インテルは2007年9月に米国で行われたIntel Developer Forum 2007において、同社の最新製造技術となる45ナノプロセスルールに基づいて製造された新しいCPUを、11月12日(米国時間)に発表すると予告している。その日は、サーバ/ワークステーション向けのXeonと同時に、クライアント向けのCore 2 Extreme QX9650が発表される予定だ。Core 2 Extreme QX9650は、動作クロックこそ従来のCore 2 Extreme QX6850と同じ3.0GHzであるものの、L2キャッシュの容量は12Mバイトに増え、新しい命令セットとなるSSE4に対応するなどの機能強化が図られた。
今回のレビューでは、正式発表に先駆けて入手できたCore 2 Extreme QX9650のサンプルを利用して、新世代となる45ナノプロセスルールCPUの性能をチェックしていきたい。
今回紹介する「Core 2 Extreme QX9650」(以下QX9650)は、開発コード名で“Yorkfield-XE”(ヨークフィールド エックスイー)と呼ばれていた製品で、インテルの新しい45ナノプロセスルールに基づいて製造されている。QX9650は4つのCPUコアを1つのパッケージに収めたクアッドコアCPUになるが、実際にはデュアルコアのCPUダイ2つを1つのパッケージに収納するMCM(Multi Chip Module)と呼ばれる技術が採用されている。
QX9650の動作クロックは3.0GHz、FSBは1333MHzで、従来のQX6850と多くの点でスペックが共通している。気になる熱設計消費電力(TDP)もQX6850と同じ130ワットで、マザーボード側のデザインも「FMB05B」と呼ばれるレイアウトで対応可能であることから、FSB1333MHzに対応するマザーボードにQX9650をそのまま搭載できる。従って、すでにQX6850とIntel X38 Expressマザーなどの組み合わせで構成されているPCなら、そのままQX9650に置き換えることが可能ということになる。
このように、外的なスペックが共通するQX9650とQX6850だが、QX9650の内部では、いくつかの非常に重要な仕様が強化されている。その1つがL2キャッシュの容量だ。QX6850のL2キャッシュは、ダイ1つあたり4Mバイト、CPU合計では合計8Mバイトであったのに対して、QX9650ではダイ1つあたり6Mバイト、CPU合計では12MバイトのL2キャッシュが搭載されている。L2キャッシュの容量が増えれば、それだけキャッシュに格納できるデータ量が増え、CPUがメモリにアクセスしてデータをとってくる頻度が減るため、全体としてCPU性能の向上につながる。
QX9650のもう1つの強化点は、「SSE4」と呼ばれる新しい追加命令セットに対応していることだ。x86のCPUには、「MMX」「SSE」「SSE2」「SSE3」「SSSE3」と拡張命令セットが追加されてきたが、今回のQX9650で導入されたSSE4では新たに47の命令セットが追加されている。追加されたのは主にベクター演算(複数の計算をまとめて処理する)やメディアデータの処理などをより効率よく実行ための命令セットで、ソフトウェアがこれらの命令セットを利用することで、イメージ処理、動画のエンコード、ゲーム画像の描画処理をいっそう高速にできることが期待されている。
ただし、SSE4を利用するためには、ソフトウェアの側もSSE4に対応している必要がある。すでにインテルはSSE4に対応したコンパイラを出荷しており、ソフトウェア開発者は、コンパイル時にSSE4を利用するオプションを入れるだけで、SSE4に対応したコードを実行ファイルに導入できる。
また、SSE4に対応したソフトウェアもリリースされている。動画のエンコードツールで有名なペガシスは、同社の主力製品である「TMPGenc 4 XPress」の最新版となる“Ver.4.4.0.233”でSSE4に対応した。オプションのCPU設定でSSE4を有効にすると、MPEG-1/同 2のエンコード時にSSE4を利用した処理が行われる。また、動画コーデックで知られる「DivX」もバージョン6.6以降のコーデックでSSE4がサポートされるという。このように、エンドユーザーに身近なソフトウェアでSSE4への対応が進んでいけば、この新しい命令セットに対応した新世代Core 2シリーズのアドバンテージとして評価されるようになるだろう。
