NECのNetbook「LaVie Light」はココが違う元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2008年10月16日 11時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

国内PCベンダーが相次いでNetbookを投入

NECのNetbook「LaVie Light BL100/RA」

 2007年末、低価格なミニノートPC(その代表がAtomをベースにしたNetbook)が登場した際、多くの人が懸念したことは、この安価で持ち運び可能なPCが、既存のノートPC市場を浸食してしまうのではないか、ということだった。これはPCベンダー(システムベンダー)のみならず、マイクロソフトやインテル、販売店や流通関係者など、PC業界全体が共有していた不安ではなかったかと思う。

 わが国で本格的にNetbookが販売されるようになって半年あまりが経過し、長期的な影響はまだ分からないものの、短期的には恐れたような事態には今のところ陥っていないようだ。統計により差はあるが、すでにミニノートPCがわが国のPC市場に占める割合は、10〜20%に達したとされる。しかし、既存のノートPC市場を浸食したというより、2〜3台目需要を掘り起こすことで既存市場に上乗せ効果をもたらし、市場の活性化を促しているようだ。

 その一方で、Netbookにより市場に1つの変化が生じた。ASUSTeKやAcerといった台湾系のベンダーが、わが国の完成品PC市場の一角を占めるようになったのだ。台湾系のPCベンダーがわが国に進出してきた歴史は決して浅くはない。ところが、これまではブランド力の差、流通やサポートに関する懸念などにより、PCパーツのようには市場を攻略できずにいた。それがミニノートPC/Netbookを機に、量販店の店頭で存在を示し始めたのである。

 だが、現時点でミニノートPCが浸透しているのは、わが国の市場のごく一部に限られる。ユーザーの多くは首都圏の消費者で、まだ地方にまで浸透しているわけではない。これからミニノートPCが広く普及するには、国内ベンダーの製品投入が不可欠だろう。

 そうした声に耳を傾けたのか、ここにきて流通力とサポート力に優れる国内ベンダーからミニノートPCの製品投入が相次いでいる。9月17日にリリースしたオンキヨーの「SOTEC C1」、9月29日に製品発表を行った東芝の「NB100」に続いて、わが国のPC市場でトップシェアを誇るNECも10月16日に同社初のミニノートPCとなる「LaVie Light BL100/RA」の発表を行った。今回、その試作機を借用できたので、簡単に紹介しよう。なお、試作機ゆえボディ表面の塗装やマークは実際の製品と異なる場合があるので、その点は注意してほしい。

国内PCベンダーから相次いで投入されるNetbook。左から東芝のNB100、オンキヨーのSOTEC C1

容量160GバイトのHDDを標準装備

8.9型の非光沢ワイド液晶ディスプレイを搭載する

 NECのLaVie Lightは、インテルのAtomをベースにしたNetbookだ。リリース時点で用意されるのは1モデルのみで、同一モデルが店頭と直販(NEC Direct)の両ルートで販売される。今のところ、大容量バッテリーも含め、BTOオプションなどの選択肢は用意されない見込みだ。

 Netbookは構成するCPUやチップセットにバリエーションがないうえ、Windows XP Home Edition(SP3)の低価格PC向けライセンスの制約もあるため、製品のスペックで他社と差別化を図ることは難しい。本機の基本的なスペックも、CPUのAtom N270(1.6GHz)、Intel 945GSE Expressチップセット、チップセット内蔵のグラフィックス、1Gバイトのメモリ、1024×600ドットの解像度を備えた液晶ディスプレイと、ほかのNetbookと変わらない。性能的にもほぼ同等だと考えてよいだろう。

 Netbookでバリエーションが出るのは液晶ディスプレイの大きさとストレージデバイスの種類で、本機は8.9型ワイド液晶ディスプレイと160GバイトのHDDを採用する。ボディは8.9型より一回り大きな10型クラス向けで、このあたりは日本エイサーのAspire oneと似た構成だ(Aspire oneのHDDは120Gバイトだが)。「−/ほ」キーから右側と「む」キーなどが小さくなるキーボード、クリックボタンがパッドの左右に振り分けられたタッチパッドなど、類似した部分は少なくない。

