ゲイツ氏、新しい検索技術で米Googleを追撃MS会長職はパートタイム

» 2008年05月08日 16時00分 公開
[酒井真弓,ITmedia]
米Microsoft会長のビル・ゲイツ氏

 5月7日、米Microsoftのビル・ゲイツ会長が都内で記者会見を開き、日本市場における同社の事業戦略などを語った。2008年7月に第一線から身を引くとしているゲイツ氏だが、いまだに注目度は非常に高い。今回は30分にも満たない短い会見だったが、会場は報道関係者で埋め尽くされ、大勢のカメラマンが、登壇したゲイツ氏に少しでも近づこうと前方に押し寄せる。質疑応答中は、司会者から「カメラのフラッシュの頻度を下げてください」と注意が飛ぶほどだった。

 ゲイツ氏はまず、30年前に初めて来日したときの状況を振り返り、Microsoft Officeを統合したマーケットが日本だったことなどについて触れ、「我々は日本からいろいろなことを学習したんだ」と日本市場に対する思いを述べた。続いて、日本において同社が現在取り組んでいる共同開発や施策を紹介。具体的には、国内パートナー各社と連携し、Windows VistaのWindows Media Center機能で地上デジタル放送をサポートすることと、学生の開発者向けにVisual Studioなどのソフトウェアを無償で提供するプログラム(Dream Spark)の開始を挙げている。ゲイツ氏は「昔は私も若い開発者だった。多くの新しいアイデアは若い人から生まれる」とコメントし、若い開発者を育てる取り組みに力を入れていく方針を明らかにした。

 一方、短い会見の大半は質疑応答にあてられた。報道陣からまっさきに飛んだのは、米Yahoo!に対する買収提案についてだ。すでに同社のスティーブ・バルマーCEOの声明にある通り、公式に買収撤退が伝えられているが、ゲイツ氏は改めて「Yahoo!と対話をするための努力をしてきたが、両社は独自の方向性をたどるべきという結論に達した」と述べ、明言は避けたものの、再びYahoo!の買収を検討する可能性については否定する見解を示した。

 一方、Yahoo!買収の発端にもなった米Googleの追撃に関しては進展がありそうだ。同氏は「Googleは多くの国の検索市場で大きなシェアを持っている」と述べ、インターネット検索分野で大きく差をつけられていることを認めつつも、来月シアトルで新しい検索プロダクトのバージョンを披露する予定だとコメント。その詳細は明らかにしなかったが「Microsoftはソフトウェア技術で競争をしていきたいと思う。広告主の選択肢を増やしていく」と語り、自信を感じさせる笑顔を浮かべた。

 このほか、Windows Vista発売後も日本のPC市場の成長率が横ばいに推移している点については、その要因に日本では若い層のPC使用率が低いと指摘し、市場拡大のためには教育現場や図書館などのオンライン化の重要性を訴える一方で、「Windows 7」と呼ばれる次期OSについては「過去のWindowsのバージョンと同じとは限らない」とし、リリース時期は明言しなかった。

報道陣の質問に答えていくゲイツ氏


 カメラマンに取り囲まれ、プレスからの質問に次々と答えていくゲイツ氏を見ていると、2008年7月に経営の第一線から退き、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の活動に注力するという言葉がにわかには信じがたいが、これに関して同氏は、「7月1日は私のキャリアが変化する日、17歳のときからこれまでフルタイムでMicrosoftの仕事をしてきたが、7月1日からはフルタイムで財団の活動をし、パートタイムで会長職をこなす」と説明し、「Microsoftといえばビル・ゲイツが思い浮かぶのが今の現状。私がしてきたことは(Microsoftの仕事の)ほんの一部分にすぎないが、私ばかりが注目されすぎている。レイ・オジーはじめ、ほかの優秀な社員たちにもっと目立ってほしい」と心情を語った。

ストロボでまぶしそうな壇上(写真=左)。米国で3番目にお金持ちなMicrosoft会長のはいていた靴(写真=中央)。会場を去るゲイツ氏(写真=右)

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