PCの新規購入を考えたとき、自分の用途に合わせたスペックのマシンを検討するのはもちろんのことだが、たいていの人はそれを「できるだけ安く手に入れたい」と思うだろう。多くのメディアで連日のように“不況”の2文字が踊るこんな時代ならなおさらだ。
インテルが投入した低価格PC向けの「Atom」によって、安価なNetbookやNettopが市場に供給され、従来の「パソコン=高価」というイメージは塗り替えられつつある。しかし、これらは性能面での制約が多いため、2台目、3台目の買い増し需要に対応する製品という意味合いが強く、「そろそろ自宅のPCが古くなったので新しいマシンに買い替えよう」というニーズに対しては、やや力不足という印象は否めない。メインPCとして十分な性能を持つマシンをできるだけ安く手に入れるにはどのような選択肢があるだろうか。
現在、大手量販店の店頭で販売されているPCは、液晶一体型が主流だ。Netbookによって大きくシェアを伸ばしたノートPCはもちろん、デスクトップPCにおいても、国内PCメーカーの主力モデルはPC本体と液晶ディスプレイが一体となった製品である。いわゆる液晶一体型デスクトップPCは、省スペース性に優れ、ケーブルの取り回しも不要で、PC初心者でも購入してすぐに利用できるオールインワンタイプである点が受けているようだ。
ただしその一方で、液晶一体型PCはパーツの増設や交換が難しく、拡張性に乏しいという欠点もある。PCパーツの多くは日進月歩で技術が進歩しており、相対的に陳腐化するのが早いといえるが、液晶一体型PCの場合は、予算がないときに一部のパーツを最新にアップデートすることで全体の買い替えを先送りにする、といったことができない。PC USERの記事を読むようなヘビーユーザーにとって、この点は液晶一体型PCの購入をためらう理由の1つになるだろう。
そこで注目したいのが、高性能なCPUを搭載しても排熱や電源回りに余裕があって、将来的なパーツの交換にも対応でき、ある程度の省スペース性をも合わせ持つマイクロタワー型の製品である。もちろんここで、秋葉原のパーツショップを回り、PCを自作してしまう手もあるのだが、「自作が趣味」という人や、古いPCから流用できるパーツがある場合を除けば、実は自作をするメリットはあまり多くない。システム一式を買い替えるとなるとやはりそれなりの予算は必要だし、組み立てる労力や保証の面を考えれば完成品を買ってしまったほうが楽だ。
それならば、パーツを取捨選択して価格をぎりぎりまで抑えられる直販PCが最適だ――というわけで、下はNettopから上はゲーミングPCまで、デスクトップPCでも幅広いラインアップを持つデルの直販サイトを眺めていたところ、「Studio Desktop」が6万9980円で販売されているのを発見した。うーん、これは安い予感がする。
Studio Desktopは、デルが個人向けに展開するStudioシリーズの1つで、ハイエンドモデルの「Studio XPS」と共通化された、グロスブラック仕上げのタワー型筐体を採用している製品だ(関連レビュー:イマドキのデスクトップはコレでなくっちゃ――デル「Studio Desktop」で遊ぶ)。つまり見た目はそのままハイエンド機。そして、ここで注目したいのが「Studio Desktopに用意されたCPUはクアッドコアのみ」という点である。そう、6万9980円で販売されているこの格安モデルであっても、クアッドコアCPUを搭載しているはずなのだ。
実際にスペックを確かめてみると、CPUが45ナノメートル世代のCore 2 Quad Q8200(2.33GHz/FSB1333MHz)、メモリが4Gバイト(DDR2-SDRAM×2)、HDDが500Gバイト(Serial ATA/7200rpm)、グラフィックスがATI Radeon HD 3650(256Mバイト)、光学ドライブがDVDスーパーマルチ、OSはWindows Vista Home Premium(SP1)と、7万円を切る価格ながらエントリー機をはるかに上回る構成となっていた。2009年春モデルとして登場した主要PCメーカーのラインアップの中でも、クアッドコアCPUを搭載するモデルのほうが少ないことを考えれば十分以上のスペックといえる。Core 2 Quad Q8200はクアッドコアの中ではローエンドで、GPUも世代の古いミドルレンジに相当するものの、このスペックであれば通常用途はもちろん、3Dゲームもこなせる性能を持つ。Windows Vistaの動作も快適で、ストレスを感じる場面はまずないだろう。
さて、7万円を切るこのStudio Desktopがどれほどコストパフォーマンスで優れているのか、ほかの製品と比べてみた。
まずはNettop。Atom搭載のNetbookで一大ブランドを築き上げたASUSTeKは、そのデスクトップPC版として「Eee Box」を発売しているが、2009年3月下旬には最新モデルの「Eee Top 1602」を投入する。そのEee Top 1602と横並びにしてみると、価格差は約5000円しかないことに気付く。Eee Top 1602は液晶一体型なので、これにあわせてStudio Desktopに20型ワイド液晶「SP2008WFP」(3月9日までのキャンペーン価格で1万4800円)を追加しても、最新のNettopに2万円を上乗せするだけで、圧倒的に高性能なクアッドコアマシンが手に入る計算だ。
