屋外でもくっきりはっきり──ThinkPad X200 Tabletの液晶ディスプレイ技術を紹介(1/2 ページ)

» 2008年10月23日 16時30分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]

 今回のテクノロジーブリーフィングに参加した大和事業所の面々は、ノートブック開発研究所 第一システム技術 阿部直樹氏、ノートブック開発研究所 サブシステム技術 表示技術 土橋守幸氏、TVTノートブック ソフトウェア開発 第一TVT開発 森英俊氏。それぞれの分野で技術説明を行った。

ThinkPad X200 Tablet。現在企業向けモデルが発表されているコンバーチブル型のタブレットPCだ。今回、解説を行ったレノボ・ジャパンのノートブック開発研究所 第一システム技術 阿部直樹氏、同サブシステム技術 表示技術 土橋守幸氏、TVTノートブック ソフトウェア開発 第一TVT開発 森英俊氏(写真=右の左から順番に)

凹凸ピッチの最適化が低反射の決め手

 阿部氏はThinkPadにおけるタブレットPCの歴史を説明した。同氏によると、1992年の10月に発表された「PS/55 T22sx」までさかのぼることができるそうだ。これは実質的に初代ThinkPadとなる製品で、そこから「ThinkPad 710T」「ThinkPad 730T」とタブレットの機能が受け継がれていく。2001年から2005年にかけてタブレットPCの系譜が途切れたものの、Windows XP Tablet PC Editionが発売されたタイミングに合わせて、「ThinkPad X41 Tablet」が2005年に発表され、現在まで受け継がれている。ThinkPad X41 Tabletでコンバーチブル型が採用された理由として、阿部氏は「普通のノートPCとしても使いたい」というユーザーのニーズに対応したと説明している。

ThinkPad Tablet PCの系譜(写真=左)。ThinkPadシリーズはタブレットPCとしても古参だ。ThinkPad Tablet PCのなかでも特異なモデル「TransNote」の登場に思わずニヤリとする。ThinkPadの技術力をアピールするために開発された製品だったという(写真=中)。2005年から再開したThinkPad Tablet PCシリーズでは、「普通のノートPCとしても使いたい」という要求からコンバーチブル型を採用した(写真=右)

 土橋氏による液晶パネルの低反射技術の解説では、タブレットPCが画面をペン、あるいは指で押す操作のために液晶パネル面を保護するべくガラス層を必要とした。これが外光を反射する要因になるが、明るい屋外でもタブレットPCを利用するためには、パネルの反射率を極限まで下げなければならないという課題が提示された。

 この問題を解決するために用いられている技術として、土橋氏は、デジタイザモデルでは保護ガラスへの映り込み防止処理(アンチグレア)や低反射フィルム(アンチリフレクション)を施し、液晶パネル側にも映り込み防止フィルム(アンチグレア)を合わせていると説明した。ただし、アンチグレアは表面に凹凸処理を施す技術であるため、この凹凸が大きすぎると拡散反射が大きくなって画面の“ぼやけ”やコントラストの低下が起こる(スパークリング現象)。これを解決するために、ThinkPadでは凹凸のピッチをより高精細にするだけでなく、反射とのバランスがとれた最適値を求めている。このおかげで、デジタイザモデルでの反射率は7%に抑えられているという。

ThinkPad Tablet PCシリーズにおける屋外視認性、輝度の進化(写真=左)。反射率を抑えるためには、アンチグレア、アンチリフレクションの加減が重要になる。レノボでは凹凸ピッチの最適値を探し出すことで問題を解決し、画面のぼやけとコントラストの低下を防いでいる(写真=右)

偏光板の組み合わせで反射光だけを遮断

 同じThinkPad X200 Tabletのモデルでも、デジタイザモデルとタッチ&デジタイザモデルでは使われている技術に違いがある。タッチ&デジタイザモデルでは、デジタイザモデルで導入されている保護ガラスに代わって、タッチパネルのためのガラス層とタッチパネルのフィルムが積層されるため反射層も増える。こうなると各反射層で発生するそれぞれの反射を抑えることができなくなるそうだ。そこで用いられているのが「円偏光低反射タッチパネル」だ。円偏光低反射タッチパネルによってThinkPad X200 Tabletは、通常のThinkPadよりもさらに低反射となる反射率1.6%を実現したとされる。

 円偏光低反射タッチパネルでは、入射した外光はパネル表面の直線偏光板によって一定方向のみの成分が通過し、次に「4分のλ板」を通過することで時計回りの円偏光となる。その光がガラス層で反射されると反時計回りの円偏光となり、その反射光が再度「4分のλ板」を通過すると、入射時より位相が90度ずれた状態となるため、偏光板の外に飛び出すことができなくなる。表面の凹凸で反射光を拡散するのではなく、反射した光をパネル内部の偏光板で遮断する仕組みというわけだ。一方、液晶ディスプレイmから発せられた光は2枚の4分のλ板を通過することで位相差が180度となるため表面の偏光板で遮られることなくパネル外へと放出されてユーザーの目に届く。

 円偏光の技術自体はカメラのフィルターなどで一般的なものなので、現在では同様の技術を導入した他社製品も存在するが、土橋氏は ThinkPad X60/同X61 Tabletなどに導入することで、最初にタブレットPCに採用したのが大和事業所であることをアピールした。

デジタイザモデルとタッチ&デジタイザモデルでは用いられる技術が異なる(写真=左)。円偏光低反射タッチパネルにおける外光の入射と反射、液晶ディスプレイからの光の透過を示す(写真=右)。

左が廉価な製品で用いられるタッチパネル、右が円偏光低反射タッチパネル(写真=左)。サンプルの拡大写真(写真=右)。室内照明下でのコントラストも高く、多くの製品で採用してもらいたいが、現状ではコストが高いという側面もある

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