「世界を大きく変える」と予測してはや29年──シーゲイトの歴史を振り返る (2/2 ページ)

» 2008年06月09日 17時00分 公開
[小林哲雄,ITmedia]
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記憶密度との戦いだったシーゲイトHDD開発の歴史

1987年には線密度を内周と外周でほぼ均一にすることで容量を増すZBR(Zone Bit Recording)を採用した。それまでのHDDはフロッピーディスクのように内側から外側まで同じセクタ数だった
HDDに関する技術進化では、1995年にあった「熱揺らぎ問題」が紹介された。HDDの容量はこれ以上上げられないと議論されたが、その当時は限界が40Gバイト/平方インチであるといわれていた
この問題を解決するために登場したのが、巻き線コイルのヘッドを薄膜ヘッド化することだった

1995年から1998年にかけて、信号の微弱化に対処するために従来のPD(Peak Detect)からPRML(Partial Response Maximum Likelihood)という信号処理方式に変更している。PRMLは探査衛星が発する微弱な送信電波に対応するための技術だった
1994年ごろから、ヘッドの位置決めを行うサーボ信号を専用の面に書き込む“Servo面サーボ”から記録面の入れ込む“Data面サーボに移行した。DSP技術で可能となったこの技術のおかげで、サーボのデジタル化とコントロールロジックの簡略化が実現している

1996年ごろから、HDDの回転モーター軸受けがボールベアリングからFDB(流体軸受けモーター)に移行していく。長らく使われたボールベアリングも信頼性が高かったが、経年劣化と点接触による対衝撃性の悪さ、そして微小な偏芯が問題になったほか。FDBでHDDの回転音が静かになるというメリットもユーザーから支持された
1999年ごろのモデルに搭載されていたドライブヘッドの拡大画像。ヘッドそのものは数ミリあるが、記録に必要なのは1500倍に拡大した中央の突起部分だけだ。他の部分は滑らかに記録面から浮き上がるための「そり」の役目を持つ
読み取りヘッドは薄膜ヘッドから磁気抵抗効果を使用したMRヘッドに移行、そして、現在はGMRからTMRヘッドへとさらに進化している

ヘッド構造も進化し、2000年にはピエゾ素子で行っていたヘッドコントロールでは、2002年にヒーターで浮上量をコントロールする「AFH技術」が確立された。
これは現在の主流となる垂直磁気記録(右)とそれまで採用されてきたの長手磁気記録(左)の模式図。垂直磁気記録によって大容量化が得られた
そして、現在開発が進んでいる「熱アシスト磁気記録」の模式図だ。磁化されにくい「硬い」物体をレーザーで磁化されやすくして記録し、冷めるとまた硬くなるという。この技術で5Tバイト/平方インチの記憶密度が研究室レベルで実現しているそうだ

先の模式図ではヘッドの上に穴が開いているが、実際にはヘッド部にレーザーを導く「ミクロの導光板」を付けるという
こちらはHDDで使われる記憶技術の開発ロードマップ。現在の垂直磁気記録の次に熱アシスト磁気記録、そして熱アシストに磁性体の改良(SOMA)を施すなど、「3世代先」までのメドは立っている

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