セキュリティソフトベンダー御三家の1つであるシマンテックの最新セキュリティスイート「ノートンインターネットセキュリティ2009」(以下、NIS2009)が発売された。
ノートンと言えば重厚長大というイメージが強い。全世界にセキュリティセンターを置き、非常に安心感の高いサービスだと認識されてはいるものの、「メモリの消費量が多い」「重たい」という印象があるのもまた事実だ。
一方、数年前からセキュリティソフトウェア業界は、海外からの新規参入が相次ぎ、さまざまな特色を打ち出した百花繚乱(ひゃっかりょうらん)の時代に突入している。年会費無料をうたうものもあれば、複数のスキャンエンジンを使用して検出率の高さを誇るものもある。その中でも近年、重視される傾向にあるのが「システムへの負荷の軽さ、メモリ使用量の少なさ」だ。
セキュリティソフトウェアは常にバックグラウンドで実行されているため、いわば「最も利用時間の長いアプリケーション」でもある。システムに対する影響が大きければすべての処理が遅くなってしまう。極端に言えば、CPUのクロックアップやメモリの増設よりも、使用しているセキュリティソフトを乗り換えるほうが効果的な場合さえある。
シマンテックのノートンシリーズは、長い歴史を誇る安定性と引き替えに、大きな刷新が難しいという背景もあったと思われる。そういった印象を一気に変えてしまったのが今回の「NIS2009」だ。
NIS2009は「性能にまったく影響を与えない“ゼロインパクト”」を目指して設計されているという。もちろん、プログラムである以上、完全なゼロインパクトは不可能なのだが、ユーザーの体感速度の大きな向上を図っているのが特徴だ。
この大きな変化は、インストールのときからはっきりと分かる。例えば、NIS2009では、マウスクリックやプロダクトキーの入力などを除けば、わずか1分でインストールが完了する。
とはいうものの、インストールはたいていの場合、最初の1回だけしか行われないので、PCに詳しくない人に自力でインストールしてもらわなければならないときなどは有力な選択肢だが、それなりにスキルのある人にとってインストールの簡便さはさほど重視することではない。
それよりも評価すべきはインストール後のパフォーマンスだ。NIS2009のメイン画面はずいぶんとすっきりした印象があるが、まずはメイン画面の左にあるパフォーマンスモニタに注目してもらいたい。
これはシステム全体のCPU使用率、およびそのうちNIS2009が占める使用率をリアルタイムで表示したものだ。セキュリティソフトウェアのみならず、いまだかつてこのようなパフォーマンスモニタをメイン画面に据えたソフトウェアはなかったのではないだろうか。NIS2009におけるシマンテックの自信を感じさせる。
「CPU使用率」をクリックするとタスクマネージャで表示されるような時系列のパフォーマンスモニタが表示される。左側がCPU使用率、右側がメモリ使用量を示しており、それぞれ黄色い部分がNIS2009が使用しているリソースを表している。
また、画面下部にあるのはスマートスケジューラの管理ジョブだ。スマートスケジューラはアイドルタイムになると処理を行うというもので、アイドル状態と判断するためのタイムアウト時間は1分〜30分まで指定できる。ここには9つのジョブが表示されているが、「アイドル時に実行」というのは「当該バックグランドジョブがアイドル時に実行されたかどうか」を表し、「当該バックグラウンドジョブをアイドル時に実行するかどうか」の設定ではない。基本的にここに表示されているジョブは一部を除いてすべてアイドル時に行われる(あるいはアイドル時「にも」行われる)ことが前提となっているジョブだ。
バックグラウンドジョブのうち、最も負荷の高いものがシステムの完全アイドルスキャンだ。アイドルスキャンが開始されるとNIS2009の負荷がぐっとあがる。そのため、PCを放置し、スクリーンセーバが起動するころになるとケースファンの回転数があがるという不思議な状態になる。
ただし、ノートPCのバッテリー動作時にはスマートスケジューラの自動処理は行われないので、むやみにノートPCのバッテリーを消費することはない。完全スキャンは定時スケジュールで行うこともできるが、アイドルスキャンとの併用はできない。アイドルスキャンを有効にしたまま、「一定期間完全スキャンがされていなければ定時スケジュールに従ってスキャンを行う」という設定があればより有用だっただろう。なお、アイドルスキャンの実行タイミングは、週ごと/月ごと/四半期ごとから選択できる。
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