ホームユースのトレンドを作るVAIO山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(1/2 ページ)

» 2008年02月05日 11時00分 公開
[山田祥平,ITmedia]

 徹底したコンシューマー指向を突き進むPCベンダーといえば、やはりソニーを抜かすことはできない。ほかのPCベンダーが、コンシューマー向け製品に軸足を置きながら、その実は企業向けPCが屋台骨を支えているのに対して、ソニーは対照的に感じる。彼らは、これからのコンシューマー向けPCをどのように考えているのか。今回は、VAIO事業本部企画戦略部門企画部担当部長、黒岩健氏に話を聞いた。

いま、“ピンク”のノートがあついっ

──ソニーが徹底したコンシューマー指向であるという(筆者の)理解は正しいのでしょうか。

VAIO事業本部 企画戦略部門 企画部 担当部長の黒岩健氏

黒岩氏 はい、そう考えていただいてかまわないと思います。ソニーはB2Bのビジネスを最近になって始めていますが、その売り上げの構成比はまだまだ低いです。ですから、すべてのラインアップが個人向けだと思ってもらってかまいません。(編注:この黒岩氏のコメントは、VAIOのコンシューマー向け製品における企画と開発の姿勢に言及したものだ。ソニーではB2B事業もVAIO type Gやその周辺サポートを含めて積極的に展開しており、また、ソニースタイルでは、B2B向けモデルを含めたすべての製品が購入できることを、黒岩氏はここで説明している)

 コンシューマーPCには、家使いの据え置きタイプとモバイルという2つのカテゴリーがあります。据え置きタイプのA4ノートPCの市場は、14インチから上なんですが、その中で、一番面白い動きになっているのは、豊富なカラーバリエーションなどで、好みに合わせてパーソナライズができる製品群です。このトレンドを喚起したのはソニーであったと自負しています。VAIO type F light(VGN-FJシリーズ)はトータルで5色ありましたが、それをきっかけにして、個人向け製品の動きが変わってきました。それが、2005年くらいのことです。

 さらに、モバイル向け製品でも、大人っぽいカラーバリエーションに反応する動きが出てきました。ちなみに、今はピンクが最もホットな色ですね。

──ということは、ユーザーの男女構成比にも変化の兆しがあるのですか。

現在の“VAIOカラバリノート”といえば、このVAIO type Cだ

黒岩氏 2007年の秋冬モデルで登場したVAIO type Cでは、カラーバリエーションを増やしましたが、購入者の7〜8割が女性です。PC業界全体でみた場合、通常、女性の構成比は10%で、女性の比率が高いといわれているソニーでも20%でしたから、これは特異な状況です。さらに、今回は、カジュアルな雰囲気のプロモーションを展開したことで、ユーザーの平均年齢がだいぶ下がりました。世代ごとに分けたユーザー数のピークが若い年齢にシフトしたのです。これまでのPC業界がリーチできていなかったところです。

 こうしたことから、PCを各々の個人が使うようになりつつあり、その個人にマッチしたものを選べるようにラインアップをそろえるというのが今後の大きなトレンドになっていくと思われます。米国では、「ママ、母の日おめでとう」といったフレーズを打刻したPCをプレゼントする習慣があるのですが、こうしたカスタマイズによって所有感が増し、そのPCを長く使ってくれるようになっているようです。使っているPCに対する思い入れが強くなり、愛着が増す傾向が出てきた結果、返品も少なくなっているようです。

 日本でもこうしたトレンドを起こそうと、VAIOは2007年秋から、デザイナーなど、新しいクリエイターを開拓するためにVAIOとウォークマンで横展開し、新しいアーティストを起用しました。新しいパーソナライズによってプレミアム感を増加させようという試みです。気に入ってもらったユーザーにプレミアム感を与え、ユーザー以外の人たちにも「ソニーが新しいデザイナーを開拓しているのだ」という認識を持ってもらうことに成功しています。VAIOのユーザーは個性を主張する人が多いのですが、その中にも、普遍的な人とエッジな人との両端が存在します。こうした試みは継続的にやっていきたいと考えています。

PCは通信機を目指せ!

