プロ向け液晶ペンタブレット「Cintiq 12WX」を解剖する(1/2 ページ)

» 2009年02月27日 12時22分 公開
[山田祐介,ITmedia]
Cintiq 12WX

 ワコムが2007年に発売した液晶ペンタブレット「Cintiq 12WX」は、クリエイター向けの高性能ペンタブレット「intuos3」の技術を投入したモデルだ。同社はCintiqシリーズとして21.3型大型液晶パネルを搭載した「Cintiq 21UX」を2005年より販売しているが、「より小さく、低価格のモデルを」というユーザーの声に応えるべく、12.1型ワイドサイズの液晶ディスプレイを採用した小型モデルとして、Cintiq 21UXの半額以下の価格(ワコムストア価格13万9800円)のCintiq 12WXが登場した。

 “究極のデジタルペーパー”としての表現力はそのままに、ダウンサイジングに伴ってさまざまな工夫・改良が施されているCintiq 12WXの開発ポイントを、同社・製品設計3グループ(プロダクト統括製品設計部)の玉木宙氏が説明した。

IPS技術で視野角を確保した新規開発の液晶モニタ

新規開発の液晶パネル(左)。“カンガルーポケット”と呼ばれるポケット式の構造で、液晶パネル側の構造を変えることなく、センサーを取り付けられる(右)

 玉木氏が開発の大きなポイントとして挙げるのは、液晶パネルへのこだわりだ。ノートPCなどに採用されるTN方式のパネルを流用するのではなく、広視野角を確保しやすいIPS方式の技術を使った新規開発パネルを採用している。「液晶ペンタブレットは正面からだけでなく、角度のついた状態で見られることが多い。そうした場合でも色の反転が起こらないようにパネルを新規に開発した」(玉木氏)。また液晶パネルを分解することなくセンサー基板を搭載するために、パネル裏面には“カンガルーポケット”と呼ばれる構造を採用し、ポケットに滑り込ませるようにセンサー基板を搭載できる。

Cintiq 21UXではガラス表面をフィルム処理していたが、今回はエッチング加工で仕上げられている

 液晶モニタの見やすさと書き味を改良するために、液晶パネル表面を覆うガラスにも工夫が凝らされている。厚さ1.1ミリの強化ガラスの裏面には、不要な光の反射を防ぐARフィルムを貼り、ペンと直接触れるガラス表面にはエッチング加工を採用する。このエッチングの処理はCintiq 12WXで新たに取り入れられた改良点で、光の映り込みを防ぐほか、ペン入力では紙に近いマットな感触を得られるという。

小型ボディへ「いかに基板を配置するか難しい点だった」

同社が調査したユーザーニーズ。海外では“ひざの上でも使いたい”といった要望が少なくないという

 製図台のような大きな画面でトル入力ができるCintiq 21UXに対し、スケッチブックのような使い勝手の良さや携帯性を持っていることも、Cintiq 12WXの魅力といえる。本体サイズは405.2×269.7×17ミリ(突起部除く)、重さは約1.8キロと、持ち運びも十分可能だ。

ネジによる固定部を多くすることで本体の剛性を確保(写真=左)。背面のカバーを外すと現れるアルミ製のシールドケースは、ヒートシンクとしての役割も果たすようにくぼみがつけられている(写真=右)

シールドケースを取り外した本体裏面。ノイズと静電気の影響を防ぐ目的で、テーピングによる接着部も増やした

 薄型コンパクトなボディに「いかに基板を配置するか難しい点だった」と玉木氏は話す。本体背面のスタンドをフラットに収納できるビルトイン構造を取ったが、スタンドが本体内部に食い込む分、基板設置のスペースが狭まったことも開発を困難にしたという。タブレットのセンサーを制御するEMRセンサーコントロールボードは、当初2層基板を想定していたが、省スペース化するために6層に変更。また液晶パネルのバックライトを制御するインバータ基板も極力コンパクト化を図ったという。

本体裏面から見て最下部に配置されている、EMRセンサーコントロールボード(写真=左)。電磁誘導方式のタブレットセンサーを制御し、かつディスプレイ本体側の電源を管理するほか、コンバータボックスからのビデオ信号をTMDSからLVDSへと変換して液晶パネルへ供給する。小型化を図ったインバータは左下に設置された(写真=右)

タブレットPCのセンサーの多くはコイルのターン数が2回程度だというが、Cintiqは8ターンでintuos3と同等。ターン数を多くすることで十分な磁力とペン側に供給する電力を確保し、1024レベル筆圧感知や傾き検知を利用することができる
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