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最終回 2008年末のプリンタはどれを選ぶべきか?複合機08-09年モデル徹底検証(1/3 ページ)

» 2008年12月18日 16時20分 公開
[榊信康,ITmedia]

最新複合機7モデルの検証を終えて

 過去4回の記事では、2008年末の最新インクジェット複合機から注目モデル7台を集めて、さまざまな角度から比較・検証を行ってきた。これまでの記事内容と比較・検証してきた7モデルについては、以下を参照してほしい。特集の最終回では、これまでの検証結果を総括し、7台の中からおすすめのモデルを選び出したい。

本特集で比較・検証する複合機7モデル
製品名 メーカー 液晶モニタ インク構成 スキャナ 実売価格
EP-901F エプソン 3.5型 染料6色(シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラック) 4800×4800dpi(CIS) 4万円台前半
EP-801A エプソン 2.5型 染料6色(シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラック) 2400×4800dpi(CIS) 2万円前後
PM-A840S エプソン 2.5型 染料6色(シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラック) 1200×2400dpi(CIS) 2万円弱
PIXUS MP980 キヤノン 3.5型 染料5色(シアン、マゼンタ、イエロー、グレー、ブラック)+顔料1色(ブラック) 4800×9600dpi(CCD) 3万円前後
PIXUS MP630 キヤノン 2.5型 染料4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)+顔料1色(ブラック) 4800×9600dpi(CIS) 2万円台前半
PIXUS MP620 キヤノン 2.5型 染料4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)+顔料1色(ブラック) 2400×4800dpi(CIS) 2万円台後半
HP Photosmart C6380 All-in-One 日本HP 2.4型 染料4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)+顔料1色(ブラック) 4800×9600dpi(CIS) 2万台半ば

動作時の騒音

 さて、まとめに入る前に過去4回の記事で触れられなかった2つの要素について、簡単に付け加えておきたい。それは動作時の騒音とランニングコストだ。

PIXUS MPシリーズのプリンタドライバは動作音を抑えるサイレントモード(サイレント設定)を搭載する

 動作時の騒音はPIXUS MPシリーズが比較的小さいが、印刷中はどの製品も騒がしいことに変わりはない。強いていうならば、PM-A840SとC6380は電源投入時の初期化に時間がかかるため、使用前に騒音を聞き続けなくてはならない時間が長かった。

 騒音に関してはもう1つ、EP-901FのADFがかなり大きな動作音を発するのは気になった。EP-901FのADFは便利なのだが、この動作音のせいで深夜など静かに作業したい場合に利用しにくい印象だ。

 プリンタ選びで静粛性を優先するという人は少ないだろうが、こうした人はサイレントモードを搭載したPIXUS MPシリーズがおすすめだ。ペーパーフィード時さえも音は控えめになり、しかも低音なため、印刷していることを忘れてしまうほどだ。指定した時間内のみサイレントモードを自動適用する設定も可能なので、昼間は通常モード、夜間や早朝はサイレントモードといった使い分けが手軽に行えるのもいい。

インク/用紙合計コスト

 これまでに語ってきたように、今年は各社ともプリントエンジンやインクを変更してきた。これにより、印刷速度や印刷品質の向上が見られる一方、キヤノンのようにボディの小型化にともなってインクタンクの形状まで小さくなったメーカーもある。インクタンクのサイズがそのままインク容量とはならないだろうが、やはりランニングコストは気にかかるところだ(各モデルのインク構成はこちらを参照)。

 そこで、2008年末モデルと2007年末モデルにおけるL判写真印刷時のインク+用紙合計コストを下表にまとめてみた。各社が測定に使用した用紙は純正写真用紙の主力製品で、最もコストパフォーマンスが高い200枚もしくは400枚のパックだ。また、日本HPはインクと用紙がセットになったパックを使用している。

 各社が測定に使用した画像データは、エプソンとキヤノンがJEITAの印刷コスト表示ガイドラインに準拠した写真イールドチャート(JBMS-78-2006)で、日本HPが独自の画像データだ。各社が完全に条件をそろえた状態で測定したインク+用紙コストではないため、厳密なメーカー間の比較にはならない点は注意してほしい。下表はあくまで昨年のモデルに比べて、コストがどうなったかをチェックするためのものだ。

複合機各モデルのL判印刷インク+用紙合計コスト(2008年末モデル)
モデル名 EP-901F EP-801A PM-A840S MP980 MP630 MP620 C6380
インク/用紙合計コスト 約21.1円 約21.1円 約20.1円 約17.9円 約16.7円 約15.4円 約19.6円
測定に使用した用紙(直販価格) 写真用紙<光沢>L判 400枚(2080円) キヤノン写真用紙・光沢ゴールドL判 400枚(1990円) HPフォトパック・4色178シリーズ アドバンスフォト用紙200枚+インク4色(3927円)
測定に使用したインク(直販価格) 6色(各1050円) 6色(顔料BK980円、それ以外は各890円) 5色(顔料BK980円、それ以外は各890円)
測定に使用した画像データ JBMS-78-2006 JBMS-78-2006 独自データ
複合機各モデルのL判印刷インク+用紙合計コスト(2007年末モデル)
モデル名 PM-T960 PM-A840 MP970 MP610 C6280
インク/用紙合計コスト 約20.1円 約19.8円 約20.2円 約14.5円 約19.5円
測定に使用した用紙(直販価格) 写真用紙<光沢>L判 400枚(2080円) キヤノン写真用紙・光沢ゴールドL判 400枚(1990円) HPフォトパック・4色178シリーズ アドバンスフォト用紙200枚+インク4色(3885円)
測定に使用したインク(直販価格) 6色(各1050円) 7色(顔料BKは1155円、それ以外は各1050円) 5色(顔料BKは1155円、それ以外は各1050円)
測定に使用した画像データ JBMS-78-2006 JBMS-78-2006 独自データ

 ご覧の通り、実に6台の製品でランニングコストが上昇している。特に顕著なのがMP630だ。L判1枚あたりで2.2円も増えている(MP610の約14.5円が優秀すぎたともいえるのだが)。ロープロファイル仕様の新インクカートリッジは小型になったこともあり、価格は各色1000円を切るまで下がっているが、そのぶん交換回数が増えるのは面倒に感じる人も少なくないだろう。

 7モデルの中で唯一ランニングコストが低下しているのはMP980で、1枚あたり2.3円も下がった。これはグレーインクを採用する一方、MP970が採用していたフォトインク2色をなくしたことで、インクの総数が7個から6個に減ったためだ。

 ただ、印刷の内容によってはこの値は大きく変動することは明記しておこう。カラー印刷だけを行っている場合、グレーインクは通常のフォトインク並みの減り方だ。恐らく公称値とは大差のないランニングコストになるだろう。しかし、モノクロ印刷を行うと、途端に消費量は跳ね上がる。MP980をモノクロ印刷主体にしようという人は、コストに関しては多少目をつぶる覚悟が必要だ。また、グレーインクのリザーブは数本用意したほうがよい。

 エプソンの3台は使用するインクが変わっていないものの、新設計のEP-901FとEP-801Aでは1枚あたり約1〜1.3円従来機から上昇している。日本HPのC6380はインクシステムが変わったが、公称のコストは約0.1円上昇とほぼ変わらない。

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