“G92”世代「GeForce 8800 GTS 512M」の微妙な立ち位置を探るイマドキのイタモノ(1/4 ページ)

» 2007年12月12日 00時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 GeForce 8800 GTの衝撃のデビューから、わずか1カ月半で、“G92”コアの新モデルとなる「GeForce 8800 GTS 512M」が登場した。もともと、NVIDIAのラインアップ序列は「GTX」→「GTS」→「GT」とされており、GeForce 8800 GTが登場したときは、“G80”世代のGeForce 8800 GTSが、ベンチマークテストの結果でGeForce 8800 GTに逆転されるなど、ある意味、いわれのない「屈辱」を受けてきた感もあったが、“G92”世代となることで、名実ともに「GT」の上位モデルとなった。

 新旧GeForce 8800 GTS、そしてGeForce 8800 GTXとGeForce 8800 GTの主要スペックを並べると以下のようになる。

GeForce 8800 GTS(G80) GeForce 8800 GTS(G92) GeForce 8800 GT GeForce 8800 GTX
コアクロック 500MHz 650MHz 600MHz 575MHz
メモリクロック 800MHz 970MHz 800MHz 900MHz
メモリバス幅 320ビット 256ビット 256ビット 384ビット
シェーダユニット 96 128 112 128
グラフィックスメモリ 640Mバイト or 320Mバイト 512Mバイト 512Mバイト 768Mバイト
PureVideo 第1世代 第2世代 第2世代 第1世代
プロセスルール 80ナノメートル 65ナノメートル 65ナノメートル 80ナノメートル

 動作クロック、実装するシェーダユニットの数、組み込まれたPureVideoの世代と、パフォーマンスと機能に影響する重要なスペックのほとんどがGeForce 8800 GTに大きく差をつけられていた「旧」(とはいっても登場してから1年ちょっとしか経ってないが)GeForce 8800 GTSと異なり、「新」GeForce 8800 GTS 512MはすべてのスペックにおいてGeForce 8800 GTを上回る。旧GeForce 8800 GTSがベンチマークテストの結果でGeForce 8800 GTにあれほどの差をつけられていたのは、動作クロックと実装するシェーダユニット数のためだとすれば(PCI Express 2.0への対応や第2世代PureVideo HDの搭載など変更点はあるものの、チップ内部の構成そのものはG80世代とG92世代とでそれほど変わっていない)、新GeForce 8800 GTS 512MのパフォーマンスはGeForce 8800 GTを上回るのは間違いないと仮定できる。搭載するシェーダユニットの数はGeForce 8800 GTX、GeForce 8800 Ultraと同等、動作クロックにおいては、コアクロックだけでなくメモリクロックまでもがGeForce 8800 GTXを上回っている。スペック的にGeForce 8800 GTXにかなわないのはメモリバス幅ぐらいだ。

 メモリバス幅だけが優っていた旧GeForce 8800 GTSがそのほかのスペックで上回っていたGeForce 8800 GTにまったく歯が立たなかったのは記憶に新しいところで、その理屈すれば、GeForce 8800 GTS 512MはGeForce 8800 GTXをも上回るパフォーマンスを発揮するのかもしれない、というにわかには信じがたい希望を抱きつつ、気になるパフォーマンスをベンチマークテストで検証する。

 今回測定に用いるGeForce 8800 GTS 512Mには、XFXの「PV-T88G-YDD」(GF 8800 GTS 678M 512MB DDR3 DUAL DVI TV PCI-E XXXX)と、エルザジャパンの「GLADIAC 988GTS 512MB」を用意した。どちらも、デザインは共通で、おそらくリファレンスカードそのままだが、定格動作のGLADIAC 988GTS 512MBに対して、PV-T88G-YDDは、コアクロック675MHz、メモリクロック986MHz(シェーダユニットの動作クロックは1700MHz)とオーバークロック設定がなされている。このレビューでは、定格動作とオーバークロック設定におけるパフォーマンスの違いも検証したい。

