ASUSTeK Computer(ASUS)の「Eee PC」シリーズは、Aserの「Aspire one」シリーズとともに低価格ミニノートPC市場をリードするNetbookブランドとして、日本でもすっかり定着した感がある。
Eee PCは初代モデルの「Eee PC 4G-X」から振動や衝撃に強いSSDの採用を特徴としており、2008年11月に発売された薄型軽量モデル「Eee PC S101」では、SSDの高速化による性能面でのアドバンテージもアピールするようになった。
その半面、Eee PCを含むNetbookに搭載されるSSDは記録容量が小さく、S101では16Gバイトまで増量されたものの、データストレージの空き容量が不足しがちになる弱点も抱えている(無償のオンラインストレージ使用権を添付することで、フォローはされていたが)。実際、筆者の周囲でも小容量のSSDは避けて、大容量のHDD搭載Netbookを選択したという人が少なからずいた。
こうした市場ニーズの多様性に対応するため、ASUSは2008年10月に発売した「Eee PC 1000H-X」以降、HDD搭載Eee PCのラインアップを少しずつ拡充している。中でも今回取り上げる「Eee PC S101H」と「Eee PC 1002HA」は、2月7日に発売されたばかりの最新HDD搭載モデルとして注目だ。
これまでのHDD搭載Eee PCは、Atom採用の第1弾モデル「Eee PC 901-X」(Eee PCとしては第2世代)をベースとしたものだったが、S101Hと1002HAは薄型軽量ボディに加えて細部まで凝った外装に定評があるS101(第3世代Eee PC)が基になっており、持ち運びやすさやデザインのよさでNetbookを選びたいと考えているユーザーにとって、魅力的な選択肢が増えたといえる。
製品ラインアップの位置付けとしては、S101HがS101と同じデザインを採用したプレミアムモデル、1002HAが第3世代のS101Hと第2世代の1000H-Xとの間を埋めるミドルハイモデルとなる。ここではよく似たS101Hと1002HA、そしてSSD搭載モデルのS101では何が違うのかを多角的に比較・検証していきたい。
まずは基本スペックの違いから見ていこう。下表は、SSD搭載のS101とHDD搭載のS101Hおよび1002HAの主な仕様と価格をまとめたものだ。
Eee PC S101、S101H、1002HAのスペック | |||
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製品名 | Eee PC S101 | Eee PC S101H | Eee PC 1002HA |
発売時期 | 2008年11月22日 | 2009年2月7日 | 2009年2月7日 |
実売価格 | 6万4800円前後 | 6万4800円前後 | 5万2800円前後 |
カラー | ブラウン、シャンパン、グラファイト | メタルグレー、ダークブルー | |
OS | Windows XP Home Edition(SP3) | ||
CPU | Atom N270(1.6GHz) | ||
チップセット | Intel 945GSE Express | ||
メインメモリ | 標準1Gバイト | ||
メモリスロット(空き) | SO-DIMM×1(0) | ||
液晶ディスプレイ | 10.2型ワイド(1024×600ドット) | 10型ワイド(1024×600ドット) | |
グラフィックス機能 | チップセット内蔵 | ||
データストレージ | SSD 16Gバイト | HDD 160Gバイト | |
無料Webストレージ | 60Gバイト | 10Gバイト | |
内蔵スピーカー | ステレオスピーカー | ||
LAN機能 | 100BASE-TX/10BASE-T | ||
無線LAN機能 | IEEE802.11b/g、IEEE802.11n(ドラフト2.0) | ||
Bluetooth機能 | Bluetooth 2.0+EDR | ||
キーボード | 86キー日本語キーボード | ||
ポインティングデバイス | タッチパッド(4方向スクロール機能付き) | ||
マウス | USBマウス | ||
外部ディスプレイ出力 | D-Sub 15ピン×1 | ||
USBポート | USB 2.0×3 | ||
カードリーダー | SDHC/SD/MMC | ||
オーディオ | ヘッドフォン×1、マイク×1 | ||
Webカメラ | 30万画素 | 130万画素 | |
バッテリー駆動時間 | 約6時間 | 約4時間 | 約4.1時間 |
バッテリー充電時間 | 約2時間 | 約1.83時間 | 約1.83時間 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 264×180.5×18〜25ミリ | 264×181×25〜27.5ミリ | 264×181×27.6〜27.8ミリ |
重量 | 約1.06キロ | 約1.1キロ | 約1.25キロ |
保証 | 本体:購入日より1年間、バッテリー:購入日より6カ月間、液晶ディスプレイ:購入日より30日間のZBDサービス | ||
見ての通り、いずれも仕様はかなり似通っている。Netbookということもあり、CPUのAtom N270(1.6GHz)、チップセットのIntel 945GSE Express、メインメモリの標準1Gバイト(SO-DIMMスロット×1)といったスペックは共通だ。3基のUSB 2.0をはじめとするインタフェースやネットワーク機能も変わらない。
スペックの違いが最も大きいデータストレージは、S101Hと1002HAが160GバイトHDD、S101が16GバイトSSDを搭載しており、容量は約10倍も違う。その代わり、無料のWebストレージ(Eee Storageサービス)使用権は、S101Hと1002HAが10Gバイト、S101が60GバイトとHDD搭載モデルでは容量が削減されている。もっとも、ローカルに大容量のファイルをためておけるという点ではHDDのほうが使い勝手がいい。HDDとSSDでパフォーマンスなどがどう変わるのかが気になるところだが、性能の検証は次回行う。
S101Hと1002HAが搭載する160GバイトHDDは2.5インチ/9.5ミリ厚のSerial ATAタイプで、約81.65GバイトのCドライブと約62.47GバイトのDドライブにパーティションが分かれている。リカバリイメージと起動の高速化機能「Boot Booster」の有効時に利用されるシステム領域が別に確保されているが、それでもユーザーが使える残量は十分だ。今回入手した機材はいずれもシーゲイトのST9160310AS(回転数5400rpm)を用いていた。
HDDは、底面にある2本のネジで固定されたカバーを開けるだけで簡単にアクセスできる。当然、ユーザーによるHDDの交換はメーカー保証対象外の行為だが、S101は本体をかなり分解しなければSSDにアクセスできず、汎用性の低いMini PCI Express型のSSDモジュールを採用していたことと比較すると、大きな違いだ。より大容量のHDDや高速なSSDが市場に出回っている標準的な2.5インチ/9.5ミリ厚のSerial ATAタイプのデータストレージを使用し、それを容易に交換できる仕様に魅力を感じるユーザーは少なくないだろう。
データストレージ以外の主な違いは、本体の厚さ、重量、バッテリー駆動時間、ボディカラー、Webカメラの画素数、画面サイズ(わずかに違う)、そして価格といったところだ。S101Hと1002HAはほとんど同じスペックだが、価格差が1万2000円前後もある点に注目したい。
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