SSDの性能は「LDE」「vRPM」で見極める

» 2008年12月04日 19時14分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 サンディスクは、SSDの性能を示す指標として、「Longterm Data Endurance」(LDE)と「virtualRPM」(vRPM)を提唱している。2008年7月に公開されたLDEと11月に公開されたvRPMは、10月にJEDECに対してホワイトペーバーを提出するなど、SSDメーカーの標準指標となるように働きかけており、早くもサムスンが自社製品でvRPMを採用するなど、業界でも標準指標として扱う動きを見せている。この性能指標の内容について、米SanDisk ソリッドステートデバイスビジネスユニットシニアディレクターのドン・バーネットソン氏に聞いた。

「LDE」で分かる「パワーユーザーが10年使えるSSD」

 SSDの記憶媒体であるNAND型フラッシュメモリのデータ保存回数は有限であり、これはSSDの不安材料として取り上げられることも多い。サンディスクは、SSDの書き込み回数を測定する指標としてLDEを提示しているが、これは、「ユーザーが実際にPCを利用する典型的なパターン」を再現してSSDにWriteテストを行うことで、SSDのライフサイクル(製品寿命)のなかでデータが保存できる容量を数値として示すものだ。LDEの計測で行われているテスト内容と値の算出方法はSSDのOEMベンダーなどに提供されているので、OEMベンダーがLDEの基準に従って独自に測定することも可能になっている。

 バーネットソン氏は、パワーユーザーは1日あたり20Gバイトのデータを保存することがLDEの開発過程で分かったとしているが(ちなみに、ビジネスユーザーは6Gバイト、ノートPCユーザーは2Gバイトのデータを1日に保存しているという)、このユーザーが「LDE=80Tバイト」のSSDを使った場合、製品寿命は4000日にも及ぶとしている。バーネットソン氏はLDEをタイヤの製品寿命に例えて説明しているが、「自家用車に使われるタイヤに、レーシングカーと同じような常に最高速度で走ることを求めるとその寿命は極端に短くなる。しかし、自家用車が走るノーマルな速度なら、タイヤの寿命は長く考えることできる」とLDEの値がユーザーの現実的な利用方法に即した環境で測定して求められていることを訴えている。

米SanDisk ソリッドステートデバイスビジネスユニットシニアディレクターのドン・バーネットソン氏は、LDEの考えとしてタイヤの耐久性を例に挙げて、「5万キロ走れるタイヤも若者が無茶をすると寿命は短くなる。購入するときに重要なのは普通に乗ってどれだけ持つかだ」と述べている

2008年でHDD相当、2009年でHDDを超える「vRPM」

 一方、vRPMはSSDの性能を示す指標として提唱された。従来、製品リリースではデータのRead速度とWrite速度の理想値を表示するしかなく、せいぜい「SCLタイプはWrite処理が早く、MLCタイプはWrite処理が遅い」程度の違いしか示すことができなかった。SSDの購入を考えているユーザーが性能の参考にできるように提案されているのがvRPMだ。バーネットソン氏は、HDDの性能がシーク速度より主にプラッタの回転速度で決まることを説明した上で、SSDの性能指標としてもHDDの回転数に置き換えた「仮想的な回転数」を値として示すことでユーザーにSSDの性能を訴求すると説明する。

 SSDでも実際の利用状況に合わせたデータのReadとWriteの性能を数式で求めて値を示すことになるが、バーネットソン氏は、そのようにして求められたSSDのvRPMが2007年までの製品で1000vRPM程度であったのが2008年には1万vRPMに、そして2009年の製品では4万vRPMと、急激に向上すると述べる。

 これは、SSDのRead性能が2009年の製品では2008年の製品の2倍に、そして、Write性能が4倍へと一気に向上するためだ。もともと、SSDはランダムアクセスにおけるWrite性能が低いとされていたが、それを一気に4倍も向上させることが可能になったのが、サンディスクが開発した「ExtremeFFS」という技術だ。

サンディスクは、ReadとWriteで大きく異なるSSDの性能を50:50のウェイトで計算することで全般的な指数としている。vRPMはその値に50を乗じたもので、2008年の製品で1万vRPMとHDD並みの値を出すようになった

「ExtremeFFS」で苦手の書き込みを克服した

 SSDでは、データを8Kバイト程度のセルで管理し、このセルにデータを保存する。データを保存したいセルに以前保存したデータが存在する場合は、そのデータを消去してから新しいデータを記録しなければならないが、SSDでは64セル(=512Kバイト)を1つのブロックとしてまとめており、データの消去は1ブロック単位で行うことになっている。1セル以下のデータサイズの書き込みでも64セル分のデータを消去しなければならず、これが、SSDでWrite処理が遅くなる理由とされていた。

 ExtremeFFSでは、データを保存したセルは1セル単位で「無効なセル」と認識され、その1セル分の「スペアのセル」がSSDの別な場所に用意される。この処理はSSD内部で完結しており、OSといった「外の世界」からは見えなくなっているため、システムは「無効なセル」や「スペアのセル」を区別することなくSSDに対してデータを記録でき、SSD内部では1セル単位の処理でデータの保存が可能になる。このようにWrite処理をするセルの数が1ブロック分から1セル単位で行えるようになったことでSSDの書き込み速度が飛躍的に向上するとバーネットソン氏は説明している。

 なお、サンディスクは、2008年の初頭に(当時は)高価なSSDの代わりにHDDと組み合わせて低価格のノートPCで使うことを想定していた「Vaulter Disk」を発表していたが、このプロジェクトについては、Netbookへの搭載などでSSDの価格が急速に安くなっている現状を踏まえて中止されたことも、バーネットソン氏は明らかにした。

SSDでは、データのWriteは1セル単位であってもデータ消去を伴なうときは64セルの1ブロック単位で行わなければならない。ExtremeFFSでは、消去を必要とする書き込みでも1セル単位で扱うことでWrite処理の速度を飛躍的に向上させた

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