続いて3月3日に登場したばかりの新型iMacとも比べてみた。モデルチェンジするたびにコストパフォーマンスが向上したと言われるiMacだが、20インチiMacの価格は12万8800円で、上記のStudio Desktop+SP2008WFPの構成のほうが4万4020円ほど安い。もちろんこれは、iLife '09などの付属ソフトウェアを除外した比較だが、スペック面でもそのほとんどで上回っている。さらに、Studio Desktopに24型ワイド液晶「「Dell S2409W」(3月6日時点の特別価格で2万9800円)を付属した構成でも9万9780円と10万円を切っており、15万8800円の24インチiMacとの価格差は6万円弱まで広がる。確かにiMacは魅力的な選択肢の1つではあるものの、液晶一体型にこだわらないのであれば、Studio Desktopのコストパフォーマンスの高さは飛び抜けていることが分かるだろう。
国内の大手PCメーカーで唯一マイクロタワー型モデルを店頭向けに販売しているNECの「VALUESTAR M VM100/SH」と比べても、Studio Desktopのほうが5万円ほど安く購入できる。VALUESTAR Mは省電力版のCore 2 Quad Q8200s(TDP65ワット)を採用しているという違いはあるものの、Core 2 Quad Q8200との性能差はほぼないと考えてよく、排熱設計がきちんとなされているメーカー製PCであれば、後者のほうがコストパフォーマンスではるかに勝る(低消費電力かつ低発熱のPCを自作したいというニーズではCore 2 Quad Q8200sの存在意義もあるのだが)。また、チップセット内蔵のグラフィックス機能(Intel GMA X4500HD)を利用するVALUESTAR Mに比べて、ATI Radeon HD 3650を搭載するStudio Desktopのほうが一歩リードする形だ。これは性能面だけでなく、後者がHDMI端子を標準で備えている点もポイントだろう。
Studio Desktopとそのほかの製品のスペックと価格 | ||||
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製品名 | Eee Top 1602 | 20インチiMac | VALUESTAR M VM100/SH | Studio Desktop |
メーカー | ASUSTeK | アップル | NEC | デル |
CPU | Atom N270(1.6GHz) | Core 2 Duo(2.66GHz) | Core 2 Quad Q8200s(2.33GHz) | Core 2 Quad Q8200(2.33GHz) |
グラフィックス | Intel 945GSE(GMA950) | GeForce 9400M | Intel G45(GMA X4500HD) | ATI Radeon HD 3650 |
メモリ | 1024MB | 2048MB | 2048MB | 4096MB |
HDD | 160GB(5400rpm) | 320GB(7200rpm) | 1TB(7200rpm) | 500GB(7200rpm) |
光学ドライブ | − | 2層対応SuperDrive | 2層対応DVDスーパーマルチ | 2層対応DVDスーパーマルチ |
OS | Windows XP Home Edition(SP3) | Mac OS X v10.5 | Windows Vista Home Premium(SP1) | Windows Vista Home Premium(SP1) |
液晶ディスプレイ | 15.6型(1366×768) | 20型(1680×1050) | − | − |
実売価格 | 6万4800円前後 | 12万8800円 | 12万円前後 | 6万9980円 |
以上、ここまで読んできた方は、「PCの性能の問題は何を言っても解決しない。カネをいっぱい持っていき、“クアッドコアのPCください”って言うしかないだろ」という認識が間違いであることは分かっていただけただろう。デルのStudio Desktopなら7万円を切る価格で高性能なPCを入手できるのだ。
もっとも、店頭売りのメーカー製PCと異なり、直販PCの多くは最低限のソフトウェアしか付属していないという欠点もある。PC初心者でなければ、ソフトウェアは必要になった時点で追々購入していくというスタンスでもまったく問題はないのだが、ことセキュリティ対策だけは、インターネットに接続する前にあらかじめ導入しておいたほうがいい。セキュリティスイートの価格は、ベンダーによって差はあるものの、数千円から1万円ほどと安いものではないのだが……。
そこで試しに「なんとかなりませんかねー、デルさん」とお願いしてみたところ、「本気で買うつもりなら検討してもいいよ」という返事。6万9980円のStudio Desktopにあっさりと「マカフィー セキュリティセンター9.0」の15カ月間更新サービスを無料で追加してくれたのだった。ええ、買いますとも。
なお、個人的な要求から出来上がったこのパッケージだが、3月6日から3月8日までの3日間だけ、ITmediaの読者にも限定販売してくれるとのこと。将来的な拡張も視野に入れつつ、動画編集から3Dゲームまでをこなせるコストパフォーマンスの高いPCを手に入れたい人は、この機会にStudio Desktopを購入してみてはいかがだろうか。
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