日本サムスンは6月18日、DIY(Do It Yourself)型オールインワン32インチワイド液晶ポスター制作・表示システム「ハルヱとケイジ」を7月末に発売すると発表した。ラインアップは縦表示モデル「HK32V001」と横表示モデル「HK32H001」の2モデルを用意している。
販売価格はオープン、予想実売価格は19万8000円、キッセイコムテックの標準レンタル価格は1万2000円(5日間)となっている。日本サムスンのパートナーが法人チャンネルで販売するほか、ビックカメラ有楽町店とソフマップ秋葉原本館で7月中旬に先行展示を開始し、主要な量販店で順次全国展開する予定だ。
ハルヱとケイジは、Windows XP Embedded(SP2)搭載のコントローラやステレオスピーカーを一体化した32インチワイド液晶ディスプレイ、組み立て式のキャリアブルスタンド、独自開発の液晶ポスター制作・表示用ソフト「MagicInfo Pro」、コンテンツ配信用の2GバイトUSBメモリ、ポスター作成用の素材となるテンプレートやサンプルコンテンツをパッケージ化したオールインワンの液晶ポスターシステムだ。日本サムスンによれば、こうしたDIY型の液晶ポスターシステムをオールインワン化して家電量販店で販売する試みは業界初という。
液晶ポスターは紙のポスターとは異なり、液晶ディスプレイの画面に情報を表示するため、電気代はかかるものの、紙を張り替える労力が不要で、表示内容の修正や更新が容易に行えるほか、動画やスライドショー、エフェクト機能、音声と組み合わせるなどの表現が可能になる。暗い場所でも視認性が確保できるというメリットも持つ。
液晶ディスプレイを利用したデジタルサイネージ(屋外や店頭、交通機関など一般家庭以外の場所においてディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するメディア)は、電車内や街頭などに増えつつあり、市場規模は拡大しているが、これまでは導入に専門業者のカスタム対応が必要なことが多く、コスト面から中小規模の事業者や一般店舗などで導入するにはハードルが高かったという。
こうした市場動向を背景に、同社はDIY型のオールインワン液晶ポスターシステムを20万円を切る価格で量販店にて販売することで、液晶ポスターとデジタルサイネージ市場の拡大を図る構えだ。
ユーザーは、Windows 2000(SP4)/XP(SP2)/Vista搭載の汎用PCにMagicInfo Proをインストールすることで、液晶ポスターに表示するコンテンツの作成や掲示スケジュールの管理が行える。
表示するコンテンツは、MagicInfo Proに用意されたテンプレートをベースに、写真などの図版と文字を組み合わせることで作成できるほか、PowerPointで写真と文字をレイアウトしてBMPやJPEGで保存したものも使える。作成したコンテンツは付属の2GバイトUSBメモリに保存し、液晶ディスプレイ本体にUSBメモリを接続すれば自動登録される仕組みだ。画像データは最大約2000枚(1枚につき1Mバイト時)登録でき、タイマーをセットして切り替え表示が行える。
専門業者による工事や配線がいらず、マニュアルを参照してMagicInfo Proを使用するだけで、標準的なPCユーザーでもDIY型の設置が行えるという。MagicInfo Proとマニュアルは同社のWebページから無償でダウンロードでき、製品の機能や使用感を事前に確認することが可能だ。
液晶ディスプレイとMagicInfo Proはネットワーク配信機能に対応するが、標準ではサポート/保証対象外となる。ネットワーク経由での運用は、別途販売パートナー企業がシステム構築に対応する予定だ(対応予定販売パートナーは、NECネクサソリューションズ、グローリー)。
液晶ディスプレイは1366×768ドット表示の32インチワイド液晶パネル(S-PVA方式)を採用。基本スペックは輝度が500カンデラ/平方メートル、コントラスト比が3000:1、視野角が上下/左右とも178度、応答独度が黒→白→黒で16ms、中間階調で8msだ。表示する画像はUSBメモリで登録できるほか、DVI-D、アナログRGB、HDMI、コンポジットの映像入力インタフェースも持つ。内蔵スピーカーの出力は5ワット+5ワットだ。最大消費電力は180ワットとなる。
液晶ディスプレイに統合されたWindows XP Embedded(SP2)搭載コントローラ部は、CPUにAthlon 64 X2 3400+(1.8GHz)、メインメモリに512MバイトDDR2 SDRAM、フラッシュメモリに4Gバイト、グラフィックスにATI RS780を採用。3基のUSB 2.0、1000BASE-Tの有線LANのインタフェースを備えている。
キャリアブルスタンドは付属の六角レンチとドライバーで個人でも組み立てられ、サイズが537(幅)×530(奥行き)×1116(高さ)ミリ、重量は約7キロだ。液晶ディスプレイは、サイズが482(幅)×109(奥行き)×780(高さ)ミリ、重量が約16.4キロで、縦表示モデル「HK32V001」の高さは最大1350ミリとなる。
同社は今後、無線LANを含むネットワーク機能の強化、屋外設置需要への対応(現状では0度〜40度で動作可能、直射日光下の設置は不可)、大型ディスプレイ需要への対応を検討するという。
製品発表会では、デジタルプロダクツ事業部 DMAチーム チーム長の金周一氏が冒頭にあいさつし、「今回の新製品によって液晶ディスプレイの新たな用途を開拓し、より多彩な目的で役立てられるよう、顧客のニーズに応えていきたい」とハルヱとケイジに対する期待を述べた。
製品の説明はデジタルプロダクツ事業部 DMAチーム 部長の宮田隆氏が担当。同氏は「これまで本体で40〜50万円、ソフトで10万円といった導入コストがかかることが当たり前だった液晶ポスターを安価にオールインワンパッケージで提供することで、中小事業者や一般店舗への普及を目指したい」と製品をアピールした。
ゲストスピーカーとして招かれたデジタルメディアコンサルタント・慶應義塾大学DMC機構研究員の江口靖二氏は、デジタルサイネージの市場動向について説明。「デジタルサイネージは、マスメディアとインターネットなどの個人媒体の中間に位置するもので、時間と場所を特定できる唯一のメディア。渋谷のハチ公前や山手線の電車内など、特にターゲットが明確な場所で成功している。インフラコストが低下しつつあることから、これからは一般店舗への普及が見込める」と展望を語った。また、同氏が事務局長を務めるデジタルサイネージコンソーシアムでの活動を通じて、デジタルサイネージの普及拡大を推進していくという。
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