SDKの概要と、利用事例の紹介が終わったところで、フォースタル氏は、現在のSDKには、ユーザーに「通知」をする機能がなく、インスタントメッセンジャーなどを開発している開発者から要望が挙がっていることを明かした。同社は9月頃までにこの機能を提供するという(つまり、iPhoneのソフトウェアは9月にアップデートを受けるということだ)。
ここで課題となっているのは、開発者はユーザーがそのアプリケーションを使用していないあいだも「通知」をしたいと考えていること。例えば、ゲームなどをプレイしているときでも、チャットの未読メッセージやオークションの進展を通知したい、ということだ。
フォースタル氏は、まずほかのモバイル端末が採用する間違った解決法をいくつか紹介した。その1つは、バックグラウンドプロセス。つまり、常駐型のプログラムだ。しかし、これはバッテリーを消費し、デバイスのパフォーマンスも落としてしまう。これは得策とはいえず、操作体験の質も落ちる。
フォースタル氏は「あるプラットフォームは、この問題に対してこんな解決策を提示した」と言って、Windows Mobileのタスクマネージャーの画面を表示した。これはユーザーが、どのプログラムにどの程度のCPUパワーやメモリを割り当てるかを設定できるプログラムだ。ここで会場から笑いが起きる。コンピューター専門家でもないユーザーにいちいちそんな判断を委ねるのは言語道断だからだ。
アップルがたどり着いた結論は「Push Notification Serice」という方法だった。通知が必要な情報の多くは、インターネットサーバーが管理している。ユーザーがアプリケーションの利用を中止すると、サーバーとの接続が切れてしまうが、そのサーバーがアップルが提供する「Push Notification Services」というサーバーに通知を送ると、ここから携帯電話通信の信号として通知が送られる。これはちょうど携帯でショートメッセージを受信する仕組みによく似ている。
この方法だと、通知が必要なサービスがどんなに増えても、パフォーマンスにも、バッテリーにも影響を与えないし、すべての開発者にとって平等だ。このようにSDKは、これからもまだまだ進化を続けている。
長い企業情報システムへの対応とSDKの紹介に続き、スティーブ・ジョブズCEOがiPhone 2.0の新機能を紹介した(これらの機能は、現行iPhoneやiPod touchでも利用可能になる)。
1つめはアドレス帳を検索する機能。2つめは、メールに添付されたアップルのiWorkの書類(Pages、Numbers、Keynote)を表示できるようにしたこと。3つめは、これまでWordとExcelのみのサポートだったMicrosoft Office書類が、PowerPointの表示に対応したこと。
4つめは電子メールの一括削除と一括移動。5つめは電子メールに添付されていた写真をiPhone内のフォトライブラリに保存する機能だ。
6つめは計算機の変更。科学計算ができる計算機の要望が強かったので、本体を横向きにすると、科学計算に対応するようになった。7つめはParental Controlsで、子供がアクセスできるコンテンツを制限したり、コンテンツの購入を制限できる。
そして8つめは他言語のサポート。18カ国語をサポートした。日本語入力方式が2種類になり、中国語入力方式も2種類用意される。そのうち1つは、指を使って字を描く手書き認識だ。また、言語は簡単に切り替えられる。ジョブズ氏は「こうした言語の切り替えが簡単にできるのは、プラスチックのハードウェアキーボードを持っていないことの強みだ」と強調した。
iPhone 2.0は、7月はじめに提供開始予定で、既存のiPhoneユーザーには無料、iPod touchユーザーには9.95ドルのアップグレードとして提供される。
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