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インテルのIT部門が貢献する“vPro”開発

» 2009年03月17日 19時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

人と拠点は削減するが人材教育は削らない

インテル・エンタープライズ・アップデートで示されたインテルIT部門の陣容

 インテル情報システム部部長の海老澤正男氏は、インテルの“IT”に対する姿勢について、半導体開発企業らしく「Tのテクノロジーは積極的に取り入れていくが、Iの情報システムの活用がおろそかになっている」と述べたうえで、インテルのIT部門としては、IとTを分けて考え、Iの導入に力を入れていくと説明している。

 インテルが全世界で抱えているIT部門の規模は5700人だが、これでも2006年と2007年にかけて削減したという。データセンターも集約化が進められていて、前年までの117カ所が2008年には75カ所になった。しかし、扱う業務の規模は拡大しており、データセンターが管理するバックアップデータの容量は従来の5倍に増えている。

 このように、インテルのIT部門といえど業務の効率を向上させるためコストを抑制しているが、そういう状況にあっても、人材トレーニングの支出は維持していくと海老澤氏は語る。その代わりに、プロジェクトの管理で人材利用の効率化を図るという。従来は、開始から終了まで2〜3年かかってプロジェクトを進行させていたが、その間に情勢が変わって成果がエンドユーザーの利益とならないことも少なくなかった。そのため、プロジェクトの期間を原則6カ月として、この間でユーザーにメリットを提供できないと判断された場合はプロジェクトそのものがキャンセルされる(大規模なものは例外となる)。

 また、人材という観点では、プロジェクトに関わる人員の割り当て方法でも見直しが行われている。これまでは、プロジェクトごとに人員過多や人員不足が少なからず発生していたが、この解決のために組織を横断した人員分布情報を上級管理職に提供することで、適切な割り当てができるようにするという。また、これに加えて、世界各エリアの人件費に関する情報も上級管理職へ提供することで「人件費の抑制も目指す」と海老澤氏は語っている。

社員より多いサーバの管理コストを抑える

ニューメキシコ州のデータ伝ターで進められているエアコン冷却と外気循環放熱の検証作業では、消費電力が64%削減できたことが確認された

 インテルIT部門の戦略目標として掲げられている「オペレーション・エクセレンス」の目指すところについて「高いレベルでインテルの業務を提供するのがIT部門の目標」と述べた海老澤氏は、その具体的な行動内容として、IT関連支出を売り上げに対して3%以下に抑制することと、情報(漏洩)リスクの管理、データセンターの効率化、インテル社内で利用台数が増えているノートPCの管理について紹介している。

 CPUの開発関連する設計情報など、インテルにおいて「情報資産」の価値は極めて高く、情報の防衛を積極的に行っているが、その一方で、クライアント端末として利用されているノートPCの割合は8割を超えるまでになっている。こうしたノートPCの盗難や紛失による情報漏洩を防ぐために、インテルではHDDの暗号化を進めていると海老澤氏は説明する。2008年は暗号化されたHDDを組み込んだシステムでインテルは使っている管理ソフトの動作検証が行われ、2009年には全員のノートPCでHDDの暗号化を勧めていくという。最終的には「すべてのノートPCへ強制的に導入してHDDの暗号化を有効にする」(海老澤氏)予定だ。

 海老澤氏の説明によると、現在インテルではクライアントPCと同じ数だけのサーバマシンを導入しており、近い将来には、インテルの社員よりサーバマシンが多くなる見通しだ。このように膨大なサーバを抱えるデータセンターにおいても、インテルは2006年から2007年にかけて9500万ドルの削減を実現している。具体的には、データセンターを従来の95カ所から75カ所へと集約し、「使えるうちは使っていく」(海老澤氏)というサーバのリプレース期間を4年と定め、積極的に新しいサーバに切り替えることで、4500万ドルの削減を果たという。

 新しいサーバへの移行はデータセンターから発生する熱も抑制するが、その冷却においてもコストを抑える新しい試みが行われている。従来は、エアコンを使って常時20度程度に冷やす方法が使われているが、新しい試みでは、外気の循環で発生した熱を入れ替えることで、サーバの動作が保証されている温度の36度をわずかに下回る32度にデータセンターの室温を抑えるとしている。

 現在、検証作業がニューメキシコ州のデータセンターで進んでいる。検証中の試算では10メガワット級データセンターで287万ドルの削減が期待されるという。日本でも、冬の乾燥した季節なら外気を利用した新方式が利用できれば、一年を通してエアコンで温度をコントロールする必要がなくなるかもしれないと海老澤氏は述べている。

「SSD」「vPro」導入で期待される効率向上

 海老澤氏は、データセンターと営業スタッフが使用しているノートPCへのSSD導入で実現する効率向上についても紹介した。データセンターへの導入については、HDDと比べた場合の性能の向上と消費電力、使用空間の削減のためで、消費電力については、推定値ながらHDDシステムで768ワットのところがSSDシステムでは16.8ワットに、使用空間については、HDDシステムが8UケースであるところがSSDシステムで2Uケースで済む例が紹介された。

 また、外回りを行っている営業スタッフが使うノートPCへSSDを導入したケースでは、故障のリスクが低減するとともに、バッテリー駆動時間におけるメリットが現場で認識されており、6セルバッテリーパックを搭載したノートPCでは、HDDモデルよりSSDモデルが50分ほど長いことが報告されているという。

 インテルが訴求している「vPro」についても、同社のIT部門は積極的に取り組んでおり、現在社内では全世界で3万台、日本法人では70%を超えるvPro対応PCが導入されているという。2008年前半までは、インテルで使われている多くの管理ソフトに対する動作検証が行われていたが、このフェーズが終了した2009年からは積極的に導入を進めていく予定だ。

 インテルにおいてvProの機能で最も多く使われている機能が、クライアントPCの集団管理と退社した社員が使っていたHDDのデータ消去であると海老澤氏は述べている。vProによるリモートサポートの導入においては、マレーシアにあるペナン島とコスタリカにサービスデスクを設けることで、全世界のインテルスタッフに24時間のサポートを提供しながらも、「深夜作業がなくなるのでコストが抑制できる」(海老澤氏)ことが可能になった。

 海老澤氏は、インテルのIT部門がvProを活用することの意義について、開発現場へのフィードバックを挙げている。インテルは、半導体開発メーカーにとどまらない、ソリューションを提供する企業を目指しているが、インテルのIT部門が自分たちの開発した新しいソリューション技術を積極的に活用することで、有益なフィードバックを開発部門に提供することができると説明している。

データセンターでSSDを導入するメリットとコスト効果(写真=左)。インテルで進むvProの活用。ワールドワイドで3万1000台のPCがvProを有効にして管理されている。vProによる管理で2009年には45万ドルの経費削減が期待されるという(写真=右)

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