「カラー静物/グラデーション/カラーパッチ」に続いて、「カラー人物」と「モノクロ風景」の出力品質を見比べる。
3パターンの画像データを印刷したところ、全体的な傾向としてはトーンカーブのS字補正が目立った。つまり、色濃くメリハリの効いた補正が目立つ。複合機はホームユースが主体なだけに、撮影したままフォトレタッチせずに印刷するケースが多いと思われる。となれば、プリンタ側での強めの自動補正をかけるのは当然といえるだろう。
個人的には、極端にいじり過ぎた絵よりも、オリジナルの画像データのトーンをなるべく保ちつつ、適度にメリハリも与えたMP980をはじめとしたPIXUS MP系の絵が好みなのだが、異端となるのかもしれない。MP980はグレーインクの搭載が効いており、モノクロ印刷のグレーバランスもよい。
とはいえ、エプソン機も「Adobe RGB」モードや「EPSON基準色」に設定して印刷すれば、比較的忠実に色やトーンが再現されるので、印刷する写真に応じて試してほしい。日本HPにしても、「Real Life Technology」(RLT)を切るか、ICCプロファイルやプリンタドライバの色変換モードを使用すると、同じプリンタとは思えないほど忠実な描写をしてくれる。蛇足を承知で付け足すならば、最低限フォーカスと露出があっている撮影データはRLTを切ったほうが良好な結果が得られるように思った。
複合機の写真補正機能は年々進化しているが、今年もエプソンの「オートフォトファイン!EX」と、キヤノンの「自動写真補正」に新たな要素が取り込まれた。
まずはオートフォトファイン!EXだが、こちらは逆光写真における補正が、より自然な仕上がりになるように改良された。着目したのは人物と背景の明度差だという。従来は人物が暗すぎる場合に補正を行うと、背景が引きずられて白飛びしてしまった。これを解消するために今年は覆い焼きを行い、人物も背景もバランスよく仕上げるようにしている。
一方、キヤノンの自動写真補正には赤目補正が追加された。機能の追加はこれだけだが、今回は自動写真補正を利用できるモードを拡張しており、PCからの印刷だけでなく、ダイレクトプリント時やコピーモードからでも利用可能になった。このため、写真の焼き増しや手書きナビ、フィルムプリント(MP980のみ)などでも制約を受けずに利用できる。
昨年モデルの写真補正機能の検証記事はこちら。
コピー品質の検証については、「カラー静物/グラデーション/カラーパッチ」の印刷サンプルを標準コピーと高速コピーの2モードで出力して見比べる。普通紙はインクの許容量が少ないと思われるので、用紙のたわみにも着目してみた。
モノクロコピーも使用頻度は高いだろうが、それだけにどの製品も品質が高く、ハズレがないので割愛した。実のところ、カラーコピーでもハズレはないのだが、各機で特色が異なっているので、じっくり見ていこう。
標準モードと高速モードの2つの設定でカラーコピーを行った理由は、高速モードの出力が実用に耐えるかどうか判断するためだが、おしなべて標準モードとの画質差は大きかった。速度の違いはさほどないので、素直に標準モードを使用するのがベストだ。
結果を見ると、顔料ブラックインクを搭載した日本HPのC6380が優秀だった。新型プリントエンジンのおかげというよりは、ノウハウの蓄積が大きいのだろう。写真用紙への印刷では色とエッジが目立ち過ぎたのだが、普通紙ではこれがうまく働いている印象だ。同じく顔料ブラックインクを採用したキヤノン機も普通紙でシャープな黒が得られる。
染料6色インクのエプソン機は専用紙への写真印刷が得意な半面、普通紙へのカラーコピーや文書印刷では黒の締まりが見劣りする。ただ、EP-901FとEP-801Aはコピー原稿内の情報をイメージとテキストに分類し、それぞれ最適な自動処理を行う「領域判定コピー」技術が新搭載され、コピー品質が改善された点は触れておく。
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