ASUSが説明する「Super Hybrid Engine」

» 2008年10月10日 17時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
ASUS Notebook BU-R&D ジェネラルマネージャーのヘンリー・ヨウ氏

 ASUSのS101は、バッテリーパックにリチウムポリマーを用いており、そのセルの数は4つ、バッテリーパック全体の容量は7.2ボルト4900ミリアンペアアワーとなっている。これは、従来モデルのEee PC 901-Xの6600ミリアンペアアワーより少なく、そのため、ASUSが公称するバッテリー駆動時間もEee PC 901-Xの8時間から約5時間へと短くなってしまった。

 しかし、バッテリー容量が減ってバッテリー駆動時間が短くなったとはいえ、1キロ級のS101が5時間のバッテリー駆動時間を実現しているというのは、同じCPU(Atom N270)と同じチップセット(Intel 945GSE Express+ICH7-M)を搭載しているほかのNetbookと比べると格段に長い。液晶ディスプレイが10.2型ワイドと、Netbookの中では最も大きいサイズであるにもかかわらずだ。

 この、長時間バッテリー駆動を可能にしているのが、ASUSが独自に開発して、従来のEee PC 901-Xから導入している省電力機能の「Super Hybrid Engine」だ。ASUSのNotebook BU-R&D ジェネラルマネージャーであるヘンリー・ヨウ氏が、Super Hybrid Engineを始めとする、ASUSノートPCに導入された技術を紹介した。

先行するEPUでNetbookに長時間駆動を可能に

 ヨウ氏の説明によると、Super Hybrid Engineは「CPU Smart Step」と「EPU」というハードウェアの組み合わせと「Hybrid Power 4 Gear」というソフトウェアで構成される。ASUSの評価によると、電力管理機能にSuper Hubrid Engineを利用することで、35〜53%の省電力が実現するとされている。

 EPUは、すでにASUS製マザーボードで省電力のために導入されているハードウェアで、Hybrid Power 4 Gearは、ノートPCを使っている局面ごとに変わってくるパフォーマンスと省電力の優先順位にあわせて、システムの省電力状態を簡単に切り替えることができるユーザーインタフェースを提供する。

 Hybrid Power 4 Gearでは、クーラーファンの回転数も制御できるが、事前に用意されているプリセット設定のうち、Quiet Office Modeでは、ファンの回転数が変化することで、かえって、風切り音が気になることがないように、ファンの回転数を低い値で固定するといった、きめ細かい設定が用意されている。

CPU Smart Step、EPU、Hybrid Power 4 Gearで構成されるSuper Hybrid Engine(写真=左)。ボディ内部に複数設置した温度センサーでシステムの状態を診断し、CPUの動作クロックやクーラーファンの回転数を最適な状態に変化させる(写真=右)

 ASUSでは、ユーザーの満足度を高める要素の1つとして、起動やシャットダウン、そして休止状態や、そこからの復帰にかかる時間も重要と考えている。同社が測定したデータでは、2008年に登場したノートPCと2007年に登場したノートPCの起動、シャットダウン、休止、復帰のそれぞれに要する時間を比較すると、起動時間で22%の減、シャットダウンで66%の減と、2008年のノートPCで大幅に改善されたという。

 また、ASUSではPCの起動性能を向上させるために、「Express Gate」という仕組みをマーザーボードやノートPCで導入している。ITmediaでもすでにマザーボードのレビューで紹介しているが、Linuxベースで動作するメールやメディアプレーヤー、Skype、画像管理のユーティリティを用意して、限られた目的のためにPCをすぐ使いたいときに、PCをわずか8秒で起動するのがExpress Gateの特徴だ。

ASUSが重要視している起動やシャットダウン、休止、復帰にかかる時間は2008年のノートPCでは大幅に改善された(写真=左)。すでにマザーボードで導入されているExpress Gateもその1つの方法として開発された(写真=右)

消費電力、立ち上がりなど、優れたLEDバックライト

 ASUSは、セキュリティーを要するログイン方法として、Webカメラを利用した顔認識を導入している。顔認識の欠点として、髪型など容姿が変わったときに認識が挙げられるが、「Smart Login」と名づけられた顔認識ログインでは、初回利用時に、ユーザーの顔を30枚キャプチャーし、その後も、利用するたびに15枚のキャプチャーを行って画像を蓄積していく。

 ユーザーがPCにアクセスするためにSmart Loginのインタフェースを開くとシステムは10枚の“顔写真”をキャプチャーするので、容姿が変化してもログインは成功すると説明している。仮にSmart Loginでログインに失敗しても、パスワードを使って再ログインが可能で、そのときも顔の画像をキャプチャーするので、少しずつ“経年変化”していく容姿に対応できる。Smart Loginでは、最大で480枚の画像データを蓄積できるが、処理負荷を抑えるために、認識処理にはその中の新しい2%の画像を使うとASUSは説明している(とはいえ、画像処理が伴なうため、実用的なのはハイエンドクラスのノートPCになるとのこと)。

顔認識を利用する「Smart Login」では、これまでこの方法の欠点とされてきた「認識させるまで準備が大変」「容姿の変化に対応できない」という問題を膨大な画像の蓄積で解決する

 ノートPCで重要になる電力管理では、特に液晶ディスプレイのバックライトについて説明がなされた。液晶ディスプレイのバックライトとして採用が進むLEDだが、薄型化と軽量化に貢献するほか、省電力効果も高い。「バッテリー駆動時間を30分伸ばしてくれる」というLEDの消費電力をASUSが測定した結果では、輝度を60ミル(カンデラ平方メートルにほぼ等しい)と最高輝度のそれぞれで、蛍光管利用とLED利用のシステムを比較すると最高輝度で34%、60ミル時で70%の省電力が実現している。

 また、立ち上がりの速さもLEDの特徴で、従来の蛍光管液晶ディスプレイが、輝度60ミルまで明るくなるのに起動から15分ほどかかるのに対して、LEDは1秒以下で明るくなるデータがASUSから紹介された。

最高輝度だけでなく、多くのユーザーが電力を節約するために行う「低輝度表示」で特に優れた省電力性能を示すLEDバックライト搭載の液晶ディスプレイ(写真=左)。立ち上がりの速さもLEDバックライトを導入した液晶ディスプレイのメリットとして挙げられる(写真=右)

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