──購入者層のプロファイルに変化の兆しがあるようですね。

米国で人気のmylo。2008 International CESでは画面サイズを大きくした新型が注目を集めた

黒岩氏 そうです。PC購入者層が、これまでとはちょっと違うところに発生してきているような傾向が見られます。若いユーザーたちはもちろん、もうひとつのアプローチとしてITに親和性を持ったシニア層の存在が大きいです。今まで、その世代はデジタルデバイドだったわけですが、これからは、知識が豊富でごく普通にPCを使うユーザーになります。彼らは、デジタルに覆われた生活のなかでビデオや写真に興味があり、静止画の加工やHDビデオの編集などに着目して、もっと面白く、ハイクオリティに編集したいという願望を持っています。キーワードはハイテクとハイクオリティ、そして、“モア”バリエーションというユーザーです。

 もちろん、携帯電話で十分と思っている人も多いです。ただ、面白い調査結果として「あなたの情報ソースは何ですか」という問いかけに対してPCとTVを比較しているデータがあるんですが、答えがきれいに2つに分かれるんですね。TVでニュースを見るのではなく、インターネットでWebを見ることが情報ソースの主役になりつつあるのです。さらに、インターネットのアクセス手段として携帯電話とPCを比較した場合、けっこう若い世代の人たちがPCを使い始めているような兆しもあります。

 携帯電話でもWebを見るのですが(表現力に)限界がありますよね。コンテンツのリッチさや、ドキュメントの内容の濃さなどが(PCと)全然違います。だから、ついPCでインターネット上のニュースを見てしまうようです。多くのユーザーにとって、PCはコミュニケーションの延長からコンテンツビューアーに変わってきているのです。

 日本の市場で特異なのは、インターネットを利用してるのが全人口の7割であって、その4割のユーザーが使っているネットワークインフラが光ファイバーであるという点です。多くの世帯に引き込まれた光ファイバーのおかげでリッチコンテンツでも速く表示できるため、PCが情報家電として気軽に使われるようになってきています。

 Web 2.0とよくいいいますが、いちばん新しい情報をスピーディに更新できるのがPCで利用できるWebページなんですね。TVでいうところのザッピングに相当する行動がPCに置き換わっています。そういうことができるのはPCだけなんです。

 ソニーのmyloは、米国で若い世代に受けています。今の子どもたちは、TVを見ながらPCを使い、さらにmyloでチャットをしているんです。これが、これからのPCの新しい使い方なのだと分析しています。

──その結果、ノートPCのトレンドはどのように変化していくのでしょう。

“PCが通信機にならなければならない”と認識しているソニーは、海外でEDGEモジュールを搭載したVAIO type U(VGN-UX)を投入している

黒岩氏 据え置きタイプのノートPCが光ファイバーでインターネットに接続することで得られたトレンドの変化は、モバイルの世界でも起きようとしています。WiMAXなどがサービスインし、10Mbpsを超えるスピードでインターネット接続がモバイルの世界でも当たり前の環境として実現されれば、単なるWebビューアではなく、リッチなコンテンツを軽快に見られるようになっていきます。

 iPod touchは“こしゃく”なやつですね。でも、iPoad touchが目指す世界は、VAIOが指向している世界でもあります。だから、それをソニーのフレーバーで実現したらどうなるのかを考えたいと思っています。

 VAIOにはVAIO type Tのようなドコモの「定額データプラン HIGH-SPEED」に対応したPCがあります。これは、ワールドワイドのトレンドで、PCが通信機そのものになってきていることを意味します。ソニーとしては、このジャンルをドライブするのが使命だと考えています。どこでもリッチなコンテンツを見られる。しかも、携帯のクオリティではなくPCのクオリティで、です。

 最近は、電車の中でPCを使う人をよく見かけるようになったと思いませんか。湘南新宿ラインのグリーン車に乗ったりするとすごく増えてきていることが実感できます。まだ、ビジネスマンばかりですが、それを普通のユーザーにやってほしいじゃないですか。VAIO type Uは日本モデルでワンセグチューナーを内蔵していますが、米国モデルではAT&TのEDGEを入れています。モバイル向けノートPCは必然的に通信機にならなければならないのです。

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