳は、17インチ液晶ディスプレイ付きデスクトップPC「ThinkCentre M55e」が1万台、15インチタッチスクリーン液晶ディスプレイ付きデスクトップPC「ThinkCentre M55e」が2000台、主に屋外での使用が想定されているノートPC「ThinkPad T60」、「Zhaoyang 680」が800台となる。そのほか、タイム・スコア記録とOVR(会場内記録管理システム:On Venue Result System)に使われるサーバ「SureServer T350」、データセンターへのゲートウェイとなる「SureServer R630」、データトラッキングに使われる「SureServer R520 type 1/2」が700台、プリンタも2000台を数えるという。

 このほか、マーケティング活動向けにインターネットラウンジやスポンサー・パートナー・プログラム、オリンピック会場内に設置されるショーケースで使われるPCの5000台も含まれる。

 Lenovoから提供されたハードウェアは、北京オリンピック組織委員会(BOCOG)の本部、およびデジタル北京ビル内に設置された試験センター(Integration Lab)に運び込まれ、競技ごとに分割されたセル内でITIL(Information Technology Infrastructure Library)に準じたシステムが構築される。

 その後、サイズが大きいデータをシステムに送信して正常に動作するかを確かめる、通常のオペレーションを想定したパフォーマンステストのほか、バックアップシステムが動作するか、エラー発生時にどのようにシステムが動くのか、電源・回線断がどのような影響をシステムに与えるかといった非常時のシミュレーションを、膨大なシナリオに沿って何重にもテストが行われる。また、単純に各競技レベルでの挙動を調べるだけでなく、複数の会場でトラブルが同時に発生した場合にも対応できるよう、時系列に沿って異なる視点でテストが実施され、運用手順が作成されていく。

 試験センター内でのテストを通過したシステムは、次に「グッドラック北京」と呼ばれる北京オリンピックプレ大会でテスト運用に入る。北京オリンピック開催1年前となる2007年8月8日から始まったグッドラック北京では、北京オリンピック開催までの1年間にワールドカップ予選試合、北京国際マラソン、国際テニスイベントなど大規模なものを含む42種目のスポーツイベントを通じて、北京オリンピック開催時と同じ条件・環境でシステムの実稼働テストが行われる。

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