第4回 複合機6モデルの画質を解明する複合機07年モデル徹底攻略(1/4 ページ)

» 2007年12月28日 16時30分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

複合機の画質はどれも十分に見えるが……

 5回にわたってお届けしている複合機2007年モデルの比較特集もいよいよ後半戦。第3回は使い勝手に差が出る複合機6モデルの付属ソフトウェアを検証した。第4回はプリンタ/スキャナ/コピー機としての核となる部分、すなわち“画質”の違いに迫っていこう。

 主に家庭向け複合機の“画質”で重視されるのは写真印刷だが、最近の複合機はハイエンドからエントリークラスまで、十分に高画質で印刷できるようになった。実際、今回取り上げたハイエンドやミドルレンジの最新機種ともなれば、一見したときの画質差はほとんど気にならないレベルだ。

 エプソンの「PM-T960」と「PM-A840」、日本ヒューレット・パッカードの「HP Photosmart C8180 All-in-One」と「HP Photosmart C6280 All-in-One」は、ハイエンドとミドルレンジでほぼ同等のプリントエンジンを搭載している。キヤノンの「PIXUS MP970」と「PIXUS MP610」はインクの色数が違っており、MP970は全7色、MP610は全5色だが、大きな画質の違いはない。

本特集で検証する複合機
モデル名 メーカー 液晶モニタ インク構成 スキャナ
ハイエンドクラス
マルチフォトカラリオ PM-T960 エプソン 3.5インチ 染料6色 CCD(フィルム対応)
PIXUS MP970 キヤノン 3.5インチ 染料6色+顔料Bk CCD(フィルム対応)
HP Photosmart C8180 All-in-One 日本HP 3.5インチタッチパネル 染料6色 CCD(フィルム対応)
ミドルレンジクラス
マルチフォトカラリオ PM-A840 エプソン 2.5インチ 染料6色 CIS
PIXUS MP610 キヤノン 2.5インチ 染料4色+顔料Bk CIS
HP Photosmart C6280 All-in-One 日本HP 2.4インチ 染料6色 CIS

 ただし、モデル間の画質差が小さくなったとはいえ、それぞれの画質が同じというわけではない。インクの色域やドライバの色設計、純正用紙の違いなどがあるため、メーカーやモデルによって画質の傾向は異なるのだ。もはやインクの粒状感は皆無に近くなったものの、発色には相応の差が出る場合が多い。スキャンの品質に関しても、イメージセンサやドライバの色設計などの違いがある。各製品の画質がどのような傾向にあるのかを知っておくことは、複合機選びの一助となるだろう。

 今回は複合機6モデルのプリント/コピー/スキャンの品質を横並びで比較するが、その前に1つ見逃せないポイントがある。それは、写真を自動的に補正して印刷する機能だ。第1回でも述べたように、最新の複合機では、特にエプソンとキヤノンが画像の内容(人物や風景など)を考慮した自動補正に力を入れており、製品のウリとして掲げている。しかし、実際にメーカー間でどのような違いがあるのかは知られていない。そこで、まずは各社の自動補正の傾向を明らかにしていく。

 なお、記事中では各複合機の印刷結果を掲載しているが、それらは実際に印刷した紙をスキャナで取り込んだデータだ。データ化した時点で色域が変わるほか(CMYKからRGB)、読者諸氏のディスプレイ環境で見え方が違ってくる。色再現性は不正確なので、あくまで画質の傾向をチェックするための参考として見てほしい。実際の画質は店頭で確認することをおすすめする。


各メーカーが独自の自動補正機能を用意

 写真印刷時の自動補正機能はメーカーごとに独自技術を採用しており、エプソンが「オートフォトファイン!EX」、キヤノンが「写真自動補正」、日本HPが「HP Real Lifeテクノロジー」という名称になっている。エプソンとキヤノンの自動補正機能は、写真の内容から人物の顔認識とシーン分類(人物、風景、夜景など)を自動で行い、適正と思われる補正をする仕組みだ。日本HPの場合、顔認識や細かなシーン分類をしておらず、写真全体のバランスを考慮した自動補正となる。

 ここでは各社のハイエンドモデルを使って、メーカー別に自動補正の傾向を調べてみた。印刷に用いた複合機は、エプソンがPM-T960、キヤノンがMP970、日本HPがC8180といずれもハイエンドクラスの製品だ。印刷した用紙は各メーカー主力の写真用紙で、PM-T960が「写真用紙<光沢>」、MP970が「キヤノン写真用紙・光沢ゴールド」、C8180が「アドバンストフォト用紙」となっている。

左から、PM-T960、MP970、C8180

 印刷アプリケーションは、各複合機に付属する写真印刷ツールを使った。PM-T960は「EPSON Easy Photo Print」、MP970は「Easy-PhotoPrint EX」、C8180は「HP Photosmart Essential 2.0」だ。印刷アプリケーションとプリンタドライバの設定は基本的にデフォルトとなっている。

 EPSON Easy Photo Printの自動補正設定は「オートフォトファイン!EX」にセットし、補正モードはデフォルトの「標準」とした。標準のほか、人物、風景、夜景の補正モードも選べるが、今回はすべて標準で統一している。

 HP Photosmart Essential 2.0は、詳細オプションに「写真の自動修正」という項目があるが、これは使わず、プリンタドライバのHP Real Lifeテクノロジーによる補正をデフォルトの「標準」とした。HP Photosmart Essential 2.0の補正機能を使わなかった理由は、一様に明るさとシャープネスが高くなりすぎてしまうからだ。アンダー気味の写真には非常に効果的なのだが、それ以外では暗部が浮いてしまいマイナスに作用することが多い点は注意してほしい。

 なお、キヤノンの複合機において、今年から導入された自動補正が機能するのは、Easy-PhotoPrint EXと「MP Navigator EX」から印刷した場合、もしくは複合機からダイレクト印刷した場合に限られる点は覚えておく必要がある。

左から、EPSON Easy Photo Print、Easy-PhotoPrint EX、HP Photosmart Essential 2.0

 テスト用に印刷した写真素材は、デジタルカメラで撮影したスナップ、ポートレート、風景、夜景、マクロといった内容だ。あえて露出オーバーやアンダー、逆光といった失敗気味の写真も含めて48枚ずつ計144枚を印刷し、元画像と比較しながら好ましい補正結果が得られたかどうかを判定する。

 判定は3段階評価で、良好な補正だった写真は「◎」、合格点は「○」、もう少しがんばってほしかった写真は「△」とした。審査員は4人で、審査員1が筆者、審査員2がPC USERのプリンタ担当編集者、審査員3がベテランのプロカメラマン、審査員4がプリンタにあまりなじみがない一般の参加者だ。これらは完全な主観評価で、見る人によって評価が大きく変わるため、あくまで参考としてとらえてほしい。

 前置きが少々長くなってしまったが、次のページで自動補正のテスト結果をまとめて紹介しよう。

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