10月15日、アップルは同社のノートPC製品のラインアップを一新した。MacBook、MacBook Pro、MacBook Air、3ラインすべてがリフレッシュされている(ただし、MacBookのローエンドモデルを除く。また17型ワイド液晶ディスプレイを搭載したMacBook Proは内蔵ディスプレイの解像度アップなどのマイナーチェンジにとどまる)。
今回、フルモデルチェンジを行った3機種(MacBook、15型MacBook Pro、MacBook Air)は、多くの点で共通する特徴を持つ。
すでにMacBookとMacBook Proではインテルの45ナノメートル製造プロセスによるCore 2 Duo(開発コード名:Penryn)を搭載していたが、新モデルではFSBが1066MHzに引き上げられた。また小型パッケージの低電圧版を採用するMacBook Airでは1世代前の(65ナノメートルプロセスの)Meromが使われていたが、新型ではほかのモデルと同じFSB 1066MHzのPenrynに更新されている。
これまでアップルは、チップセットにすべてインテル製品を採用してきたが、今回の新モデルではすべてNVIDIAのグラフィックス機能を内蔵した統合型チップセット、GeForce 9400M mGPUに切り替えられた(256Mバイトの共有メモリ)。NVIDIAがmGPU(Motherboard GPU)と呼ぶグラフィックス統合型チップセットのうち、最新版となるGeForce 9シリーズは、デスクトップPC用が9月30日に発表されたばかり。ノートPC向けは今回のMacBookが初めてとなる。16のグラフィックスコアを搭載するGeForce 9400Mは、従来のMacBook(Intel GM965 Express内蔵のIntel GMA X3100)比で5倍の性能を持つとアップルは述べている。
MacBook ProではこのGeFore 9400M mGPUに加え、ディスクリートグラフィックスチップのGeForce 9600M GT(32グラフィックスコア、GDDR3 256Mバイトの専用メモリ)も合わせて搭載し、両者を切り替えて利用することができる。残念ながら、両者を同時に利用するハイブリッドSLIは、MacBook Proではサポートされない。
2008年の6月に開催されたWorldwide Developers Conference(WWDC)で、アップルはPCでいうGPGPUのプログラミングモデルとして、OpenCL(Open Computing Language)を提唱している。今回、NVIDIAのGPUを全モデルに採用したことには、OpenCLのインプリメントが関連しているのかもしれない。そうでなくても従来のIntel GM965 Expressチップセットが内蔵するGMA X3100は、Windows、Macを問わず、ディスプレイドライバのデキが優秀とはいえなかった。Macにおいては、前世代のIntel 945GM Express(Intel GMA950)比でOpenGLのパフォーマンスが低下する、という現象も見られた。単にこれが不満だったという可能性もある。
これまでMacBookシリーズでは、外部ディスプレイ端子として、MacBookはMini-DVI、MacBook Proは通常のDVI、MacBook AirではMicro-DVIを採用していた。いずれも信号レベルはTMDSで共通性を持つが、今回のモデルチェンジで採用されたのはTMDS系のHDMIではなく、DisplayPort系のMini DisplayPortであった。RGBと同期信号をそれぞれデジタル化した格好のTMDSに対し、データをパケット伝送するDisplayPortは、技術的に1世代新しい。
アップルはHDMIを採用しなかった理由として、30型の液晶ディスプレイに対応できないことを挙げているが、正確にはHDMIでも30型ディスプレイに必要な2560×1600ドット解像度をサポートすることは可能だ。しかし、それには現在普及しているAコネクタ(Type A)とは全く別の、デュアルリンクに対応したBコネクタ(Type B)が必要になってしまう。当面、テレビではBコネクタを必要としない(フルHDはAコネクタで可能)ため、その普及には疑問も寄せられている。
パケット伝送のDisplayPortは、1つのコネクタですべての解像度に対応できる。アナログRGBやHDMIといった普及した既存の規格に対してはアダプタによって互換性が確保される。これまでもMicro-DVIやMini-DVIで別売アダプタを提供してきたアップルにとって、こういったアダプタの必要性は大きな問題ではないだろう。
今回発表されたMacBookシリーズ全モデルが、リサイクルの容易なアルミニウム削りだしの「ユニボディ」を採用する。これまでポリカーボネート樹脂製だったMacBookがアルミニウム製になるほか、金属製でも複数のパーツで構成されていたMacBook ProやMacBook Airも内部構造が簡素化され、剛性の向上などが期待される。重量的にはMacBookは約230グラムの大幅な軽量化となったが、MacBook Airは据え置き、MacBook Proはわずかに重くなっている。
このリサイクル性に配慮したボディにとどまらず、液晶ディスプレイのバックライトをLEDに切り替えることで水銀の利用をゼロにしたり、ケーブルやコネクタからPVC(ポリ塩化ビニール)素材を排除するなど、環境に配慮したことも新しいMacBookシリーズの特徴の1つになっている。
従来からマルチタッチトラックパッドが採用されていたMacBook ProとMacBook Airに加え、MacBookにもマルチタッチトラックパッドが採用された。MacBook Airのみ採用が明記されていないが、MacBook ProとMacBookでは3本指や4本指によるスワイプが明記されるなど、サポートするジェスチャも拡張されているようだ。
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