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いつでもどこでも資料をスキャン――モバイル対応「ScanSnap S300」2万円台で画質も向上(1/2 ページ)

» 2007年10月02日 10時15分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

もう1つのScanSnap――エントリーモデルの登場

ScanSnap S300

 2001年7月に初代の「ScanSnap! fi-4110EOX」が発表されてから6年になる。その間、ほとんどのモデルは前製品の後継機として登場し、在庫分を除いて並行して販売されることはなかった。唯一の例外はフラットベッドスキャナにドキュメントフィーダがついた形状の「fi-4010SSF」シリーズだが、こちらは2代めの「fi-4010SSF2」ですでに製造終了しており、後継機は登場していない。

 だが、ここにきて初めて、現行機種と並行販売されるエントリーモデルが登場した。それが今回紹介する「S300」である。現行最新機種の「S510」に比べ、ほぼ同等の基本機能を搭載しつつ、性能面を抑えて低価格化を実現している。まずはS510との違いから見ていくことにしよう。

 従来ScanSnapシリーズには、読み込んだ電子データを編集するソフトとして「Acrobat Standard」の最新版がバンドルされてきた。単体で実売3万円程度のAcrobat Standardが同梱されて5万円弱(PFUダイレクト価格)で購入できるため、お買い得感の強い製品である半面、「Acrobatを外して安くしてほしい」というユーザの声があったのも事実だ。

 今回のS300ではAcrobatは同梱されておらず、実売価格は3万円を切る。AcrobatではAdobe PDFという仮想プリンタをインストールすることで、印刷機能を持つアプリケーションすべてからPDFへの出力ができるようになるほか、電子署名の付加、ページの差し替え、ばらし、複数ファイルからの結合などの編集が行える。ただし、これらの機能のほとんどはS300にも添付されている、ドライバの「ScanSnapManager」と文書管理ツールの「ScanSnapOrganizer」でも実現可能なのだ(これについては後述する)。

 また、ハードウェアとしては、光学系にCCDではなくCISを採用したことが大きい。これはScanSnapシリーズ初の変更だ。一般的にCCDよりCISを使うほうがユニット全体のコストを抑えられる。だが、このCISの採用こそがS300を単なるエントリーモデル以上のポジションに位置付けた要因でもあったのだ。

本体前面(写真=左)/背面(写真=中央)/右側面(写真=右)。サイズは284(幅)×95(奥行き)×77(高さ)ミリ、重量は1.4キロ

小型化とバスパワー駆動でモバイルに対応

光学系をCCDからCISに変更

 S300はエントリーモデルであると同時に、モバイルモデルでもある。実物を一目見るとその小ささに驚かされるが、実際にS510に比べて体積比で約3分の1、重量で約2分の1を実現している。これはCISの採用によるところが大きい。

 いままでのScanSnapシリーズは、白色冷陰極管を使用しミラーとレンズを用いてCCDイメージセンサでスキャンを行う。焦点深度が深いために多少原稿浮きがあってもピントが合いやすい、白色光源をカラーフィルタで分光するため色再現性が高いなど、画質にアドバンテージがあると言われている。ただし、機構的に小型化が難しい、光源のウォームアップが必要、消費電力が大きくなるなどのデメリットもある。

 一方、CISは光源にRGBの3色のLEDを用い、高速に色を切り替えながら原稿に密着させたCMOSイメージセンサで直接読み取る。CCDとは逆に焦点深度が浅く、ピントが合いづらい、RGBの切り替えが必要であるために色ズレを起こしやすく読み取り速度が上げにくい半面、小型化が容易で光源のLEDが低消費電力、ウォームアップが不要といったメリットがある。

 ドキュメントスキャナの場合、原稿台からの浮き上がりは原理的にほぼ無視できる範囲で、焦点深度の浅さは問題にはならない。最大解像度もS510と同じく600dpiを実現しており、デメリットとして挙げられるのは読み取り速度くらいだ。

