「GC-D26XT2-F5 Gemini3」はRadeon HD 2600XTをデュアルで搭載したGECUBE(Info-tekのマルチメディア事業のブランド名)のグラフィックスカードだ。日本ではマスタードギガが扱っている。なお、マスタードギガは、GIGABYTEのPCケースやクーラーユニット、そしてソフトウェアでレーンごとの電圧や電流の監視や微調整が行える機能で日本で多くのユーザーから支持された「ODIN GT」などをはじめとする電源ユニットなどを取り扱っているが、グラフィックスカードに関してはGECUBEの製品を扱う。
GECUBEは、Radeon X1600 XTをデュアルで搭載した「GECUBE X1600XT Gemini series」やRadeon X1650 XTをデュアルで搭載した「GC-DU165XTDG30E2 Gemini2」を発表するなど、Radeon系ミドルレンジGPUを採用したデュアルカードを継続して登場させている。Gemini3はその3代目となる製品で、2007年の3月に行われたCeBIT 2007 Hannoverでその姿が紹介されたGemini 2から、さほど時間を置くことなく、同年6月に行われたCOMPUTEX TAIPEI 2007で動態サンプルが展示された。
デュアルGPUカードとなると、2枚分のGPUやグラフィックスメモリを1枚の基板に配置するために、概して大柄なサイズになってしまうか(その典型的な例が、MSIがイベントで展示するデュアルGPUカードだろう)、NVIDIAのデュアルGPUカード「GeForce 7950 GX2」のように基板を2階建てにした厚いカードになりがちであるが、Geminiシリーズは、常識的なサイズにうまく収まっている。
ATI Technologies(現AMD)が開発したマルチGPU技術「CrossFire」を利用するには、通常、CrossFireに対応したチップセット(AMD 690シリーズや、AMD 580X、570X、480X CrossFire)を搭載し、PCI Express x16スロットを2本実装したマザーボードと、CrossFireに対応したRadeonシリーズのグラフィックスカード2枚が必要になるが、Geminiシリーズが1枚あれば、「CrossFireに対応していない」チップセットを搭載し、PCI Express x16スロットを1つしか持たない、ごく普通のエントリークラスのマザーボードでも、マルチGPUのパワーが利用できることになる。
1枚のグラフィックスカードと非対応チップセットの構成でマルチGPUを有効にするには、グラフィックスカード側にCrossFireを制御する仕掛けを用意しなければならないが、Gemini 3では、従来のGeminiシリーズで採用されたものと同じ技術を利用している。これは、グラフィックスカードに、2つのGPUとPCI Express x16バスとのデータを連携させるプリッジチップ「PLX bridge」によって実現している。データフローはこれまでどおりだが、Gemini 2世代まではGPU間のPCI Expressレーンが「8レーン×2」だったのを、Gemini 3では「16レーン×2」に増やすなど、改良が加えられている一方で、クーラーユニットやDDR2のグラフィックスメモリを採用するなど、従来仕様のままとされている部分もある。
Gemini 3のクーラーユニットは、2スロット分の厚さを持った大型のタイプである。また、2つのGPUによる4つのDVI出力を可能にするため、バックパネルも2スロット消費している。メモリはDDR2を1Gバイト実装するが、2つのGPUそれぞれで512Mバイトずつ割り当てられるため、GPU単体としては「Radeon HD 2600 XTを載せたグラフィックスメモリ512Mバイトのカード」に相当する。
Gemini 3に搭載されたRadeon HD 2600 XTの動作クロックは、コアクロック800MHzにメモリクロック500MHz(DDRのデータ転送レートで1Gbps相当)に設定されている。これは、Radeon HD 2600 XTの定格クロックと比べて、コアクロックは定格どおりだが、メモリクロックは半分の速度まで抑えられていることになる。ちなみに、Gemini 3に実装されていたグラフィックスメモリチップは、Qimonda(キモンダ)の「HYB18T512161BF-20」で、データシートにある定格クロックは500MHzとなっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.