ここからは実際のキャリブレーション作業を追っていこう。今回使用したキャリブレーターは、恒陽社グラフィック事業部が販売する「i1 Display 2」だ。LCD-MF241XBRの画質モードは「標準」、色温度は「ユーザー」(RGB個別調整)、ガンマは「2.2」で、それ以外の調整項目はすべてデフォルトに設定してある。
輝度とコントラスト、色温度のRGBは、キャリブレーションソフトウェアの「Eye-One Match」の中で調整していく。今回はWindows XP環境でキャリブレーションしているため、Windows標準のガンマ「2.2」に設定している。キャリブレーションの手順は以下の写真を参照してほしい。
気になるキャリブレーションの結果だが、色温度、ガンマ値、輝度の目標値に対して、ほぼ正確な実測値が出ている。作業結果画面の右上に表示された馬てい形の色度図のうち三角形の内側がLCD-MF241XBRで表示できる色域になるが、高色域パネルを搭載しているだけあって広い色域を確保していることが分かる。
画面の左上にあるグラフは、横軸がPCからのRGB入力階調、縦軸がLCD-MF241XBRの画面を実測したRGB出力階調を示す(RGBガンマカーブではない点に注意)。入力階調と出力階調はほぼリニアに対応しており、RGBのラインもほぼ一致した。これは、PCから出力された色が、LCD-MF241XBRの画面上でほぼ正確に再現されていることを意味する。
このクラスのディスプレイでここまでRGBのラインが一致する製品は多くない。以前PC USERでレビューした試作機では画質面が完成されていなかったようだが、今回入手した製品版をキャリブレーターで試したところ、画質の問題は見られなかった。
計測のあとには測定結果に基づいたモニタプロファイルが作成されるので、これを保存してEye-One Matchを終了する。モニタプロファイルを保存すると、Windowsの「色の管理」に自動的に登録される仕組みだ。
このようにキャリブレーションしたLCD-MF241XBRは、階調が素直に表現され、トーンジャンプも皆無に近い。ハードウェアキャリブレーションに対応した業務用ディスプレイと比較すると、黒つぶれ、白飛び、色飽和は多少見られたものの、コンシューマー向けの液晶ディスプレイとしてはかなり少ないほうだ。
続いてこの状態をもとに、インクジェットプリンタとのカラーマッチングを簡単に試してみた。プリンタはエプソンの「PX-G930」で、メディアは純正写真用紙のクリスピアを使用。また、キヤノンのプリンタ「PIXUS iP9910」と、純正写真用紙のプロフェッショナルフォトペーパーも用意した。
画像の表示と印刷に用いたアプリケーションはアドビシステムズの「Photoshop CS2」だ。印刷した画像は、キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS 20D」で撮影したRAWデータを、Photoshop CS2にてAdobe RGBカラースペースで現像したものだ。Photoshop CS2とプリンタドライバは、正確なカラーマッチングを行えるように設定している。
実際に各プリンタの出力と画面を見比べたところ、いずれの場合もカラーマッチングは十分満足できる水準にあった。LCD-MF241XBRでは、Adobe RGBカラースペースの画像が持つ広い色域をほとんど再現できるため、Adobe RGB対応の画像を扱いやすい。現時点で標準的なカラースペースであるsRGBに表示を合わせる画質モードがないのはもどかしいが、sRGB対応のディスプレイでは再現できない色を表示できるのは便利だ。
今回の場合、用紙の色温度よりもLCD-MF241XBRの色温度が若干高いので、画面で見る色のほうが少し青っぽくなったが、ほぼ画面で見た印象の通り印刷が行えた。あらかじめ印刷する用紙が決まっているならば、用紙とLCD-MF241XBRの色温度を合わせたうえでキャリブレーションすることで、より高精度なカラーマッチング環境が得られるだろう。
以上、LCD-MF241XBRをキャリブレーションディスプレイとして使ってみたが、静止画の基本的な表示性能は高かった。AV入力に比べて目立たない部分とはいえ、フォトレタッチやカラーマッチングを重視するユーザーにとっても魅力的な製品と言える。
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