 CCDの場合はミラーやレンズを用いるため、ある程度のスペースが必要になる。特に両面を同時に読み取るScanSnapの場合、原稿の表裏両面にセンサを設置しなければならず、確保しなければならない厚みは2倍になる。本体のカバーを開いてみると分かるが、S510ではこの厚みを確保するために寝かした三角柱で原稿を両側から挟みこむような配置をとっており、その結果、原稿は斜め上から斜め下へと送られる。この角度はほぼドキュメントフィーダの角度に等しく、スムーズな紙送りの一助となっている。

S300(右)とS510(左)の比較。高さは約半分になり、紙送りの経路は水平に近づいた(写真=左)。幅はA4サイズをサポートするためほぼ変化なし。スキャンボタンはカバーで隠れない位置にある(写真=右)。DVDトールケースと並べたところ(写真=右)

 一方、CISを採用したS300ではそれほどのスペースを必要としないため、センサ部も薄く、上下からほぼ水平を保ったまま挟み込むシンプルな配置だ。ドキュメントフィーダから原稿を引きこんだ途端に紙送りの角度が変わるため、やや不安を感じるものの、試用した限りでは特に問題は生じなかった。これはS510に比べて紙送りの速度が遅いことも関係しているのかもしれない。

 ただし、紙送りどころか、原稿の設置状態も不安定になりがちなので、A4サイズを読み込むときはシュータガイドを最大まで引き出しておいたほうがいい。排出側には原稿スタッカは用意されておらず、直接原稿が吐き出される。設置場所によっては排出後にジャムが発生することもあり得るので、前方のスペース確保は必要だ。

 そのほか、高さ方向のスペースを削減した結果、原稿搭載枚数の上限が50枚から10枚に制限された。もっとも、次の原稿をセットしてスキャンボタンを押せば継続読み取りが可能なので、10枚を超える原稿を1度にPDF化することも問題はない。用紙斜行を防ぐためのサイドガイドは外見上、S510と同等の長さを確保しているが、ガイドがローラー位置にまで達しているS510に対して、S300ではローラー手前1センチあたりで途切れている。小さめの薄い原稿では斜行に気をつけたほうがよさそうだ。なお、A3原稿を2つ折りにして読み込むためのA3キャリアシートはサポートしていない。

シュータガイドを最大に伸ばしたところ(写真=左)。S510のサイドガイド(写真=中央)。途中で折れ曲がるようになっており、ローラ直前まで原稿をガイドする。最大搭載量を表すマークは50枚が目安。一方、S300のサイドガイド(写真=中央)の最大搭載量は10枚。ガイドはローラ手前1センチあたりで途切れている(写真=右)

 S300の筐体デザインはS510と同じく、シルバーと黒のツートンカラーだ。あえて違いを言えば、スキャンボタン周りに黒のクリアパーツを配置した。S510のスキャンボタンはカバーに隠れる部分に配置されていたのに対し、S300では常時露出される右端に置かれた左右非対称デザインになっていることを意識してのことだろう。すっきりと締まった印象を受ける。また、スキャンボタン自身もS510の緑色からシルバーに変更された。

 本体背面にはエンボス筋が入っており、片手でつかんで持ち上げる際の滑り止めになる。カバーを閉じると本体がフラットになり、非常に滑りやすいため、細かいことではあるがモバイル用途を考えると重要な工夫だ。

 なお、カバーを開くと電源オン、スキャンボタンワンプッシュで読み取り実行、というScanSnapシリーズの特徴はしっかりと受け継いでいる。自動的にe-文書法に適合した形式でスキャンを行うe-スキャンボタンは省かれたが、個人利用で問題にはならないだろう

 モバイル時にはデータ通信用のUSBケーブルのほか、給電用のUSBケーブルを併用して2ポートを利用することでバスパワー動作が可能になる。据え置きの場合は、給電用ケーブルの代わりにACアダプタを利用することで、バスパワー時の2倍程度の速度で読み取ることができる。

スキャンボタン周りにクリアパーツを採用し、デザイン上のアクセントにしている(写真=左)。ACアダプタコネクタにUSB給電ケーブルを挿してバスパワー動作が可能(写真=中央)。S300の読み取り速度はS510に比べると半分程度。しかし、高解像度モードになるとその差は小さくなる。エクセレントではほぼ変わらない(写真=右)

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