Netbookより「山寨機」に席巻されそうな2008年の中華IT山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2008年12月25日 15時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

中国でもノートPCが一般ユーザーの手に

 2008年を通して中国の各都市の電脳街やIT系の報道に接していると、「さようならタワー型PC」「こんにちはノートPC」という流れを中国でも強く感じるようになってきた。筆者が知る中国人も、その多くがタワー型PCのユーザーであるが、彼らも2台目のPCとしてDVD-Videoが見れる2スピンドルノートPCを購入している。ここで「2スピンドルノートPC」とわざわざ書いたように、筆者が知る限りにおいて、中国人にNetbookが売れてノートPCユーザーが増えたというよりも、所得が向上した一般人が「思い切って買っちゃおう」と踏ん切りがつく段階まで2スピンドルノートPCの本体価格がじわじわと下がったというのが実情に近い。

 ノートPCの値段を下げた功労者は、「神舟」(HASEE)という、中国ではプライスリーダー的なPCメーカーだ。2007年の年末に、2999元(当時の1元15円のレートで約4万5000円)ノートPCを他社に先駆けてリリースして中国のPC事情通を驚かせた神舟は「2008年には1999元(約3万円)ノートPCをリリースする」と発表している。誰もが無理だろうと思っていたが、年初にはVIAプラットフォームのディスプレイ一体型デスクトップPCを1999元(約3万円)で販売しただけでなく、Atomが登場するや、1999元(約3万円)のNetbookをリリースした。神舟が従来の常識を下回る低価格機種をリリースすると、レノボやファウンダーをはじめとした大手中国PCメーカーが追随してきただけに、2009年は中国PCメーカーの多くが1999元、ないしそれに近い価格のノートPCをリリースしてくることだろう。

2007年の年末に登場した2999元ノートPC。これでも2007年には十分インパクトがあった(写真=左)。そして、2008年に神舟から登場した1999元(約3万円)のNetbook(写真=右)

「山寨機」が中国メーカーを襲う

 しかし、2008年の中国ハードウェアを表すキーワードを中国人に聞けば、その多くが「ノートPC」でなく「山寨機」と答えるだろう。山寨機とは、有象無象の工場からダイレクトで販売されるノンブランドの製品のことだ。

 2008年を通して山寨機携帯電話が低所得層を中心に飛ぶように売れて大きな話題となった。山寨機の携帯電話は、メーカー不明をいいことに、iPhoneによく似せたボディデザインや、大手メーカーのロゴやハローキティなどのキャラクターを勝手に拝借したものが多数流通している。中国の国営放送であるCCTVも山寨機携帯電話を取り上げ、工場直売なので税金を支払わないことと、その劇的な低価格攻勢によって、これまで低価格を売りにして海外メーカーと競ってきた中国メーカーが危機状況に追い込まれたことを、問題点として紹介していた。

 山寨機の製品は、ノートPCやデジカメでも登場している。ただ、デジカメについては中国の消費者もまともに撮影できる製品を選ぶので、中国デジカメ市場のほとんどを占めている日本メーカーのシェアを山寨機が奪うまでにはいたっていない。

 しかし、ノートPCは、パーツを組み立てたものならどれでも動くという認識を中国の消費者も持っているため、「DVDドライブはないけど、すごく安いから買っちゃおう」と多くの消費者が思うようになれば、携帯電話のように従来の製品を駆逐してしまう可能性はある。中国の報道によれば、最近1000元ノートPC(現在のレート1元=13円で1万3000円)という驚異的な価格の製品も登場した。神舟の1999元ノートPCのほぼ半分だ。2009年も山寨機な製品が中国の市場をかき回すことは間違いない。

 山寨機が飛躍する一方で、液晶テレビではシャープのAQUOSが人気になるなど、そこそこ裕福な消費者は高価で高品質な日本メーカーの製品に注目するようになった。「なんでもいいから欲しい」という消費者は山寨機に流れ、「いいモノを買いたい」という消費者は日本などの海外メーカーを購入する傾向が強まっている。こうした二極化が進んだ結果、安価なことだけが強みだった中国メーカーは苦しくなったわけだ。

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