2008年は、いよいよ45ナノメートルプロセスルールのCPUが一般のユーザーにも身近になる。確かに、45ナノプロセスによる第一弾のCPUは2007年11月に発表されたが、サーバ向けとハイエンドデスクトップPC向けだけで、とても一般向けとは言い難かった。現状では45ナノプロセスによるデスクトップPC向けCPUはデュアルコアのWolfdale(Core 2 Duo E8200、E8400、E8500)のみで、しかも極端な品不足だが、年内に稼働する製造拠点(Fab11X、Fab28)の拡大とともに、潤沢に供給されるようになるだろう。3月下旬にはクアッドコア製品の投入も予定されている。
インテルはこの45ナノプロセスの世代において、大きなプラットフォームの変更を行う。それはチップセットに搭載されていたメモリコントローラを、CPU側に移すこと。今年後半に予定されているNehalem世代のCPU(45ナノプロセスの2世代目)で行われる。インテルのCPUにメモリコントローラが統合されるのは、1980年代の386SL、486SL以来のことだ。しかし、その前にもプラットフォームの更新が予定されている。
最近のインテルは、主要なプラットフォームの更新を第2四半期に行うことが多い。それは、世界のPC供給工場である台湾で、大規模なトレードショー(COMPUTEX TAIPEI)が開かれるタイミングであるからだ。おそらく今年(開催期間は6月3日〜7日)もその前後に新しいプラットフォームの発表(あるいは実質的な情報公開)が行われるだろう。
デスクトップPCの次世代プラットフォームは、ビジネス向けがMcCreary、コンシューマー向けがBoulder Creek(いずれも開発コード名)と呼ばれる。しかし、両者の中身がそれほど大きく違うわけではない。いずれも同じコアによる40番台の型番を持つチップセット(開発コード名:Eaglelake)を採用する。このIntel 4シリーズチップセットは、グラフィックス機能を持たないP45、内蔵グラフィックスを持つG45/G43、ビジネス向けに管理機能を強化したQ45/Q43といったラインアップだ(サウスブリッジはICH10シリーズ)。
Eaglelakeチップセットの特徴、あるいは現行30番台のチップセット(同Bearlake)との差は非常に説明しづらい。3Dグラフィックス性能やビデオ出力オプション(HD動画再生支援機能を含む)が強化されているものの、対応するFSB(基本的には1333MHzまで)やメモリ(DDR2およびDDR3)など、基本的な部分に大きな違いがなく、新たに導入されるI/O規格も特に見あたらないからだ。
確かにEaglelakeチップセットでは、Bearlakeにおいてハイエンド(X38およびX48)のみでサポートされていたPCI Express 2.0がメインストリームでもサポートされる。が、X38でサポートされていたことから推定されるように、Bearlakeにおいてはチップとしてはサポート可能であったものの、メインストリーム向けには無効にされていたもの、と考えられる。チップ自体の新機能というわけではなさそうだ。
グラフィックス機能に関しては、コアクロックの引き上げや、プロセッシングユニットの拡張などは行われるだろうが、アーキテクチャとして新しくなったわけではない。ましてや現在インテルの内蔵グラフィックスについては、ハードウェアの機能や能力を問う前に、スペック通りの能力を発揮できていないWindows Vista対応ドライバ(Direct3D 10のサポートなど)の整備が求められている。この問題にEaglelakeのタイミングで大幅な進歩が見られるのか、むしろこちらの方が注目されるところだ。
だが見方を変えると、Bearlakeと大差ないことがEaglelakeの最大の特徴と言えるかもしれない。後述するモバイル向けのプラットフォームでは、30番台のチップセットをスキップして40番台のチップセットが採用される。40番台のチップセットに目新しい機能が多ければ、検証にも時間がかかるから、30番台をとばして40番台へ、というわけにはいかなかったかもしれない。40番台チップセットの仕様を眺めていると、大幅な変更となるNehalem世代のプラットフォームを前に、あえて手堅くまとめてみた、という雰囲気を感じる。
おそらくEaglelakeの「新しさ」は、チップセットとしての機能にあるのではない。Eaglelakeの特徴は、製造プロセスがこれまでの90ナノメートルから、65ナノメートルプロセスへ縮小することだ(間もなく発表されるハイエンドデスクトップPC向けのX48だけは90ナノメートルプロセスのBearlakeファミリー)。これによりプラットフォームとしての消費電力が削減される。機能的な差異の少なさにもかかわらず、モバイル向けのプラットフォームが30番台をスキップして40番台へ行く理由の1つはこれだと思われる。
そのモバイルプラットフォームだが、これまでMontevinaの開発コード名で知られてきたもの。正式にCentrino2というブランドを用いることが明らかにされている。これまでかたくなにCentrinoブランドを続けてきたインテルが、なぜこのタイミングで「2」を名乗ることにしたのかは分からない。
その中核となるのは、開発コード名でCantigaと呼ばれてきたチップセットだ。デスクトップPC向けと同じ40番台のノースブリッジチップだが、問題の起きやすいサウスブリッジチップには、デスクトップPC向けで実績のあるICH9Mを用いて慎重を期している。ラインアップは内蔵グラフィックスを持たないPM45、内蔵グラフィックスを備えたメインストリーム向けのGM45、小型パッケージを採用したGS45、バリューセグメント向けのGL45といったところだが、新しくハイエンド向けチップセットとしてGM47が加わる。GM47は、GM45のグラフィックスコアのクロックを引き上げたものだろう。
デスクトップPCと異なり、30番台をスキップしたため、40番台のチップセットが持つDDR3メモリのサポートや、PCI Express 2.0のサポートはモバイルPCとしては初ということになる。とはいえ、DDR2とDDR3メモリにおける現状の価格差、モバイルPC向けのグラフィックスがバスボトルネックになっているとは考えにくいことからして、現行のSanta Rosaプラットフォームに対してどれくらい差別化のポイントになるかは微妙なところだ。
注目されるのは、MontevinaでWiMAXとWiFiを1枚のPCI Express Mini CardにおさめたEcho Peakが提供されることだが、現時点でWiMAXがサービスインしている国はほとんどない。わが国でのサービス開始も2009年以降を予定しており、当初はサービス提供地域も限られるものと思われる。PCの新機能として大々的に宣伝するのはちょっと難しそうだ。
Montevinaプラットフォームに組み合わせるCPUは、モバイル向けのPenryn-6M(6Mバイトの2次キャッシュ)およびPenryn-3M(3Mバイトの2次キャッシュ)だが、新しくTDP 25ワット級のCPUとして、プロセッサナンバーの頭にPがついたモデルが追加される。これで上から順にX(TDP45ワット級)、T(同35ワット級)、P(同25ワット級)、L(同15ワット級)、U(同10ワット級)と並ぶことになる。P以下のモデルについてはパッケージを縮小したモデルも加わる見込みで、プロセッサナンバーの先頭にSがつく(SP、SL、SU)から、かなりややこしい。従来はFSBクロックの上限は800MHzだったが、Montevinaプラットフォームでは1066MHzまで引き上げられるだろう。また、今年の後半にはモバイルPC向けにも、ついにクアッドコアCPUが投入される。ハイエンドの大型AVノートPCへの採用が期待されるところだ。
これら40番台チップセットによるプラットフォームの後、いよいよNehalem世代が今年後半からスタートする。Penryn世代と同様、当初リリースされるのはサーバ向けとハイエンドデスクトップPC向けで、メインストリームPC向けは2009年になるだろう。
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