NVIDIA コンテンツリレーション事業本部/アジア太平洋部長の飯田慶太氏は、GPUのパフォーマンスが、3Dゲームだけでなく、Googleの画像検索やAdobe Acrobat Readerなどでも利用できる現状を、実際のアプリケーションを使ったパフォーマンスの違いを示しながら紹介し、「GPUを活用することで、PCはユーザーにより高い満足度を提供できるようになる」と主張する。
飯田氏は、PCメーカーがこれまで、「バリュークラス」「ミドルレンジ」「ハイエンド」というグレードに分けてラインアップをそろえていたが、今では、ユーザーのニーズに合わせたセグメントが求められていると述べた上で、従来からあるグレードによるラインアップと、ユーザーにニーズに合わせたラインアップとで求められるPCの違いについて、飯田氏は、車と携帯電話に例えて説明した。
それによると、車を購入するときの選択基準において、昔は標準的でスタンダードな車種(飯田氏いわく、例えていうならばカローラのような)を選んでいたが、今では、スポーティータイプやバン、ピックアップ、小型車から、自分の使いたい目的に合わせた車種を選び、携帯電話においては、(米国における事情であるが)、形も色もサイズも着信音も同じ機種をみんなが持っていたが、今では、リッチコンテンツを利用するならiPhone、メール端末として使うならBlackBerryタイプと、ユーザーが重視する利用目的に合わせた製品を選んでいるという。
飯田氏は、車のメーカーや携帯電話のメーカーは、ユーザーのニーズを理解し、柔軟に対応して製品を開発していると述べ、PCでも同じように、ユーザーの目的に合わせて多様なモデルを用意すべきだと主張する。ビジュアルコンピューティングというカテゴリーのなかでも、クリエイター向けなのか、コンテンツプレーヤー向けなのか、そしてゲーム向けなのかで細かくセグメントを分ける必要があると語った。
続いて飯田氏は、CPUとGPUがパフォーマンスにどのように影響しているかを、それぞれの特徴を紹介しながら比較した。CPUはキャッシュに収まる命令コードやデータセットを扱う分には即座に演算を実行できるが、キャッシュに収まらない大きなデータセットが入力された場合、巨大な並列処理が可能であるGPUがパフォーマンスに大きく貢献すると説明し、CPUとGPUとでそれぞれが得意とする処理を担当する「異種計算能力」(ヘテロジニアスコンピューティングという言葉で知られている)の必要性を語った。飯田氏は異種計算能力を活用するためには、ソフトウェア開発において、NVIDIAが公開している開発環境「CUDA」によって、CPUとGPUそれぞれに適した処理が分担できるように最適化されることが必要であることも紹介している。
飯田氏は、システム構成のアップグレードにおけるコストとパフォーマンス向上の関係について説明した。そこでは、3Dゲームなど、GPUがパフォーマンスに貢献する利用において、CPUをアップグレードしても、ベンチマークテストの結果はほぼ横ばいであるのに対して、GPUをアップグレードすると一気にパフォーマンスが向上することをNVIDIAが行った測定結果で示すとともに、これまで、GPUのパワーを利用するアプリケーションが登場していなかった動画変換処理においても、Elemental Technologiesが開発中のRapiHD GPUアクセラレートデモソフトを用いて、CPUの3倍速いトランスレート処理のデモを行った。
また、CPUとGPUによるPC構成の最適化の実例として米国大手量販店のBestBuyとGatewayが協力して開発したノートPCを紹介。ゲームやHDコンテンツの再生を重視した低価格モデルを実現するため、CPUのグレードを抑えた代わりに、GPUはハイエンドラインアップで採用するGeForce 8Mシリーズを搭載。17インチワイド液晶ディスプレイを搭載しながらも1249.99ドルを実現したケーススタディが紹介された。
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