中国で“デュアルコア”なCeleronを探す山谷剛史の「アジアン・アイティー」

» 2008年02月29日 17時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

中国内陸部に最新PCパーツはあるか?

筆者の向かった中国内陸の地方都市にある電脳ビル。1階にはノートPCが並ぶ

 筆者の中国滞在拠点にあるメインPCは、この連載の第1回で紹介したレノボのSempronマシンだ。もう購入してから3年も経つデスクトップPCだが、テキストエディタとWebブラウザ、メーラーがあればOKという状況だったので、メモリを1Gバイト増設して、OSをWindows Vista Ultimateに変更したくらいで、ほかは「購入当時のまま」の姿だ。

 しかし時代はマルチコアCPU。クアッドコアとはいかないまでも、バリュークラスのCPUまでデュアルコアとくれば、そろそろ中身を替えてみたいところ。思い立ったが吉日で、筆者は使っているタワー型PCを抱えて、滞在先である中国内陸にある某地方都市の電脳街に向かった。この地方都市には、地下鉄も電車もなく、バスが安価に使える唯一の公共交通(全線均一15円)となっている。なので普段はバスに乗るのだが、いつも満員のバスにタワー型PCを持ち込むのは迷惑だ。そこでやむを得ずタクシーを使う。運賃はおよそ300円。バス運賃の20倍である。

 これまでもこの連載で紹介しているように、多数のPC関連ショップが入居しているビルを「電脳街」と呼ぶ中国において、PCパーツショップのフロアは2階、ないしは3階に追いやられている。ちょっと前に建てられた電脳ビルにはエレベーターがないのが普通で、古いものになるとエスカレーターすらない。PCパーツショップがあるフロアに向かうべくタワー型のPC(中国大陸で自作PCとなると、そのほとんどがタワー型となる。キューブ型PCってなに?)を抱えて階段を上がっていくのは苦行以外の何ものでもない。ちなみに、中国の電脳ビルでは、修理の機材持ち込み窓口「電脳医院」が最上階にあるのが普通だ。機材が持ち込まれる前に、ユーザーが階段で力尽きるのを狙っているのだろうか。

バリュークラスCPUが人気の中国PC自作事情

比較的多く置かれていたPentium Dual-Coreには「ネットカフェ向き」と書かれたシールがパッケージに貼られている

 PCパーツショップへ足を踏み入れる前に、2008年初頭における中国PCパーツ事情を確認しておこう。IT関連ポータルサイト「中関村在線」が行ったCPUメーカー人気調査(販売量ではないことに注意)では、インテルが6割弱、AMDが4割強となっている。

 中国におけるPCパーツの価格を、IT関連ポータルサイト「太平洋電脳網」を基に調べてみると、Celeron Dual-Core E1200の最安値は、広東省広州の388元(約5820円。ちなみに、日本では約6600円)、北京や上海では450元(約6750円)で販売されている。中国では上海のみで販売されているCore 2 Duo E8400の価格は1690元(約2万5350円。ちなみに日本では約2万6000円強)であった。一方、AMDのCPUでは、Athlon 64 X2 5000+ Black Editionが北京で690元(約1万350円)、上海で715元(約1万725円)だった(日本では約1万1000円ちょっと)。数百円の違いはあれど、中国におけるCPU実売価格は日本と同程度と考えていいだろう。

 中国で人気のあるCPUは、SempronやCeleronといったバリュークラスで、Core 2シリーズやPhenomは日本ほどに支持されていない。中国のPC市場をリードしているのは若者層だが、都市部に住む彼らの平均的な月給は2〜3万円といったところだ。Core 2 Duo E8400を1つ買うだけで月収が吹っ飛ぶ。中国におけるCore 2 Duo E8400の価格価値観は、日本人のCore 2 Extremeどころではないのだ。

Celeron Dual-Coreなんて「メイヨ〜」

電脳ビルの上層階にあったPCパーツフロア

 筆者が、内部構成のアップデートをしてもらおうと持ち込んだPCの中身は、先に述べたように3年前のSempronだ。さすがにCPUだけとはいかず、マザーボードやメモリなどほとんどの主要パーツを新調せざるを得ない。文章入力マシンでもあるし予算を抑えたいところでもあるしということで、筆者はCeleron Dual-Core E1200を基幹にした構成をショップにお願いしようと考えた。

 中国のPCパーツショップは、見た目も中身も対応も、日本とだいぶ異なる。電脳ビルに入居しているPCパーツショップの店構えは、ガラスのショーケースが店の四方を囲んで壁を構成しているにもかかわらず、店頭には、CPUやメモリ、HDDなどの主役となるPCパーツがほとんど見当たらない。あるのはノーブランドのUSBメモリやらマウスやらの微妙に怪しいサプライ品ばかりなのだ。日本のPCパーツショップに必ずといっていいほどある価格表すらそこにはない。すべては口頭で質問することになる。

 「Celeron Dual-Core E1200ありますか?」

 「Celeron Dual-Core E1200ね。PC本体を買いたいのかい?」

 「いま持ってきているPCのパーツを一部替えたいのです」(説明しよう。中国の電脳街では、PCパーツレベルでアップグレードをするユーザーは少なく、その多くがPCを1台丸ごと購入するのだ。給料数カ月分の高い買い物ゆえに、いったん買うとなったら気迫が違う)

 「それでは、そこに座って待っていてください」

ショップ店員と“円卓”を囲む

 ここからが、中国PCパーツショップ名物「円卓商談」のスタートだ。店員はお茶(というより茶葉を入れたお湯)で客をもてなしつつ、店の奥でなにやらファイルをペラペラとめくっている。仲介業者の所持するCPUリストを調べているのだろうか。ひとしきり探してから、店員は戻ってきた。

 「そんな型番ないよ。どこに売ってるって書いてあったの?」

 「PC関連のWebニュースで、もう中国に入荷しているって書いてありましたよ」

 「ははは、ここ田舎だからねえ。入荷するのは3年後くらいかもね」(説明しよう。もちろんこれは冗談なので、真に受けてはならない)

 「代わりにAthlonどうだい?」(さらに説明しよう。中国ではAMDがインテルに迫る人気となっている。だからこそ、こういったセリフが出てくるのだろう)

 この店員は、自分が住んでいる街を「田舎」と卑下するが、ビルが建ち並ぶそれなりに大きな都市だ。それなのに、ほかのPCパーツショップで聞いても「メイヨ〜」となる。中国地方都市のPCパーツショップまでCeleron Dual-Coreが流れてこなかった一方で、AMDプラットフォームでPCを組んでいるPCパーツショップは多数ある。特にAthlon 64 X2 5000+ Black Editionをアピールしているショップが目立っていた。

 ということで、筆者はCeleron Dual-CoreからAthlon 64 X2 5000+ Black Editionへと大きく方向転換するのであった。(つづく)

自作PCショップ。これでも店頭のパーツ展示が充実しているほうだ。中国の電脳街名物“堂々と食事をする店員”が使っているのは、これもPCショップの必須アイテム「円卓」だ
買いたいCPUを告げると、店員は店の奥でファイルをパラパラとめくった

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