「ARMで問題なし」──NVIDIA、小型デバイス向けプロセッサ 「Tegra」発表COMPUTEX TAIPEI 2008

» 2008年06月03日 00時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
Tegraのアーキテクチャでは、ARM 11、GPU、HDビデオプロセッサ、イメージプロセッサといったコアとHDMI、DDR、NAND Flashなどのサブシステムが1つのチップに実装される

 今回発表されたTegraファミリーは「Tegra 650」、「Tegra 600」、「Tegra APX 2500」の3モデルで、いずれも1つのチップにプロセッサ、メモリ、イメージング、サウンド、3Dアクセラレーションも可能なGPU(1部のモデルを除く)を統合しているのが特徴だ。また、プロセッサには、先日発表されたインテルの小型デバイス向けCPUの「Atom」シリーズではなく、従来からある「ARM」ファミリーを採用しているのも注目される。

 最上位モデルとなるTegra 650は、800MHzで駆動するARM11を実装する。グラフィックスの機能では、1080pのH.264デコードと720pのH.264エンコードに対応するほか、AAC、AMR、WMA、MP3の音声ファイルを扱う。3Dグラフィックスでは、プログラマブルなPixel ShaderとVertex Shaderをサポートするなど、強力なパフォーマンスを発揮することになっている一方で、省電力設計も最適化が進められており、連続130時間のサウンド再生、もしくは、連続30時間のHDビデオの再生が可能とNVIDIAは説明している。

 なお、Tegra APX 2500は、2008年2月にすでに発表されている「APX 2500」で、携帯電話への搭載が想定されているのに対して、Tegra 650とその下位モデルになるTegra 600は、小型デバイスへの搭載を考えてデザインされている。

Tegra 650 Tegra 600 Tegra APX 2500
Processor ARM MPCore/800MHz ARM MPCore/700MHz ARM MPCore
AudioVideo Processor 1080p H.264 decode 720p H.264/VC-1/WMV9 decode 720p H.264/VC-1/WMV9 decode
720p H.264 Encode 720p H.264 Encode 720p H.264 Encode
Ultra Low Power GeForce Programmable Pixel Shader Programmable Pixel Shader Programmable Pixel Shader
Programmable Vertex Shader Programmable Vertex Shader Programmable Vertex Shader
3D/2D Graphics 3D/2D Graphics 2D Graphics、Direct3D Mobile
nPower Technology 連続音声再生130時間 連続音声再生100時間 連続音声再生100時間(携帯電話)
連続HD動画再生30時間 連続HD動画再生10時間 連続HD動画再生10時間(携帯電話)

NVIDIAが説明会で示したCentrino AtomプラットフォームとTegraの比較。消費電力もCentrino Atomで10ワットに達するのがTegraでは1ワットに収まるとしている
動画の連続再生やWebブラウジングにおけるバッテリー駆動時間の比較において、TegraはAtomを圧倒的に上回る(しかも、Tegraが720pの動画を再生した場合のデータであるのに対してCentrino AtomはSD動画再生時のデータ)こともNVIDIAはアピールする

 インテルがCentrino Atomを紹介するときに、ARMに比べて消費電力は確かに多くなるが、ソフトウェアの挙動などでx86対応システムとの互換性が高く、ARMを搭載したデバイスで表示されないWebページもCentrino Atomなら問題ないというメリットを実際に調査したデータとともにアピールしていた。

 この“反論”としてNVIDIAが説明会で示したのは、ARMを搭載するNokia N810とx86のCPUを搭載するPCのそれぞれで、Flash 9をサポートしないWebブラウザを導入した場合とFlash 9をサポートするOperaを導入した場合とにおけるWebページの表示テストを行った調査の結果だった。

 Flash 9をサポートしないWebブラウザでは、N810でもPCでも同程度のエラーが出現した一方で、Flash 9をサポートするWebブラウザを導入したテストでは、表示できないWebページが“どちらも”なかったと報告されている。Webブラウザの機能を同じくすれば、インテルがいうように「ARMは互換性において不利」ということはないというのが、NVIDIAの言わんとするところだ。

NVIDIAが調査した、Flash 9をサポートするOperaを導入したARMデバイス(N810)でWebページを表示させた結果。“主な57サイト”において、インテルがAtomの説明で述べたような「エラーが発生して表示できない」WebページはなかったNVIDIAは主張する
互換性に不安のないARMは強い。Webページの表示速度もバッテリー駆動時間も消費電力もAtomを上回る。グラフィックスに強いNVIDIAのGPUと組み合わせれば無敵だっ……というNVIDIAの説明

説明会の会場では、Tegra APX 2500のデモサンプルが動作しており、アニメーションを駆使したカラフルなインタフェースを見ることができた
こちらは、Eee PCの上におかれたTegraを載せたシステムボードのサンプル。キートップとの比較でその大きさが分かるだろう

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