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“家庭も仕事もこれ1台”な複合機を求めて――キヤノン「PIXUS MX850」実力診断人気モデルをより多機能に(1/3 ページ)

» 2008年06月20日 17時30分 公開
[榊信康,ITmedia]

ビジネスシーンに浸透するインクジェット複合機

「PIXUS MX850」

 ここ数年の間に、A4クラスのインクジェットプリンタは複合機が主流になった。その花形といえば、フォトプリントが得意な家庭向けの機種だが、ビジネス向けの機種もSOHOや小規模事業所において高い人気を誇っている。

 これはインクジェットプリンタ自体の性能向上やコストパフォーマンスの高さに加え、PCの浸透やネットの拡大によって、ビジネスシーンでもカラープリントのニーズが高まったためだろう。コンセプトを同一とするA4クラスのカラーレーザー複合機の人気が高いことを見ても、ビジネスにおけるカラープリントの重要性の高まりはうかがい知れる。

 また、情報技術の発達にともない、FAXやコピー機の使用頻度が下がってきたことも複合機が選ばれる遠因となっている。電子メールによってFAXの使用頻度が低下したものの、ビジネスシーンではいまだに根強く使用されるため、排除はできない。コピー機もまた、これと近しい理由により必要となる。これら使用頻度の低いデバイスが占有するオフィススペースを解消したいと思うのは必然だろう。結果として、それらの機能を内包する複合機に目が向くわけである。

 キヤノンは以前から、ビジネス向けのインクジェット複合機に注力しており、MultiPASSシリーズ、PIXUS MP700/800シリーズと代を重ねてきた。人気も上々で、一昨年に発売した「PIXUS MP830」などは、ビジネス層、ホビー層を問わず大きな支持を得ることに成功した。

 そして、今年の春にはMP830の後継機にあたる「PIXUS MX850」が発売された。知る人ぞ知るMP830の後継というだけでも話題性はあるが、型番に“MX”という新コードを冠することで、従来と一線を画す設計思想を明示しているのだから期待がかかる。

 以下に、機能、給紙容量、スピードなど、オフィス複合機で求められる要件を順を追って見ていこう。

ADFとネットワーク機能を標準装備する「PIXUS MX850」

 まずは複合機としての基本機能だが、MX850はプリンタ、スキャナ、コピー、FAXを備えている。いわゆる4in1の複合機だが、プリンタ機能はデジタルカメラやメモリカードからのダイレクトプリントもサポートしているので、これらも加えれば6in1ということになるだろうか。

 しかし、MX850をビジネス機たらしめているのは上記の主機能ではなく、ADFやネットワーク対応など補助機能の存在だ。

上面のADFは天板と一体化したトレイを開いて利用する。メンテナンス時は左側が開口する

 ADFはFAX、スキャナ、コピーの省力化に大きな影響をもたらすのはいうまでもない。とはいえ、家庭向けの複合機だと、ADF自体が存在しないか、あったとしてもわずか数枚程度の給紙容量しか持たないことが多い。この点、MX850はA4で35枚の給紙が行える頑強なADFを搭載している。これだけの容量があれば、オフィスでの運用にも不都合は感じないだろう。

 MX850のADFは自動両面読み取りに対応しているので、両面原稿のスキャンやコピー、片面原稿2枚を1枚に両面コピーするといった芸当もこなす。MP830と比較して、ADFの読み取り速度の向上と内部処理の改良により、複数原稿の複数部コピーが高速されているのも目を引く。

 ネットワーク機能は、MP830にはなかった本機からの特徴だ。これにより、プリンタ、スキャナ、メモリカードリーダの共有が可能となるばかりではなく、設置場所の自由度が格段に向上している。インタフェースは10BASE-Tおよび100BASE-TXに対応。MXの名はこれに由来するのかもしれない。

充実の給紙機構を備えたコンパクトボディ

 SOHOや小規模事業所において、山のような給紙容量が必要というケースはまれだろうが、さりとて、デスクサイドが前提のホビー向け複合機程度の容量では心もとない。ビジネス機で、しかもネットワーク対応となれば、ある程度の給紙容量が必要になる。

 例えば、手元のPCから書類を印刷しようとするが用紙切れが判明、デスクから離れたプリンタまでノコノコと出向き用紙を補充、再びデスクに戻り印刷、再度プリントを取りに出向く、という冗長な作業はなるべくなら避けたいので、数百枚の給紙容量は確保しておきたいところだ。

 この点において、MX850は本体下部のカセットに150枚、背面トレイに150枚の都合300枚の容量を備えている(はがきは各40枚)。万全の給紙容量ではないにせよ、MX850はA3に対応していないため、さらに大容量の給紙機構は重要ではない。おまけに家庭向けPIXUSシリーズのようにDVD/CDレーベル印刷機能も備えており、この仕様で大抵の環境に対応できるだろう。

本体下部に150枚セット可能な給紙カセットを装備(写真=左)。背面トレイにも150枚セットでき、給紙切り替えボタンを押すだけで給紙機構を変更できる(写真=中央)。DVD/CDレーベル印刷機能も備えており、レーベル印刷用トレイは本体の底面に収納できる構造だ(写真=右)

 実のところ、家庭向けのPIXUSシリーズと同等の給紙容量なのだが、これはMX850が少ないというよりは、家庭向け製品の容量が大きいのだ。昨今のPIXUSが採用し続けている“SUPER PHOTO BOX”デザインの効能というべきか。部材の共通化を目指すべく、余裕のある給紙容量を持たせてあったのだろう。おまけに用紙の供給元をカセットと背面トレイに分配しているため、はがきとA4普通紙など、用途に応じて柔軟に対応できる。改めて、よく考えられたデザインだと感心する。

 MX850はADFを搭載するため、箱形のSUPER PHOTO BOXデザインとは異なるが、これだけ多くの機能を盛り込んでいながら、ボディのサイズは大きすぎない。本体サイズは508(幅)×483(奥行き)×260(高さ)ミリ、重量は約13.9キロにおさまっており、本体サイズが500(幅)×487(奥行き)×292(高さ)ミリ、重量が約14.7キロだったMP830に比べて、高さが見た目に分かるほど削減されている。

たいていのビジネス向け複合機はADF周辺のデザインが武骨になりがちだが、MX850は曲線的でボディによくなじむ形状になっている。ボディの前面には、デジタルカメラ接続用のPictBridge対応USB、コンパクトフラッシュ/メモリースティックPRO/SDメモリーカード(SDHC対応)対応スロットを装備(写真=左)。背面にはPC接続用のUSB 2.0、100BASE-TXの有線LANなどを配置している(写真=中央)。奥行きは483ミリあり、側面にインタフェースは用意されていない(写真=右)

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