これでGeForce 9600 GTと戦える──「Radeon HD 4830」は2万円GPU戦線を突破できるかイマドキのイタモノ(1/2 ページ)

» 2008年10月23日 13時01分 公開
[長浜和也,ITmedia]

構成トランジスタ数は同じでシェーダユニットは控えめ

 Radeon HD 4830は、Radeon HD 4000シリーズのハイエンドラインアップとなるRadeon HD 4800シリーズの下位クラスのGPUとして登場する。AMD製GPUの戦闘序列としては、Radeon HD 4850の下、Radeon HD 4670の上ということになる。

 AMDが明らかにしているRadeon HD 4830のスペック資料によると、55ナノメートルプロセスルールを採用し、構成トランジスタが9億5600万個と、その数は上位モデルのRadeon HD 4870、ならびに同 4850と同じだが、実装するストリームプロセッサ(統合型シェーダユニット)の数は640個と上位2モデルの800個から減らされている。

 コアクロックは575MHz、メモリクロックは900MHz(DDRデータ転送レートで1.8Gbps)。サポートするグラフィックスメモリはGDDR3で、AMDの資料では最大搭載容量が512Mバイトとある。サポートする機能としてはDirectX 10.1の対応、Shader Model 4.1の対応、4-GPU(4枚のグラフィックスカード)によるCrossFireXの構築など、このあたりは上位モデルのRadeon HD 4870、同4850に匹敵する。

 ビデオプロセッシングも、Radeon HD 4000番台で導入された第二世代のUnified Video Decoder 2(UVD 2)を実装している。H.264、VC-1、MPEG-2のハードウェアデコートアクセラレーションをサポートするため、Blu-ray Discに収録されるHDコンテンツの再生に十分対応できる。出力インタフェースは、HDMIをサポートし、7.1チャネルサラウンド出力にも対応する。

  Radeon HD 4830 Radeon HD 4850 Radeon HD 4670 GeForce 9600 GT
プロセッサ数 640 800 320 64
コアクロック 575MHz 625MHz 750MHz 650MHz
シェーダクロック - - 1625MHz
グラフィックスメモリ GDDR3 GDDR3 GDDR3/DDR3 GDDR3
メモリバス幅 256ビット 256ビット 128ビット 256ビット
メモリクロック 900MHz 1000MHz 900MHz 900MHz
メモリ容量 512MB 512MB 512MB 512MB
PCI Express Gen2 Gen2 Gen2 Gen2
電源ピン 6ピン 6ピン 6ピン
ビデオプロセッサ AVIVO HD UVD2 AVIVO HD UVD2 AVIVO HD UVD2 PureVideo HD VP2

 コアクロック、メモリクロックをほかのRadeon HD 4000シリーズと比較すると、コアクロックはRadeon HD 4850、Radeon HD 4670を下回る値で設定されている。ストリームプロセッサは4800シリーズの800個から減らされているが、それでも4670の320個よりははるかに多い。メモリ幅は256ビット確保されており、対応するグラフィックスメモリは4850と同じGDDR3までだ。

 コアクロック、メモリクロックを4600シリーズより下げているのは、消費電力を抑えるためとも考えられるが、グラフィックスカードレベルの最大消費電力は110ワットとRadeon HD 4850と同じだ。AMDが評価用として配布しているリファレンスカードには、Radeon HD 4850のリファレンスでも採用されていたシングルスロット厚のクーラーユニットが搭載され、外部電源として6ピンコネクタが1つ用意されている。

Radeon HD 4830を搭載したAMDのリファレンスカード(写真=左)。どこかで見たことがあると思ったら、Radeon HD 4850を搭載したASUSの「EAH4850/HTDI/512M R2」を並べると、(一部のチップで微妙に配置が異なるが)ほぼ同じレイアウトになっている(写真=右)。搭載しているクーラーユニットも同じものだ

到着したのが掲載直前だったため、評価作業では使っていないが、SAPPHIREの「HD4830 512M GDDR3 PCI-E DUAL DVI-I/TVO」が入手できたので紹介しておこう。カードのサイズはリファレンスが235ミリであるのに対して210ミリと短い。ただし、オリジナルのクーラーユニットは、リファレンスの14ミリに対して33ミリと高く隣接するPCI Expressスロットに干渉する

Radeon HD 4830は戦線の穴を埋める待望の増援

 従来のRadoen HD 4000シリーズは、最上位のRadeon HD 4870 X2から、ハイエンドシリーズのRadeon HD 4870、Radeon HD 4850、そしてミドルレンジシリーズのRadeon HD 4670、Radeon HD 4650、そして先日発表されたバリュークラスのRadeon HD 4550、Radeon HD 4350とラインアップが構成されていたが、ハイエンドシリーズとミドルレンジシリーズの境界となっていたRadeon HD 4850とRadeon HD 4670との間で、実売価格、ならびに実際のパフォーマンスが大きく開いていた。

 この「すき間」にNVIDIAのメインストリームラインアップの主力となっているGeForce 9600 GTが存在していたのだが、これに対抗できるGPUがRadeonラインアップに存在しなかったことになる。すでに掲載したRadeon HD 4670のレビューでも紹介したように、Radeon HD 4670は、GeForce 9600 GTにベンチマークテストの結果で明らかな差をつけられている。しかし、Radeon HD 4850の実売価格は2万円台半ばとやや上のレンジになる。

 この「戦線の穴」を埋めて、GeForce 9600 GTクラスと真っ向から勝負するために登場したのがRadeon HD 4830ということになる。ハイエンドシリーズを示す「4800」番台のモデルだが、実売価格は1万円台後半から2万円前後と、価格帯でNVIDIAのミドルレンジクラスGeForce 9600GTと完全に競合する。

AMDが考えるRadoenとGeForceのラインアップ構成と競合関係。GeForce 9600 GT(資料にある“9800 GT”は“8800 GT”の65ナノプロセスルール版)に対抗できるGPUがようやくAMD陣営に登場したことになる

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