「重要なのはユーザーとの信頼を築くこと」――アイギークが「教えて!iGeek!」を開設Macユーザー必見

» 2009年02月13日 17時02分 公開
[後藤治,ITmedia]
教えて!iGeek!

 アイギークは2月13日、Macユーザーを対象としたQ&Aコミュニティサービス「教えて!iGeek!」を同社のWebサイトで開始した。Macの便利な使い方をはじめ、ユーザーから寄せられた質問の回答など、Mac全般のチップスをQ&A形式で提供していく。

 実際に教えて!iGeek!のページを見ると、すでに27の項目が並んでいる。「削除してしまったデータを復元する方法」や「バックアップの取り方」といった質問は、アイギークが販売する製品を使った解決法が示されているが、中には「Macからメールを送る際、受け手側に文字化けの状態で届くことがあります。どうしたらよいでしょうか」「壊れたことえり辞書を直すにはどうしたら良いですか」といったような、直接製品とは結びつかないものも含まれている。

アイギーク社長 デイビッド L. スミス氏

 アイギーク社長のデイビッド L. スミス氏は、「自社製品に関わるものだけでなく、ユーザーサポートの中で気付いた疑問点や、実際に自分が体験したものなど、Macユーザーにとって有益な情報であれば、幅広く取り上げていこうと思っています」と語る。「例えばある問題に対して、もしフリーウェアで解決できるのであれば、その情報も平等に載せていきますし、そのうえで有償のソフトウェアならどこまでできるのかを説明していけばいいと思っています」(同氏)。

 今回このサービスの提供を開始する動機になったのは、あるソフトウェアのユーザーアンケートの結果だったという。そのソフトウェアとは、アイギークが国内販売する米アンブロージャのMac向けオーディオキャプチャツール「WireTap Studio」で、もともと米国ではポッドキャストユーザーに愛用されている製品だった。しかし、アンケートの結果を見ると、日本のユーザーの多くは、アナログ音源からデジタル音源への変換ツールとして使っており、ポッドキャスト用に購入した人はほとんどいなかったという。

WireTap Studio

 スミス氏は「そこで、売り文句をポッドキャストからデジタル変換ツールに変更したところ、さらに販売を伸ばすことができました。米国で成功したアプローチをそのまま日本に適用するのではなく、まずはユーザーが何を望んでいるのか、何に困っているのかを知ることが先決だと気付かされました」と振り返る。「また、私たちはソフトウェアを自社開発する技術を持っていますし、アンブロージャとは親しい間柄ですので、日本のユーザーの声を次期バージョンの機能に反映することもできます。そういった意味でも、ユーザーとのコミュニケーションは非常に貴重です」。

 教えて!iGeek!のコンテンツは、スミス氏も含めスタッフ全員で制作する。最低月1回は更新し、年内に100項目まで増やすことが目標だ。また、現在はテキストのみのシンプルな構成だが、今後は静止画や動画などを使って、より分かりやすい内容にしていく予定だという。自社製品の販売に直接はつながらない内容でも、スミス氏はそれをムダなコストだとは考えていない。

アイギークのトップページに「教えて!iGeek!」のタブが追加された(画面=左)。製品とは関係のない「ノートパソコンのふたを閉じてから、スリープするまで時間がかかります(ディスプレーが明るいままです)。何故ですか。」といった質問も(画面=中央)。Macに関する質問も受け付けている(画面=右)

 「セールスにはハードタイプとソフトタイプの2種類があると思っています。ハードタイプは、その製品の露出を増やし、一方的に特徴を説明して、なかば押しつける形で購入させるようなものです。これだと短期的な売り上げは伸びますが、何か問題があったときにはユーザーをがっかりさせてしまう危険性があります。一方ソフトタイプでは、いろいろな選択肢を提示してユーザーに考える時間を与えます。これだと販売する機会を失う可能性もありますが、最終的にその製品に納得した人が購入してくれるので顧客満足度が高くなる。私たち自身も押し売りされるのがいやですし、アイギークの顧客層は、短期間に無理に説得して売るという手法が通用しない賢いユーザーが多いので、企業のカルチャーとしてもソフトタイプがあっていると思います」。

 その言葉を象徴しているのが、現在販売する製品すべてに用意された無料体験版だ。その多くがほぼすべての機能を利用できるため、実際に使ってみて気に入ったら購入できる仕組みになっている。しかし、数カ月に一回程度しか使わないユーティリティ系ソフトウェアでは、機能制限がないものは必要になったときにダウンロードすればそれで事足りてしまうため、体験版から製品版の購入につながる比率はあまり高くない。スミス氏は「10%くらいしかいないかな」と笑う。

 「でもそれでアイギークの名前を知って、無料で問題を解決できたハッピーな体験として記憶してもらえれば、すぐに結果が出なくてもいいと思っています。その何年後かにユーザーの興味をひく製品がリリースされたとき、購入してくれることもあるでしょう。いまの短期的な目標は、アップルの製品だけで十分だと考えているMacユーザーに対して、困ったときにはアイギークという名前の手助けをしてくれる会社があると知ってもらうことです。重要なのはユーザーとの信頼を築くこと、それが将来につながると信じています」(スミス氏)。

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