AMDは3月4日に熱設計消費電力(いわゆるTDP)が45ワットに設定されたAthlon X2 4850eを発表した。開発コード名「Brisbane」(ブリスベーン)で知られるAMDの65ナノメートルプロセスルールを採用したデュアルコアCPUで、同日に発表された統合型チップセット「AMD 780G」と組み合わせることで非常に低消費電力のシステムが構築できる。
Athlon X2 4850eは、すでに発表されているAthlon X2 BE-2300、同 BE-2350、同 BE-2400の上位モデルとなるものだ。Athlon X2 BEシリーズで採用されているコアも「Brisbane」で、対応するプラットフォームはともにAM2となる。Athlon X2 4850eも基本的には「BE-2xxx」の延長線上にあるシリーズで、大きな違いは、BE-2400が2.3GHz、BE-2350が2.1GHz、BE-2300が1.9GHzで駆動されていたのに対して、4850eの動作クロックは2.5GHzになることだ。
それなら、なぜ4850eは「BE-2600」といったBE-XXXXというモデルナンバーではないのか。AMDは、「クライアントに聞き取りを行ったところ、性能差やデザインの違いが分かるようなモデルナンバーに変更したほうがよいと考えた」と説明している。
また、上位モデルとなるPhenomが4桁の数字で示すようになっているので、Athlon X2もそれに併せて変更を行ったということも考えられるだろう。今回のモデルナンバールールの変更によって、
モデルナンバー | CPUコア |
---|---|
9000番台 | Phenomの4コア |
8000番台 | Phenomの3コア |
7000番台 | Athlon 64 FX |
6000番台 | Athlon 64 X2の高速版 |
5000番台 | Athlon 64 X2のメインストリーム |
4000番台 | 低消費電力向けと廉価版 |
という区分けになり、数字的には確かに分かりやすくなる。もっとも、2007年に導入したばかりのモデルナンバールールをすぐ変えることになると流通関係では若干の混乱があると思われるため、あまり短い期間での変更は望ましいことではない。
なお、AMDに近い情報源によれば、今後Athlon X2 BE-2400、同 BE-2350、同 BE-2300の3モデルは、製品としての出荷を2008年第1四半期で終了し、続く第2四半期にAthlon X2 BE-2400はAthlon X2 4450eへ、同 BE-2350はAthlon X2 4050eへと名前を変えて登場することになるという。動作クロック2.4GHzと2.1GHzのラインアップは継続されるので、導入を考えているユーザーはあわてる必要がないことを付け加えておく。
ベンチマークテストの結果から、Athlon X2 4850eのパフォーマンスと“特性”を検証していきたい。評価に用いたシステムは“イマイタ”レビューで通常利用している構成で、ベンチマークプログラムなども2007年の10月から継続して同じものを利用している。ここ半年間におこなってきたレビュー記事のデータと互換性があるので、興味のあるユーザーは参照してほしい。
CPU | Phenom 9600(ES版) | Athlon 64 X2 | Athlon X2 | Core2 Duo/Core2 Extreme |
---|---|---|---|---|
チップセット | AMD790FX | nForce 590 SLI | AMD 780G | Intel X38 |
マザーボード | MSI K9A2 Platinum | FOXCONN C51XEM2AA | GIGABYTE GA-MA78GM-S2H | ASUS P5E3 |
メモリ | DDR2-800 | DDR2-800 | DDR2-800 | DDR3-1333 |
メモリモジュール | PC2-6400(5-5-5) | PC2-6400(5-5-5) | PC2-6400(5-5-5) | PC3-10666(7-7-7) |
容量 | 2Gバイト | |||
GPU | GeForce 8800 GTX | |||
グラフィックスメモリ | 768Mバイト | |||
グラフィックスドライバ | ForceWare v163.69 | |||
標準解像度 | 1280×1024ドット/32ビットカラー | |||
HDD | HGST HDT725050VLA | |||
フォーマット | NTFS | |||
OS | Windows Vista RTM版 | |||
動作クロックが2.5GHzのAthlon X2 4850eは、動作クロック2.6GHzのAthlon 64 X2 5200+の結果をわずかに下回る値を示している。基本的なアーキテクチャなどはAthlon 64 X2と共通であることを考えれば、予想通りといえる。ただ、Athlon 64 X2 5200+のTDPが89ワットだったことを考えれば、このベンチマークテストの結果が示すインパクトは決して小さくない。
なお、気になる消費電力だが、AMD 780GにAthlon X2 4850eを組み込んだシステムで測定したデータをAMD 780Gのレビュー記事で紹介しているため、詳細はそちらに譲るが、Athlon X2 4850eとAMD 780Gの組み合わせでアイドル時におけるシステム全体の消費電力はわずか55ワット、ピーク時でも95ワットしかかかっていなかった。これまで、Direct3D 10に対応したGPUは単体タイプしかなかったため、システム全体でチップの数が1つ増えてしまい、アイドル時でも100ワット近い消費電力になっていることが少なくないことを考えると、AMD 780 GとAthlon X2 4850eを組み合わせたシステム全体の消費電力が最大でも100ワットを下回っているのは高く評価できる。
これまでの考察で示したように、動作クロックが同程度のAthlon 64 X2に近い性能を発揮しながら、消費電力がほぼ半分に削減している点、しかも、価格が89ドルを予定していることなどから(ここ最近のドルに対する円高基調を考えると1万円程度で入手できる計算になる)、省電力/省スペース/高性能を求める自作ユーザーだけでなく、性能と省電力、そして価格競争力に優れたコンパクトPCを開発したいPCベンダーにも、Athlon X2 4850eは受け入れてもらえるCPUである。
例えば、microATXやMini ITXのような省スペースなマザーボードとAthlon X2 4850eを組み合わせると、省スペースでも強力なPCを自作できる。今のところAMD 780Gを搭載したマザーは、microATXフォームファクターがほとんどだが、今後Mini ITXなどのより小型のマザーボードが登場すれば、Athlon X2 4850eと組み合わせた超小型ハイパフォーマンスPCの自作が、次のトレンドとなる可能性を秘めているのではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.