──クイックモードの搭載は必要だったのでしょうか
鈴木 Windowsを起動しなくても各種メディアの再生や、Webページのブラウズができるモードですが、パブリックフォルダにあるコンテンツを参照することができるようになっています。もしかしたら、クイックモードだけでいいというユーザーもいるかもしれませんね。想定としては、ちょっと調べものをするようなときに使ってほしいんですが、実際には、スリープからWindowsを復帰させるほうが早いんです。バッテリーの持ちもWindowsのほうが長いです。
──ユーザーとしては、どのあたりをターゲットに考えていますか。
伊藤 30代、40代のビジネスマンがコアですね。男女ともにです。いずれにしても、2台目のPCを購入する人の候補として、あるいは、会社のPCとは別にもう1台、私物のPCを携帯するイメージで選んでもらえればと考えています。
鈴木 1キロって、とても軽いじゃないですか。でも、VAIO type Pが1キロの製品として仕上がったとしても、ソニーの社内的に成り立たないんです。ユーザーにとっても、それじゃ意味がありません。こういうスタンスかな。ペットボトルと同じくらいの重量なら持ち歩いてもいいと思ってもらえるはずだと。
今回、重さのターゲットは最初、特に設定していませんでした。狙っているサイズをつきつめていけば、必ず軽くなると予想していましたから。でも、厚みは別です。20ミリを超えると仲間がいっぱいいますからね。
横幅の制約は厳しくなかったですね。奥行きに関しても、本当ならコンマ何ミリの世界でせめぎあうことになるのが普通なんですが、だいたい3ミリ〜5ミリは変更してもいいと思っていました。もともとキーボードサイズを優先して考えていたので、サイズで重要なのはキーピッチで、そのあたりのバランスを優先した結果、いまのVAIO type Pのサイズに落ち着いたということです。
伊藤 VAIO type Pで、VAIOの新しい風を感じてほしいですね。新しさにこだわった色にも注目していただきたいです。ソニーのクリエイティブセンターで、色の検討をして、トレンドを見ながらこういう方向性でやっていこうと決めるんですが、流行の誘導なども意識しているのです。
鈴木 明るい色はほかの機種でやっていますから、そうじゃない色を狙ってみました。2008年の夏から、シリンダータイプデザインを採用したVAIOをたくさん出してきましたが、VAIO type Pでは、そうでないデザインをあえて選びました。これまでと違うVAIOをユーザーに感じてもらいたいからです。
以前もいったことだが、もう一度繰り返しておきたい。それは、フルブラウザといいながら、ちっともフルじゃない携帯電話のブラウザ、WindowsといいながらちっともWindowsではないスマートフォンのWindows Mobile。録画した地デジ番組を楽しめないポータブルメディアプレーヤー。多くのモバイルガジェットは、妥協の産物として生まれ、それでも定着し、いまではある程度の規模をもったカテゴリーを築いている。
VAIO type Pが妥協したのは処理性能だ。だが、そこを妥協するだけで、それ以外にある多くの妥協を回避できた。そのうえで、あくまでもPCであることを目指したのがVAIO type Pなのだ。PCだから、その気になれば、どんなアプリケーションでも動かせる。カスタマイズの自由度も高い。PCなのだから当たり前だ。
このインタビューは、評価用として試用していたVAIO type Pに、普段使っているのと同じバージョンの秀丸とATOKをインストールした環境でメモをとった。秀丸もATOKも自分が使いやすいようにカリカリにカスタマイズした環境でなければインタービューでは使えない。インタビューを終え、約5Kバイトのテキストファイルができあがった。インタビューが終わるころにインターネットに接続し、VPNで自宅のストレージにそのメモを同期させた。このとき、取材で使うならこれで十分だと思った。
翌日以降、それまで軽いと思っていた900グラム超のモバイルノートPCが、やけに重く感じられるようになってしまったのはいうまでもない。この感覚はウォークマンを手に入れて初めて音楽を外に持ち出したときに似ている。ウォークマンは1979年の発売だ。あれからちょうど30年。久しぶりの感動をソニーがプレゼントしてくれた。
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