CPUの処理能力が重要となる動画コンテンツの再生に関しては、1.6GHzと同じ動作クロックのAtom N270を搭載したNetbookとさほど変わらない。SD解像度であればMPEG-2(9Mbps)/DivX(平均1.5Mbps)/WMV(平均1.5Mbps)のいずれの再生も難なくこなした。
インターネット上の動画サービスに関しては、YouTubeはおおむね不満のないレベルで視聴できる。CPU負荷の大きなH.264コーデックが多いニコニコ動画では、コンテンツにもよるが、コメント表示なしでギリギリ実用的といったレベルだ。
もっともU/B50NにはAtom N270搭載のNetbookにはない武器がある。それは、Intel SCHチップセット内蔵のグラフィックコア(Intel GMA 500)に搭載された動画再生支援機能が使えることだ。今のところCyberLink PowerDVD 8がこれに対応しているようなので、体験版をインストールしてみると、1280×720ドット/最大12Mbps程度のH.264コーデックのハイビジョン動画ファイルが軽快に再生できた。
同じ動画ファイルは動画再生支援機能を使わなくてもギリギリ再生できるのだが、ビットレートが高いシーンでは明らかなコマ落ちが発生してしまい、CPU使用率もかなり高い。この点でハイビジョン動画プレーヤーとしての資質もかなり高そうだ。
では、バッテリー駆動時間はどうだろう。内蔵無線LANでのインターネット利用、USB接続の3G通信モジュールであるイー・モバイル「D02HW」を利用してのインターネット利用、そして内蔵HDDから動画再生を行うという3つのシチュエーションにおいて、バッテリー残量が100%から5%になるまでの時間を計測した。
電源プランは動画再生でもパフォーマンスの問題がなかったので「省電力」に統一した。ただし、スクリーンセーバーや自動でのスタンバイ移行などの設定は無効にしている。バッテリーは標準の3セルバッテリーだ。
結果はグラフの通りだ。WMV動画の再生では184分と3時間超えを記録した。本体内蔵の無線LAN機能を利用した場合で165分、一番短かったUSBモデムでの計測的なWebアクセスでも159分と、同じく3セルバッテリーを採用する「Aspire one」や「Wind Netbook U100」といったNetbookよりも軒並み長いバッテリー動作時間だ。
また従来モデル(Windows XP搭載モデル)と比較すると、1.5倍以上はバッテリー駆動時間が延びている。これは従来モデルから低下してしまった3D描画性能を補って余りあるメリットに違いない。
なお、オプションのバッテリーパックLは6セルで2倍の容量を持つので、おおむね計測結果の2倍はバッテリー駆動ができることになる。動画再生で連続6時間程度、ネット利用で連続5時間以上のバッテリー駆動が行えるとしたら、大いに魅力的ではないだろうか。
初登場から1年強を経てフルモデルチェンジを果たした「LOOX U」だが、その変身ぶりには目を見張るものがある。
パフォーマンスこそ劇的な変化はないが、使い勝手の向上、バッテリー駆動時間の延長と、モバイルで重視される部分をしっかりと改善、強化してきた。キーボードに関しては「最初からこれだったら……」と思わないこともないが、しっかりとユーザーの声が反映された結果ではないかと思う。こうした仕様強化は、UMPCの魅力を大いに再認識させてくれるはずだ。もし店頭で見かけたらなら、キーボードの使い勝手だけでも自分の手で確かめてほしい。
もっとも、いざモバイル用にPCを購入するとなれば、低価格なNetbookと比較してしまう人も多いだろう。Netbookはボディの形状やサイズが一般的なモバイルノートPCに近く、その意味では実用度が高い半面、コンパクトなタイプの製品でも両手で持ったまま使うことは考慮されておらず、現実的にも困難だ。
U/B50Nはキーボードの使いやすさでは少し見劣りするが、小型軽量で持ち運びがNetbookより楽だし、移動中にちょっと立ち止まって使ったり、電車の中で立った状態で使うといったことが難なくこなせる。液晶ディスプレイの解像度がNetbookより高いのも見逃せない。
さらに直販モデルでは、全国の広いエリア、地下街、地下鉄の駅構内でもスマートに高速インターネット接続が可能な無線WAN機能(FOMA HIGH-SPEEDモジュール)を内蔵した構成も選べる。要はモバイルPCに何を求めるのかが評価の分かれ目といえるが、より自由度の高いモバイルPCを求めているならば、U/B50Nは絶好の選択肢になるはずだ。
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