初代Eee PCがデビューした時点で「たぶんコレは売れるなぁ」という漠然とした予感はあったものの、まさかここまでの変化をもたらすと思っていなかったのが、“Netbook”参戦によるミニノートPC市場の激変っぷり。たった1年ほどで、ノートPC市場のシェアを激変させるまでに成長することになるとは……。さすがに予想できませんでした。
自分の回りでも、普段はPCとは縁遠いような人がいつの間にかEee PCを手にしていたりしてちょっとビックリ。何人かに聞いてみると、「イーモバイル加入の100円セットで買った」という人間が結構多い様子でした。「Netbookが売れた理由」をみんながあれやこれやと理由付けしていますが、最大の要因は「やっぱり安さなのかなぁ」と、妙な納得をさせられたりもしたわけです。
そのEee PCの勢いも、2008年後半には「Aspire One」の猛追でシェアが逆転するなど、低価格ミニPC市場の争いなどもなかなかに見ごたえのある展開で、2009年にはついにソニーが斜め上を行く「VAIO type P」とともに市場へ参入し、大きな注目を浴びています。かなり好調に売れているようですが……実際にバックポケットに入れて歩いている人はまだ見たことがありません。
そのNetbookの多くにはWindows XPが搭載されているわけですが、これもまたWindows Vista普及への逆風になってる感じでもあります。企業向けPCでもWindows XPのダウングレード導入モデルが当たり前のようにラインアップとして用意されるのが一般的で、「もうWindows 7待ちでいいやー」などという投げやりなムードは、いまだ市場全体を覆っているような気がします。
また、去年は別方向の“刺客”として、OS管理外領域を扱えるRAMディスクソフト「Gavotte Ramdisk」や「ERAM改」、「RamPhantom3」などが一部で脚光を浴びたりもしました。これをうまく使えば4Gバイト以上メモリを搭載したPCでもムダなくメモリを利用できるので、これによって「まだ64ビットOSに移行しなくもいいやー」という投げやりなムードが(略)。とどのつまりPCは道具でしかないわけで、「今したいこと」が快適に満たされるなら、“もう進化なんていらない”というのが大多数ユーザーの本音なのかもしれません。個人的にはちょっと寂しい気もします、といまだメインマシンにVista入れてない自分が言ってみました。
ハードウェア関係では、次世代CPUとして鳴り物入りで登場した「Core i7」も、即座に飛びつくだけの訴求力には欠けているかな、という印象です。LGA1366マザーボードとDDR3メモリも新たに必要となるため移行のハードルが高い一方で、パフォーマンスの伸びしろがさほど大きく感じられない、というコストパフォーマンスの悪さを感じます。今年こそマルチコア対応のアプリケーションが充実してくれれるよう望みたいものです。
OSなどのソフトウェア環境はあまり変わらないのに、HDDを筆頭としたPCの「足回り」のストレージには大きな進歩が見られたのも去年の特徴です。まずHDDの値下げっぷりが、例年にも増してすごかった。
1TバイトHDDが1万円以下に!?と驚く暇もなく、1.5Tバイトが1万円台で登場し、しかも現在も順調に値下がり中というすさまじい状態。500GバイトHDDの値下げに一喜一憂していたのがはるか昔のようですが、あれからまだ1年しか経っていないという現状にめまいさえを覚えます。
また、すぐ先には2TバイトHDDの登場も控えているようで、ついにNTFSのファイルシステムの壁である「1パーティション2Tバイトまで」という限界に到達するところまできてしまいました。思わず「昔は○○メガバイトのHDDを○○円で買ったのに」的なため息をついてしまう人も多いのではないでしょうか。
もう1つの大トピックが、いわずと知れたSSD。Eee PCを筆頭としたNetbookへの搭載で一気にメジャー化した感のあるSSDですが、2008年の「高速化」と「値下がり」は、かなり電撃的進化でした。安価で大容量化をウリにするMLCチップ搭載モデルと、高速かつ信頼性の高いSLCチップ搭載モデルを「目的別に買う」層が急増したのもポイントでしょうか。
性能面での競争も非常に激しいため、今年はさらに爆発的な発展があるかも? と個人的には大いに期待している分野です。……とはいえ、我慢できずにIntelのSSDを買ってしまったので、あまり早く陳腐化されるとちょっと悲しい。
アナログテレビ地上波の停波(予定)日は、2011年の7月。いつのまにか、その“Xデー”まで1000日を切っているわけですが、あまり切羽詰った状況に感じられない昨今。2008年のPCパーツ関連では、地デジ対応のテレビチューナーが各社からいっせいにリリースされたこともあり、それなりの活況を生み出していたのも事実ですが、やれ「ダビング10への対応」だ、「録画縛り」「編集縛り」だのといった制限が付きまとい、メーカー側だけでなくそれを使うユーザー側も、対応アップデートのリリースに次ぐリリースにひたすら追われていたような印象でした。
家電サイドの思惑としての“オリンピック特需”も、販売側が願うほどの大爆発というわけにもいかなかったようなので、「本当にあと1000日で地上アナログ波終わっちゃうの?」という漠然とした不安は濃くなるばかりです。それはそれで、テレビと完全に縁を切るよい機会なのかもしれませんが。
北京オリンピックといえば、開会式の“BSOD事件”はPCマニアとしては記憶にとどめておくべき出来事ではありました。たぶん「世界最大のブルースクリーン画像」だと思うんですけれども、あれってギネスブックに申請とかしないんですかね?
いちPCユーザーの視点としては、ツクモの営業中断騒ぎは今年一番の大騒動だったといえるでしょう。今までにも、高速電脳の閉店やPC-Sucessの倒産騒ぎなどは自作PC業界に波紋を呼びましたが、全国展開も行っていたツクモの“営業中断”という事態は、PCユーザーにも「不況」の深刻さを伝えるのに十分な出来事だったように思えます。
ただ、インターネットの掲示板などを見るに、ツクモに心情的な支援を寄せるユーザーがとても多かったのも印象的でした。“液晶ディスプレイのドット抜け交換サポート”などに代表される、アフターサポートの信頼感がこうした支持に繋がっていることと思われますが(自分も年末にパーツ買わせていただきました)「けっこう義理堅いユーザーが多いんだなあ」というのを感じてちょっと救われた気分でした。
一方、PC USER内のコンテンツでは、「おバカ」関連ネタがいまひとつ振わなかったのがちょっと悲しい1年でした。「プラチナ8000万円PC」やら「純金箔キーボード」やら、バブル期を思わせるゴージャスなアイテムに不況を吹き飛ばす“気合い”を感じたりもしましたが、やはり全世界的なムードには勝てず。沈んだ気分では「おバカ」を楽しむ余裕も生まれないのか……と切ない気分です。そんな中、年末にちょこっと注目を浴びていたおバカ系アイテムが「“こっそり録れる”腕時計型ビデオカメラ」だった、というのがさらに切ない(しかも初回出荷分は即完売)。ともあれ今年は、もっと痛快に笑えるおバカグッズの商品化に期待を寄せたいところです。
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