Radeon HD 4830は、Radeon HD 4000シリーズのハイエンドラインアップとなるRadeon HD 4800シリーズの下位クラスのGPUとして登場する。AMD製GPUの戦闘序列としては、Radeon HD 4850の下、Radeon HD 4670の上ということになる。
AMDが明らかにしているRadeon HD 4830のスペック資料によると、55ナノメートルプロセスルールを採用し、構成トランジスタが9億5600万個と、その数は上位モデルのRadeon HD 4870、ならびに同 4850と同じだが、実装するストリームプロセッサ(統合型シェーダユニット)の数は640個と上位2モデルの800個から減らされている。
コアクロックは575MHz、メモリクロックは900MHz(DDRデータ転送レートで1.8Gbps)。サポートするグラフィックスメモリはGDDR3で、AMDの資料では最大搭載容量が512Mバイトとある。サポートする機能としてはDirectX 10.1の対応、Shader Model 4.1の対応、4-GPU(4枚のグラフィックスカード)によるCrossFireXの構築など、このあたりは上位モデルのRadeon HD 4870、同4850に匹敵する。
ビデオプロセッシングも、Radeon HD 4000番台で導入された第二世代のUnified Video Decoder 2(UVD 2)を実装している。H.264、VC-1、MPEG-2のハードウェアデコートアクセラレーションをサポートするため、Blu-ray Discに収録されるHDコンテンツの再生に十分対応できる。出力インタフェースは、HDMIをサポートし、7.1チャネルサラウンド出力にも対応する。
Radeon HD 4830 | Radeon HD 4850 | Radeon HD 4670 | GeForce 9600 GT | |
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プロセッサ数 | 640 | 800 | 320 | 64 |
コアクロック | 575MHz | 625MHz | 750MHz | 650MHz |
シェーダクロック | - | - | − | 1625MHz |
グラフィックスメモリ | GDDR3 | GDDR3 | GDDR3/DDR3 | GDDR3 |
メモリバス幅 | 256ビット | 256ビット | 128ビット | 256ビット |
メモリクロック | 900MHz | 1000MHz | 900MHz | 900MHz |
メモリ容量 | 512MB | 512MB | 512MB | 512MB |
PCI Express | Gen2 | Gen2 | Gen2 | Gen2 |
電源ピン | 6ピン | 6ピン | − | 6ピン |
ビデオプロセッサ | AVIVO HD UVD2 | AVIVO HD UVD2 | AVIVO HD UVD2 | PureVideo HD VP2 |
コアクロック、メモリクロックをほかのRadeon HD 4000シリーズと比較すると、コアクロックはRadeon HD 4850、Radeon HD 4670を下回る値で設定されている。ストリームプロセッサは4800シリーズの800個から減らされているが、それでも4670の320個よりははるかに多い。メモリ幅は256ビット確保されており、対応するグラフィックスメモリは4850と同じGDDR3までだ。
コアクロック、メモリクロックを4600シリーズより下げているのは、消費電力を抑えるためとも考えられるが、グラフィックスカードレベルの最大消費電力は110ワットとRadeon HD 4850と同じだ。AMDが評価用として配布しているリファレンスカードには、Radeon HD 4850のリファレンスでも採用されていたシングルスロット厚のクーラーユニットが搭載され、外部電源として6ピンコネクタが1つ用意されている。
従来のRadoen HD 4000シリーズは、最上位のRadeon HD 4870 X2から、ハイエンドシリーズのRadeon HD 4870、Radeon HD 4850、そしてミドルレンジシリーズのRadeon HD 4670、Radeon HD 4650、そして先日発表されたバリュークラスのRadeon HD 4550、Radeon HD 4350とラインアップが構成されていたが、ハイエンドシリーズとミドルレンジシリーズの境界となっていたRadeon HD 4850とRadeon HD 4670との間で、実売価格、ならびに実際のパフォーマンスが大きく開いていた。
この「すき間」にNVIDIAのメインストリームラインアップの主力となっているGeForce 9600 GTが存在していたのだが、これに対抗できるGPUがRadeonラインアップに存在しなかったことになる。すでに掲載したRadeon HD 4670のレビューでも紹介したように、Radeon HD 4670は、GeForce 9600 GTにベンチマークテストの結果で明らかな差をつけられている。しかし、Radeon HD 4850の実売価格は2万円台半ばとやや上のレンジになる。
この「戦線の穴」を埋めて、GeForce 9600 GTクラスと真っ向から勝負するために登場したのがRadeon HD 4830ということになる。ハイエンドシリーズを示す「4800」番台のモデルだが、実売価格は1万円台後半から2万円前後と、価格帯でNVIDIAのミドルレンジクラスGeForce 9600GTと完全に競合する。
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