3〜4年で色あせない価値をノートPCに──LaVie開発スタッフに聞く山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(1/2 ページ)

» 2007年10月16日 11時00分 公開
[山田祥平,ITmedia]

 これまで、この連載では「ビジネス利用」で重視されがちだった携帯性能という視点からノートPCの開発現場の意見や仕様の動向を聞いてきた。バッテリー駆動やワイヤレスネットワークへの対応、最近多くのメーカーで訴求されるようになった堅牢性能や、ノートPCそのものの存在理由について、劇的ではないものの、着実に進化を遂げている、もしくは進化を遂げようと頑張っている開発者の声を紹介できたのではないかと思っている。

 さて、ノートPCの進化は2極化が進んでいるといっていいだろう。その1つの方向性が、これまで紹介してきた「軽量」「小型」「堅牢」という携帯性能を重視している方向だとすると、もう1つの方向はホームユースで大きく取り上げられるようになって久しい、エンターテインメント利用を重視する方向、カタログスペック的にいえば「大画面」「高音質」「個性的な筐体デザイン」を進化させたノートPCとなるだろう。

 そこで、今回からは、ホームユースを意識したコンシューマー向けのノートPCについて、各ベンダーに話を聞いていくことにしたい。その最初に登場するのは、先日発表された秋モデルで、デザインを一新させた「Lavie L アドバンストタイプ」のすべてのモデルでHDMI端子を導入するなど、AV関連機能の強化が著しいNECパーソナルプロダクツだ。PC事業本部商品企画本部商品技術部の樫本欣久氏と漆原めぐみ氏に話を聞いてきた。

「面白い機能がついているからこのノートPCを買おう」

NEC PC事業本部商品企画本部商品技術部 漆原めぐみ氏

──最近のコンシューマー用ノートPCのトレンドについて、どのように把握されていますか。

漆原氏 ユーザーがPCに投じる金額が下がってきて、バリュークラスのモデルが売れている傾向が続いています。でも、NECとしては、購入価格が少し高くなっても付加価値の高いPCが購入したくなるような商品を作ろうとしています。ただ、高機能にしただけでは、「安い製品となにが違うのか」を購入する前のユーザーに分からないですよね。そこで「面白い機能がついているから買おう」と思ってもらえるような特色をなんとか用意しようと努力してきました。

──今回の新機種ではWebカメラが搭載されました。

漆原氏 はい、例えば、今回登場した秋冬モデルではWebカメラやHDMI端子を搭載しました。いろいろな付加価値で、従来よりも2万円ほど高くても購入してもらえるのではないかと考えています。

 Webカメラは外付けでもいいのですが、内蔵されていると手軽に始められますよね。新しいLaVie L アドバンストタイプで想定しているのは、PCにちょっと凝ってみよう、PCを使いこなしてみようと思っているユーザーたちです。つまり、Webとメールで十分という状況を打破したいけれど、何をしていいのか分からないというユーザー層ですね。

 そこで、分かりやすく使いやすい機能を提供しようと考えたのです。販売店などに聞くと、外付けのウェブカメラが売れているといった声も聞きますし。

樫本氏 初めてPCを使う初心者ではなく、ちょっと使っているようなユーザーですね。想定しているターゲットは、Webカメラを使ってコミュニケーションで遊ぶ人たちで、比較的若い世代かもしれません。

 単にWebカメラをつけるにしても、画質には注意しました。外付けのWebカメラで、200万画素を超えているものはあまりなくて、あったとしてもシングルマイクです。この先ずっと使うときに、NECのPCはカメラの絵が汚いとか思われたくないじゃないですか。だから、スペックに配慮して、マイクロフォンアレイなども採用しています。ノイズをキャンセルして声だけを抽出するような仕掛けです。そうすることで、Webカメラを使ってソフトフォンのようなものをやるときに使い勝手のいいものが作れるのではないでしょうか。

2007年秋モデルで筐体を新しくしたLaVie L アドバンストモデル。LaVie Cと共通のデザインで、液晶ディスプレイ上部には192万画素のWebカメラを備える
Webカメラを利用するユーティリティには、NECの顔認証技術「NeoFace」が導入されている。登録済みの「顔」をWindowsのログイン認証で利用できる

付加価値の提案は「続けること」が大事

NEC PC事業本部商品企画本部商品技術部マネージャーの樫本欣久氏

──ユーザーはそういうところに、付加価値を感じるでしょうか。

樫本氏 実際問題として、PCはまだまだ感覚的に高額商品といわれています。しかも、何ができるかということにも、みんなバラバラで漠然としたイメージを持っているのではないでしょうか。でも答えがない。それに甘んじて何も手を打たないわけにもいかないので、新しい利用シーンを提案する必要がありました。

 Webカメラにしても本当はまだはしりの段階です。普通にWebカメラを使うだけなら、それほどの広がりはありません。でも、顔認証の仕組みを取り入れたことで、利用する場面が広がっていくはずです。今後、次世代ネットワークが本格的に始動すると、ごく普通にTV電話が使われるようになるでしょう。NTTなどとそういう話をしていると、解像度的にもやはり200万画素程度のものが必要になるんです。そういう時代、動画のTV電話がもっと普及したときにこそ実用になるスペックを新しいLaVie アドバンストモデルは先取りしているのです。

 こういうことって、続けることが大事ですね。「あきらめない」ことが重要です。だから、少しずつでもいいから強化していくのです。今はインスタントメッセンジャー程度でしか実用にならないTV電話も、次世代ネットワークの試験運用が始まれば状況は変わってくるでしょう。

漆原氏 実は、私自身、最初はもっと解像度が低くていいと思っていたんです。でも、新しいWebカメラの映像を初めて見たら、本当にきれいだなと思って。“これでなくっちゃ”と考えが変わりました。

樫本氏 顔認証などは、技術要件として(NECの)中央研究所とのつながりの中で、見つけてきたものです。携帯電話は常に持ち歩けますがPCは違う。自分がそこにいれば使えるけれど、そこにいないと使えないというのは(PCの場合は)アリだと思うんですよ。家族に知られたくないことをやっている場合もあるでしょうし。携帯電話ではすでに商品化されている技術ですが、顔認証技術はPCでこそ必要なんだと思います。

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