今回のレビューから、ベンチマーク環境を一新する。筆者のベンチマーク記事では、利用するベンチマークプログラムを固定している。記事ごとに変えてしまうと、そのとき使ったベンチマークの種類によって有利不利がでてきてしまい、製品の評価がそのときどきで変わってしまう危険がある。このため、定点観測という意味も含めて一度選択したベンチマークはできるだけ長期間(少なくとも1年程度)は使いつづけることにしている。もっとも、ベンチマークにもはやりすたりがあるので、半年に一度は見直しをかけるが、特に必要がなければ基本的には同じものを使い続ける方針だ。
これまでは2005年末に選んだベンチマークをベースに若干の入れ替えをしてきたが、今回から大幅に見直しをかける。その理由は、システムに導入するOSが代替わりしたためだ。すでにWindows Vistaがリリースされて9カ月が経過しており、Windows Vistaに対応したベンチマークもひと通り出そろったので、今回からOSをWindows Vistaに変更し、さらにベンチマークをWindows Vistaに対応したものに入れ替える。
ベンチマーク | その特徴 |
---|---|
SYSmark2007 Preview | 総合ベンチマークの定番SYSmarkの最新版。開発にはインテル、AMDなど業界各社が関わっており、業界標準のベンチマークと言ってよい |
CineBench10 | 3Dレンダリングを行い、その実行時間から処理能力を計測する。シングルスレッドのテストとマルチスレッドのテストがある |
TMPGenc 4 XPress Ver.4.4.0.233 | 定番のエンコードソフトウェア。8MbpsのMPEG2ファイルを、MPEG4 AVC(3Mbps)、WMV(3Mbps)、MPEG2(4Mbps)へエンコードする時間を計測。クアッドコアでの性能を正しく計測するため、パッチエンコードを利用して2つのバッチを同時に実行している |
3DMark06 v1.1.0 | FutureMarkの定番3Dベンチマーク。ゲームのエンジンを利用してその描画性能やCPUの性能などを計測 |
DOOM3 | 定番3Dゲーム。Demo1、UltraQualityで計測 |
Final Fantasy XI Official Benchmark 3 Version 1.0 | 定番3Dゲームのベンチマークプログラム。低解像度(Low)と高解像度(High)がある |
Lost Planet Extreme Condition | DirectX10に対応した3Dゲームのベンチマーク。システムに高い負荷をかけるタイトルとして知られている |
各ベンチマークの詳細などは表の説明を参考にしていただきたいが、いずれのテストもベンチマークとしては定番のシリーズであり、CPUの処理能力を考えていくうえで十分信頼できる値が取得できると考えている。なおハードウェアの構成も、OSをWindows Vistaに変更したこともあって、HDDやグラフィックスカードを変更した。
項目 | スペック |
---|---|
チップセット | CPUに依存 |
マザーボード | CPUに依存 |
メモリ | CPUに依存(容量2Gバイト) |
メモリモジュール | CPUに依存 |
GPU | GeForce 8800 GTX |
グラフィックスメモリ | 768Mバイト |
グラフィックスドライバ | ForceWare v163.69 |
標準解像度 | 1280x1024ドット/32ビットカラー |
HDD | HGST HDT725050VLA |
フォーマット | NTFS |
OS | Windows Vista RTM版 |
テスト環境を短時間で構築するために、HDDは同じ型番のHDDを3台利用している。いずれも同じロットを利用しているため、個体差はほぼないと考えている。グラフィックスカードは、DirectX 10に対応したGeForce 8800 GTXに変更した。これにより、DirectX 10ゲームのテストも行えるので、これから対応ゲームが増えてきた場合には適宜追加していく予定だ。
なお、テスト環境などを変更したため、前回までの記事との結果の互換性はなくなっている。このため、今後の記事などで、以前取り上げたCPUなどに関しても再度テストして結果を掲載していく。
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