Windows XPを搭載したデルの低価格スリムノート「Inspiron Mini 12」を試す元麻布春男のWatchTower(1/3 ページ)

» 2009年01月19日 11時11分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

Netbookとは少々立ち位置が異なる「Inspiron Mini 12」

最廉価モデルなら5万円以下で購入できる「Inspiron Mini 12」

 2008年最大のヒット商品となった感のあるNetbookで、多くの人が感じる不満は、画面の解像度がもう少し広ければ……、ということだろう。ほぼすべてのNetbook(Atom N270を搭載した低価格ミニノートPC)が採用する液晶ディスプレイは、8.9型あるいは10.1〜10.2型ワイドを問わず、解像度は1024×600ドットになっている。Netbookが元々、新興国の教育市場を意識したClassMate PCから派生してきたこと、スペックより価格を優先していること、そしておそらく既存のノートPC市場の脅威にならないよう配慮してあることが理由だろう。

 とはいえ、XGA解像度(1024×768ドット)が当たり前になっていた昨今からすると、縦方向が600ドットに制約されるのは決して愉快ではない。結局、低価格ミニノートPCで縦方向が600ドットを超える解像度を要求すると、日本ヒューレット・パッカードの「HP 2133 Mini-Note PC」くらいしか現実的な選択肢は存在しなかった(ギガバイトの「M912X」などもあるが)。ところが、HP 2133はキーボードの入力しやすさを含めボディの質感のよさはあるものの、搭載するCPU(VIA C7-M ULV)パワーが不足がちなうえ、ボディ全体が熱くなるレベルの発熱量が気になる(同時にこれは冷却ファンの風切り音が気になるということでもある)という欠点があった。


 2008年10月に登場したデルの「Inspiron Mini 12」は、Netbookとは少々異なるプラットフォームを採用することで、高解像度のディスプレイを備えた低価格ノートPCだ。299(幅)×229(奥行き)×23.3〜27.6(高さ)ミリというほぼA4サイズに等しいサイズを「ミニ」と呼べるかは微妙だが、価格は間違いなく低価格と呼ぶにふさわしい。当初は8万9800円あるいは9万9800円という価格設定だったが、12月に入って行われた価格改定でそれぞれ5万9980円、6万4980円に引き下げられ(Ubuntu版なら4万9980円)、一般的なNetbookと戦える価格帯になった。ちなみに、Office Personal 2007(SP1)と16GバイトのSDメモリーカードがセットになったパッケージならば7万9980円だ。

Atom ZシリーズとUS15Wチップセットを採用

1280×800ドットと一般的なNetbookよりも高解像度を実現する。液晶ディスプレイはラッチレスだ

 本機はその名前の通り、12型ワイド液晶ディスプレイを搭載し、解像度はWXGA(1280×800ドット)と、現在の一般的なノートPCに匹敵する。当初は選択可能なOSがWindows Vista Home Basic(SP1)に限られていたが、12月からはLinux(Dellカスタマイズ版のUbuntu)Windows XP Home Edition(SP3)が選択可能になっている。

 Inspiron Mini 12が採用するプラットフォームは、CPUがAtom Z530(1.6GHz)/Z520(1.33GHz)にチップセットがIntel SCH(システム・コントローラー・ハブ:Intel AF82US15W)と呼ばれるものだ。インテルがより小型のMID(Mobile Internet Device)を意識して準備したMenlow(開発コード名)と呼ばれるプラットフォームで、話題を集めたソニーの「VAIO type P」や富士通の「FMV-BIBLO LOOX U」、ウィルコムの「WILLCOM D4」などに採用されている。1.33GHz動作のAtom Z520、1.6GHz動作のAtom Z530ともに、Silverthorneという開発コード名で知られてきたもので、Netbookに使われているAtom N270シリーズ(開発コード名:Diamondville)よりパワーマネジメントが強化されたCPUだ。

 チップセットであるUS15Wは、MID用に用意された1チップ構成で、Netbookに使われているIntel 945GSE Expressとは異なり、ノートPC用の転用ではない。したがって、グラフィックスコアも900番台のチップセットが採用するGMAシリーズではなく、PowerVRベースのコアとなっている。すでに実績のあるGMAシリーズのドライバを転用できないせいか、ドライバの完成度(特にWindows対応のディスプレイドライバ)にやや難点が見られる。

 今回試用したモデルは、上述した6万4980円のプラチナパッケージで、OSにWindows Vista Home Basic(SP1)がプリインストールされている。ハードウェア面での下位モデルとの違いは、CPUの動作クロックが1.6GHzであること(下位モデルは1.33GHz)、1.8インチHDDの容量が80Gバイトであること(同60Gバイト)で、ほかはBluetoothや無線LAN(IEEE802.11b/g)の標準搭載などは変わらない。言い替えればCPUクロックの270MHzぶんとHDD容量20Gバイト分が5000円ということになる。

左から、CPU-Z 1.49、Intel Graphics Media Acceleratorのプロパティ画面

Windows XP上でのデバイスマネージャ画面

サイズの割に意外と軽く感じる薄型ボディ

底面はフラットで、標準の3セルバッテリー装着時は出っ張りが一切ない。ACアダプタは重量こそ約180グラムと軽いが、サイズは33(幅)×85(奥行き)×59(厚さ)ミリ、ケーブル長は約255センチもあり少々かさばる

 実機を手にして思うのは、“軽い”ということだ。重量は約1.24キロで、極端に軽量というわけではないのだが、12型ワイドとこのクラスにしては大型の液晶ディスプレイを採用しており、ボディの底面積が広いことが軽量に感じさせるようだ。ボディの厚みも27.6ミリと薄く(パームレスト部はさらに薄くなっており、最薄部は23.3ミリ)、底面もゴム足を除いて目立つ凹凸などがないから、カバンにも入れやすい。

 底面に凹凸がない理由の1つは、底面にアクセス可能な部分がないことだ。つまり、一般のノートPCのように、底面からメモリスロットにアクセスしたり、HDDを交換する、といった使い方は想定されていない。実際、本機ではCPUやチップセット、メモリ(1GバイトのDDR2-533)が1枚の基板上に半田付けされ、その基板をマザーボードにコネクタを介して取り付けられており、ユーザーがメモリを増設することは極めて困難だ。HDDも1.8インチのZIFコネクタを採用した5ミリ厚のParallel ATAドライブであるため、交換するにしても選択の幅は狭い。メモリやストレージはそのまま使うほうがベターだろう。

CPUとチップセット、1Gバイトメモリは1枚のモジュールで構成される
裏面にはメモリモジュールが装着されている
HDDは容量が80/60Gバイトで、5ミリ厚の1.8インチタイプを採用する


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