NECとNECパーソナルプロダクツは11月4日、ホームネットワークの新ソリューションおよび新ブランド「Lui」(ルイ)を発表した。Luiは「Life with Ubiquitous Integrated solutions」のコンセプトに基づき、家庭内のデジタルコンテンツをサーバPCで一元管理し、ネットワーク接続された別室のPCで視聴したり、外出先からインターネット経由でサーバPCを遠隔利用できる製品群を提供する。
その第1弾製品は2008年前半に発売する予定だ。家庭内のデジタルコンテンツを一元管理するサーバPCの「ホームサーバPC」と、外出先からホームサーバPCを遠隔利用できるシンクライアント端末の「PCリモーター ノートタイプ」ならびに「PCリモーター ポケットタイプ」をラインアップする。また、既存のデスクトップPCにホームサーバPCの遠隔利用機能を追加するPCIカード「PCリモーター サーバボード」も併せて発売する予定だ。
今回の発表はLuiブランドのお披露目と技術説明を行うためのもので、製品発表は後日の予定。価格も未定だが、現状でホームサーバPCとPCリモーター ノートタイプのセットモデルが一般的な個人向けハイエンドPCより少し高価になる見通しだ。販売台数は、ホームサーバPCで2、3年後に15〜20万台との予測で、サーバ1台につきクライアント2、3台を組み合わせて利用することを想定しているとした。
Luiは、同社がCEATEC JAPAN 2007の会場で公開した独自技術を採用することで「コンテンツオンデマンド」と「PCオンデマンド」の2つの機能を提供する。
コンテンツオンデマンドは、デジタル放送の2番組同時録画および家庭内LANに接続したPCやTVへの2番組同時配信を可能にする機能。同社独自のミドルウェアとファイル管理方式の採用によってHDDのアクセスを高速化させたほか、ホームサーバPCからデジタル放送を配信する場合に専用LSIで配信制御を行うことで、録画および配信の性能を向上する「マルチレコードキャストテクノロジ」により実現している。
PCオンデマンドは、ストレージを持たない小型軽量の専用端末から、自宅のホームサーバPCをリモートで操れる機能。ホームサーバPCに搭載されたWindows VistaのGUIをそのまま操作可能だ。NEC独自の圧縮伸長方式と専用チップによってPCの表示画面および音声情報をリアルタイムにキャプチャ/エンコードし、ネットワークを通じてクライアント機器にデータを転送、クライアント側でデコードして表示する「リモートスクリーンテクノロジ」をベースとしている。
PCオンデマンドでは、画面上で動く部分のみを対象とした差分圧縮技術を用いるため、文字をクリアに表示しつつ、動画も効率よく伝送できるという。目安としては、静的なWebサイトやメールを利用するには1〜2Mbps程度の帯域、動画の視聴には10数Mbpsの帯域が必要で、速度重視や品質重視などの設定をクライアントで行えるようになる見込みだ。圧縮時の画面解像度はサーバPCの画面解像度と同じになる。
Windowsのリモートデスクトップと比較した場合、コマンド方式ではなくデスクトップ画面をそのままキャプチャして圧縮することからアプリケーションを問わず、動画や3Dグラフィックスを快適に表示可能なことがメリットという。ただし、PCオンデマンドでデジタル放送やDVD-Video、Blu-ray Disc、HD DVDの映像を伝送することはできない。
遠隔利用における安全性に関しては、PCリモーターとホームサーバPC間のデータ通信を暗号化するVPN接続によりセキュリティを確保。PCリモーターはHDDやSSDといったストレージを内蔵しておらず、ローカルにデータを置かないことから、端末紛失時などに情報が漏洩するトラブルを回避できるという。また、ルータのポート自動開閉や機器認証、クライアントによるリモートパワーオンに対応する。
ホームサーバPCは、HDDレコーダー機能を備えたTVチューナー搭載のデスクトップPC。3波対応のデジタルTVチューナーと地上デジタルTVチューナーを1基ずつ搭載し、コンテンツオンデマンドによる2番組同時録画および2番組同時配信の機能を持つ。録画したTV番組に加えて、写真や音楽も一元管理可能だ。これらのコンテンツはDLNA対応機器に配信でき、録画したデジタル放送はDTCP-IPに対応したTVなどの機器で視聴が行える。また、PCオンデマンドによるクライアントからの遠隔利用もこなす。
ボディの設計は、PC部分とレコーダー部分に分けて管理することで動作の安定性を高める「ハイリライアブルデザイン」を採用する。PC部分のOSはWindows Vistaを採用しており、単体のデスクトップPCとしても利用可能だ。ディスプレイはリビングのTVを使うことを想定している。
レコーダー部分は独自OSとPC部分から独立したHDDを採用し、PCがオフの状態でも録画などの操作が行える単体のHDDレコーダーとして使える。EPGを利用した録画予約や、リモートからの録画予約にも対応する予定だ。録画用HDDはマルチレコードキャストテクノロジにより一定間隔で分散書き込みが行われ、HDDの耐久性を確保する。また、PC部と独立しているため、PCの性能を低下させずに安定して録画や映像配信が行えるという。
PCリモーター ノートタイプは、最薄部約16ミリのB5ファイルサイズボディを採用したシンクライアント。PCオンデマンドによるホームサーバPCの遠隔利用を行うための端末でHDDなどのストレージは内蔵していない。WXGA対応の10.6インチワイド液晶ディスプレイを装備し、IEEE802.11g/b準拠の無線LANと有線LAN、標準的なノートPCと同等のキーボードを備えている。重量は約650グラムだ。
PCリモーター ポケットタイプは、WVGA対応の4.1インチワイド液晶ディスプレイを搭載した小型シンクライアント。こちらもHDDなどのストレージは搭載せず、重量は約250グラムだ。液晶ディスプレイはタッチパネルを採用し、IEEE802.11g/b準拠の無線LAN、スライド式のキーボードを採用している。
PCリモーター サーバボードは、既存のPCにセットしてPCリモーターのサーバとして使うためのPCIカード。NEC独自の圧縮伸長方式を用いた専用チップを実装している。DVIを搭載したデスクトップPCに対応し、CPUはCore 2 Duoクラスが必要になる見込みだ。展示されていたカードには、HDMIと光デジタル音声の入出力が1系統ずつ、有線LANのコネクタが用意されていた。
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