おそらくLinuxをプリインストールしたマシン(本機に限らず)での最大の問題は、何か困ったことが起きた場合に、それを尋ねられる人が周囲に少ない、ということである。インターネットで漠然と検索しても、膨大な情報がヒットし過ぎて、どれが自分のマシン、あるいはソフトウェア環境(ディストリビューションやGUIの違いも含め)に適合するのか分かりにくい。今回試用したマシンにはマニュアル類が添付されていなかったため、どれくらいのガイダンスが提供されるのかは分からないが、一般の人はプリインストールのソフトウェアのデフォルト設定でできなければ、その時点であきらめてしまうだろう。ただ、Netbookのコンセプトを考えれば、提供されたものをデフォルト設定のまま使う、と割り切って使うのもアリなのではないかと思う。
そういう意味では、かえってWindows上の特定のアプリケーションに慣れ親しんでいないユーザーのほうが、UbuntuをプリインストールしたInspiron Mini 9に適しているのかもしれない。例えば筆者の場合、15年使い続けている「秀丸エディタ」、あるいはそれに相当するエディタがない、ということが理由で実際に買うとなればWindows XPモデルを選んでしまう。viは使えるけれど、viで原稿は書きたくない。同じことがGEDITにもあてはまる。日本語入力やエディタのキーアサインは、「手癖」のようなもので、一度染みついてしまうと簡単に変えることはできない。このUbuntuモデルは、そういう習慣のない人のほうが適しているのだろう。
もう1つは、Windows XPモデルとUbuntu Linuxモデルの価格差だ。10月下旬に出荷が始まったというUbuntuモデルだが、原稿執筆時のパッケージ価格は9月5日の発表時と同じ4万9980円で、8GバイトのSSDを搭載したWindows XPモデル(プレミアムパッケージ)との価格差は5000円しかない。この価格差には4GバイトのSSDと8GバイトのSSDの違いが含まれており、OSの違いによる価格差はこれより小さくなる。
5000円の違いで、周囲に助けてくれるユーザーがあまりいない、よく知らないOSにするか、おそらくは使ったことのあるWindowsにするかといわれれば、多くの人はWindowsモデルを選ぶに違いない。逆にUbuntu Linuxがプリインストールされた本機に適しているのは、すでにLinuxを使っていて、NetbookもぜひLinuxベースでというユーザーを別にすると、図書館などの公共機関、あるいは企業の受付などに設置するマシンというところだろうか。こうした用途には、ファンレスデザインも含めて、本機がアピールすると思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.