相変わらず「ケモノ顔」のXFX「PV-T88G-YDD」(GF 8800 GTS 678M 512MB DDR3 DUAL DVI TV PCI-E XXXX)
こちらは、「長期に渡って製品品質を保証するから定格動作以外は出荷しない」というエルザジャパンの「GLADIAC 988GTS 512MB」

「GLADIAC 988GTS 512MB」を裏から見る。NVIDIA SLIを構築するブリッジコネクタが1つであることが分かる
「PV-T88G-YDD」のクーラーユニットを見る。傾斜したファンの取り付け状況が分かる。外部電源は6ピンが1つ用意されている

 NVIDIA SLIの構築に用いられるブリッジチップコネクタの数は「1つ」で、GeForce 8800 GTX、ならびに同 Ultraがこのコネクタを2つ用意して、近い将来登場するといわれている2枚以上のグラフィックスカードで構成されるマルチGPU構成に対応するのと差別化が図られている。

 ELSAもXFXもクーラーユニットはリファレンスデザインを載せている。このリファレンスのクーラーユニットはユニークな形状をしており、中でも特徴的なのが、傾斜を付けて設置されたファンで、風の流入経路を増やして冷却効果を高めるといった理由のほかに、必要な冷却効率に求められる風量を実現するために口径と羽根の厚さを確保した結果、コンデンサの高さを干渉してしまったため、角度を付けてコンデンサの高さを確保するという事情もあったように思える。

 ファンが動作するときの音は、起動時こそかなり大きいものの、システムに認識された後のアイドル時はかなり静かだ。ただ、ベンチマークテストを行って負荷をかけるとそれなりに音が聞こえてくる。

 比較対象は、同じ“G92”世代のGeForce 8800 GTと、“G80”世代ながら、依然としてハイエンドGPUとして君臨するGeForce 8800 GTXを選んだ。特に、GeForce 8800 GTでは、先日掲載したGeForce 8800 GTのレビュー記事でも紹介したように、オーバークロック設定において測定したベンチマークテストの結果も使い、その違いが僅差であったGeForce 8800 GTとGeForce 8800 GTXに対して、GeForce 8800 GTS 512Mがどのようなポジションを占めることになるのかもチェックしてみたい。

 使うベンチマークテストとテスト環境の条件は、GeForce 8800 GTのレビュー記事で用いた条件にそろえている。解像度は「1600×1200ドット」「1920×1200ドット」「2560×1600ドット」の3パターンを使い、ベンチマークテストは「3DMark06」と市販ゲームの「F.E.A.R.」、「Enemy Territory-QUAKE Wars Demo」、DirectX 10に対応した「World in Conflict Demo」、「Unreal Tornament 3」 (vCTF-Suspense FlyThrough-PCとDM-ShangriLa-FPS-PC)、「Crysis SP demo」(GPU_Benchmark)で測定を行っている。

 ForceWareは、GeForce 8800 GTS 512Mにおいて、製品に添付されている「169.06」を適用したが、GeForce 8800 GTXとGeForce 8800 GTでは、先日のレビュー記事で測定したデータを流用しているため、評価用の「ForceWare 169.01β」を適用した状態となる。

GPU-Z(0.1.3)で表示した「GLADIAC 988GTS 512MB」の情報
GPU-Z(0.1.3)で表示した「PV-T88G-YDD」の情報

ベンチマークシステム環境
CPU Core 2 Extreme QX6700(動作クロック2.66GHz)
マザーボード nForce680i SLI搭載マザー
メモリ DDR2-800MHz/1GB×2ch
HDD ST3160023AS
OS Windows Vista Ultimate 32ビット版

評価用のディスプレイは2560×1600ドット表示可能なデルの30インチワイド液晶ディスプレイ「3007WFP-HC」を使っている
評価作業には8ピンのPCI Express12ボルトコネクタを有するEnarmax(クーラージャイアント)の電源ユニットを使用した

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