「未来の地球を守るため」――エプソンが掲げる2050年の環境目標とは?J8サミットの支援も(1/2 ページ)

» 2008年07月08日 08時30分 公開
[前橋豪,ITmedia]

エプソンの根幹は“省”の技術にあり

千歳事業所

 セイコーエプソンとエプソン販売は7月4日、北海道の千歳事業所においてエプソングループの環境活動に関する説明会を開催。報道関係者に向けて、環境への取り組みや長期的な指針を説明するとともに、7月1日から10日まで開催されている「J8(ジュニア・エイト)サミット千歳支笏湖」への支援内容も紹介した。

 なお、同日には報道関係者向けに同事業所の高温ポリシリコンTFT液晶パネル(HTPSパネル)製造ラインも公開された。HTPSパネルの製造に関しては、別の記事で紹介する

 エプソンの環境活動については、セイコーエプソン 経営戦略室 信頼経営推進部(環境担当)部長の田中規久氏が解説。1988年にフロンレス活動を開始してから、1993年に洗浄用特定フロンの全廃、1998年にエプソンリサイクルセンサーを設置するなど、今日に至るまでの全社的な環境活動を振り返った。

経営戦略室 信頼経営推進部(環境担当)部長の田中規久氏(写真=左)。エプソンの環境への取り組み(写真=右)

 また田中氏は、エプソンの技術の根源は「“省”の技術」、つまり省エネルギーと省資源にあるとし、例として、セイコー時代のクオーツ式置き時計や腕時計の開発による省資源化、プロジェクターとプリンタにおける消費電力の削減による省エネルギー化を挙げた。プロジェクターの明るさ100ルーメンあたりの消費電力は10年間で10分の1に、インクジェットプリンタの1日あたりの消費電力は4年間で73%の削減を達成できたという。

エプソンの技術の根幹となる省エネと省資源化(写真=左)。プロジェクターとインクジェットプリンタにおける消費電力の推移(写真=中央、右)

 そして、エプソンの環境への取り組みを支えるコアテクノロジーとして強調されたのが、インクジェットプリンタでおなじみの「マイクロピエゾテクノロジー」だ。インクジェットプリンタのプリンタヘッドは、サーマル方式とマイクロピエゾ方式の2つがあり、エプソンは一環して後者を採用し続けている。サーマル方式は、ヒーターの加熱でインクを沸騰させ、このとき発生した気泡の力でインクを吐出する仕組み。マイクロピエゾ方式は、電圧をかけると変形するピエゾ素子を利用し、機械的な加圧力によってインクを吐出する仕様だ。

 エプソンはマイクロピエゾ方式のメリットとして「インクの液滴サイズや着弾位置などを精密に制御できる」「吐出できるインクの選択肢が広い」「インクを吐出するプリンタヘッドの耐久性が高い」の3つを挙げており、田中氏はそのメリットを「必要な時に、必要な量を、必要な場所へ吐出できることから無駄がなく、プリンタ以外にも応用できる」と語った。

 実際、マイクロピエゾ方式はプリンタに限らず、液晶パネル製造のカラーフィルタ生産や配向膜形成にも活用されており、回路基板の製造においてはフォトリソグラフィー方式と比較して不要部分のはく離処理が不要で、作業工程を減らせることから、廃棄物を削減できるとしている。「マイクロピエゾテクノロジーは、将来的には製造ラインをより小型化して、環境への負荷を最小限に抑えることも可能な技術だ」(田中氏)

マイクロピエゾ方式の応用事例(写真=左)。回路基板の製造では廃棄物を削減できる(写真=中央)。将来的には製造ラインをここまで小さくできるのではないかと可能性を探っている(写真=右)

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