主要キーで17ミリピッチを確保したキーボードを採用する。タッチパッドはジェスチャー機能をサポートしているが、パッド面が29×47ミリと少なめで操作には慣れが必要だ

 だが、タッチパッドのボタンもよく見ると、パッド面よりやや低いため押しづらいAspire oneに対し、本機のボタンはパッド面よりわずかに上にあり押しやすくなっているなど、全く同じというわけではない。内蔵のWebカメラも有効131万画素で、このクラスとしては高解像度になっている。

 さらに本体左側面にあるUSBポートを、PCの電源がオフの状態でも接続機器に充電できる「パワーオフUSB充電機能」に使えるのも本機ならではの特徴だ。パワーオフUSB充電機能は、シャットダウン時に接続されたACアダプタから周辺機器への充電ができるだけでなく、BIOSの設定によりバッテリーからの充電もサポートする。携帯電話など、より緊急性の高いデバイスのバッテリーが切れてしまった際に役立ちそうな機能だ。

 本体左側面には、このUSBポートに加え、ヘッドフォン、マイク、アナログRGB出力端子が並ぶ。残る2つのUSBポートとDC入力、有線LAN(100BASE-TX)、SDHC対応SDメモリーカードスロットが右側面に用意される。SDメモリーカードスロットはメモリカード全体がスロット内に収まるタイプで、メモリカードを入れっぱなしにして持ち運んでも邪魔にならない。本体前面を占めるのは、ステレオスピーカーとインジケータ類で、無線LAN(IEEE802.11b/g対応)のオン/オフもここで確認できる。

シナプティクス製多機能ドライバが導入済みで、2本の指で画面の拡大/縮小が行えるピンチ機能(写真=左)や、パッド上で指をすばやくなぞるとカーソルが移動したままになるモーメンタム機能が設定できる(写真=中央)。LaVieシリーズでおなじみとなる、PCの電源オフ時にiPodなどの機器に充電可能なパワーオフUSB充電機能をサポートする(写真=右)

前面左右に1ワット+1ワットのステレオスピーカーと各種インジケータランプを備えている(写真=左)。液晶ディスプレイはラッチレスで、磁石の力を使って本体と密着する。背面はバッテリーのみだ(写真=右)

左側面にはアナログRGB出力と排気口、パワーオフUSB充電機能に対応したUSB 2.0、マイク、ヘッドフォン(ライン出力兼用)端子が並ぶ(写真=左)。右側面はSDHC対応SDメモリーカードスロット、2基のUSB 2.0、100BASE-TX対応の有線LAN、DC入力端子がある(写真=右)

 本機のデザインは、黒を基調に白いキーボードを採用したツートーン構成だ。NECのロゴは控えめで、シンプルなデザインにマッチしている。ボディはあえて角を落とさないスクエアデザインで、直方体に近い。そのため、使わない時に本機を本棚に立てておく、といった使い方には適していそうだ。ただ、このデザインのせいか、比較的手の大きな筆者が本機をヒザの上に載せて使うと、本体のエッジが手のひらにくいこむ印象を受けた。

 もう1つ試作機で気になったのは、冷却ファンの風切り音だ。ファンは起動直後から回り出すが、風切り音が比較的大きい。最終製品ではないので、変更される可能性もあるのだが、量販店の店頭では周囲のノイズもあり確認しにくい項目だけに、少し気になった。このあたりは、別途製品版を入手して再度試してみたい。

テーマカラーはパールブラックで、液晶ディスプレイの天面は光沢塗装が施されている(写真=左)。底面にはメモリなどにアクセスするカバーは用意されない(写真=中央)。バッテリーは容量が11.1ボルト 2400mAhで、カタログ値の駆動時間は約2.6時間だ。ACアダプタはサイズが49(幅)×113(奥行き)×29(高さ)ミリあり、重量は約350グラムと小さくはない。LaVie Lightシリーズ専用のロゴをあしらった壁紙がプリインストールされている(写真=右)

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